HOME > レビュー > 【レビュー】37,000円でDSDディスク/SACD再生可能・パイオニアの意欲的なエントリー機「PD-10」

【レビュー】37,000円でDSDディスク/SACD再生可能・パイオニアの意欲的なエントリー機「PD-10」

公開日 2012/06/20 10:02 取材・執筆/岩井 喬
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
単品SACDプレーヤーとしてはパイオニア久々の新製品であるとともに、DSDディスク再生をも可能とした意欲的なエントリーモデル「PD-10」。37,000円という手頃な価格にどれだけの能力が詰め込まれているのか?岩井喬氏が検証した。

PD-10

非常に意欲的なエントリーモデル

単品SACDプレーヤーとしてはパイオニア久々の新製品であるとともに、DSDディスク再生をも可能とした意欲的なエントリーモデルである。

PD-10

トレイを開いたところ

DSDディスク対応機としてはソニー陣営に次ぐ待望の採用であり、ディスクの読み込みの速さや操作性についても一層SACD・CD再生に近付いた印象を持つ。DSDディスクはDSFファイルをDVD-R/RWに焼き付ける作業まではPCで行う必要があるものの(2.8MHzのみ、DSD対応VAIOやAudioGate v2.0以上で作成可能)、再生そのものはこれまでのディスクとほぼ同等(曲番を直接入力する“ダイレクトサーチ”は効かない)なので、ダウンロードしたDSD音源の手軽な再生手段としてもお奨めできる手法だ。

発売中のプリメインアンプ「A-30」「A-10」と組み合わせやすいシルバー基調のデザイン

リモコンはPD-30とは違うデザインのものを採用

「PD-10」は、同時に発表された上位機「PD-30」や先に発売されているリーズナブルなプリメインアンプ「A-30」「A-10」と揃った意匠を採用しつつも機能性を絞りコストパフォーマンスの高いモデルとして仕上げられている。

PD-10の背面部

ケーブルはこちらも着脱式。

DACには192kHz/32bit対応AKM・Audio4Pro製チップAK4480を搭載。アナログ部とデジタル部、さらにはCDサーボ部、USB系の電源とも分離させた低ノイズ設計で、音声信号を最短経路で伝送する『ダイレクトコンストラクション』を採用。電源トランスも電圧を高く設定したアナログオーディオ回路用に専用巻き線を独立させ、他回路の影響を受けないクリアで余裕のある電源供給を可能とした。

フロントUSB端子からはMP3やWMAファイルを収録したUSBメモリーからの直接読み出しに対応するほか、CD-R/RWやDVD-R/RWに焼きこんだMP3/WMAファイル再生も可能だ。

またこうした圧縮ファイル再生時には圧縮処理で失われた成分を補う独自の『アドバンスド・サウンドレトリバー』機能も有効で、ディスプレイ表示とデジタル出力をオフにしてアナログ信号をより良い状態で再生できる『ピュアオーディオモード』も搭載している。

音像の密度感や音の質感はかなり健闘したクオリティを実現

試聴にはアンプに「アキュフェーズE-560」、スピーカーに「エラックFS247BE」を接続。音場の奥行きを含めた広がりに関しては価格相応という印象であるが、音像の密度感や質感の鮮やかさ、滑らかさについてはかなり健闘したクオリティを見せてくれる。低域の解像感はやや甘く、リリースは穏やかに広がる。

SACDの諏訪内晶子『シベリウス&ウォルトン:ヴァイオリン協奏曲』を聴いてみると、ヴァイオリンの弦がシャープに立ち上がり、細やかなタッチを一つ一つナチュラルにトレース。すっきりとした高域のハリは鮮度良くストレートな音調で、オーケストラの低域はゆったりとふくらみのある押し出しを見せる。

同じくSACDの『Pure 〜AQUAPLUS Legend of Acoustics〜』ではほんのりウェットなストリングスや、適度に引き締めるベース、ハリ良く瑞々しいボーカルがバランス良く融合。

CD再生でもジャズは軽やかなピアノや制動良いリズム隊の音像が各々立体的に浮かび、ロックでも倍音の素直な音伸びを見せるエレキやスマートながら密度あるドラムが軸となり、色付けなく弾力のよい音楽を届けてくれる。

DSDディスク再生では自分で録音した音源や『Pure2 〜Ultimate Cool Japan Jazz〜』のマスター音源を用いたが、DSDならではの爽やかな音像の浮き上がりと、滑らかで艶良いボーカルや弦楽器の質感描写、細やかなピアノのハーモニクスにその優位性が見て取れる。ふっくらとした音像の自然な厚みと共にリアルで音離れ良い空間表現がより一層高純度に楽しめた。


【PD-10 製品データ】

¥37,000(税込)、7月中旬発売
【SPEC】●再生可能ディスク:音楽CD/SACD/CD-R,-RW/DVD-R,RW ●フロントUSB:USBメモリ(MP3/WMA) ●周波数特性:2Hz〜20kHz ●SN比:117dB ●出力端子:アナログRCA、光デジタル、同軸デジタル(RCA) ●消費電力:38W ●外形寸法:435W×128H×329Dmm ●質量:5.2kg


【執筆者紹介】
岩井 喬 IWAI,Takashi
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE