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マニアックに音質が調整できる

TDK Life on Recordのイヤホン最上位機 − デュアルBA型「TH-ECBA200BBK」を聴く

公開日 2011/10/27 09:40 レビュー/高橋 敦
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記録メディアからスピーカーまで幅広い分野でAVライフをサポートするTDK Life On Recordブランド。そのイヤホンとヘッドホンのラインナップにおいて、クオリティ志向の強い製品群は「プレミアムシリーズ」と銘打たれ、展開されている。イコライザーの搭載や非圧縮無線伝送の採用など様々なアプローチを織り交ぜつつ、音質を追求した製品を揃えたシリーズだ。

TH-ECBA200BBKはそのプレミアムシリーズの、イヤホン製品のトップエンドとなる新製品である。


TDK Life on Record「TH-ECBA200BBK」

デュアルドライバーを搭載したバランスド・アーマチュア方式の最上位機

本機の型番からもわかるように、先行して発表されたTH-ECBA100BBKの上位モデルであり、バランスド・アーマチュア方式のドライバーを採用している。

バランスド・アーマチュア型ドライバーは、一般的なイヤホンに多く採用されているダイナミック型ドライバーに対して、振動を生み出し伝えるパーツが微小であるなどの要素から、入力される音声信号への反応がより敏感だ。また繊細な描写力も強みである。

本機の場合はこれをさらに、高域側を再生するトゥイーターと低域側を再生するウーファーに分けたデュアル・ドライバー方式として、左右それぞれにユニットを搭載している。これにより再生周波数帯域を拡大させ、バランスに優れたサウンドを実現している。


インピーダンススタビライザーや取外しができるフィルターなど、オーディオ的な魅力を満載

本機のケーブル分岐部には、特許出願中の「インピーダンススタビライザー」という回路が仕込まれている。

イヤホンのドライバーにはインピーダンスという特性があり、駆動のしやすさなどに影響する。しかし高域ユニットと低域ユニットのそれを揃えることは難しい。複数ドライバー機においては、そのために音が乱れる場合がある。


左右ケーブルの分岐箇所に「インピーダンススタビライザー」の回路を設けている
インピーダンススタビライザー回路は、低域から高域までの入力インピーダンスの変動を最小限に抑え、安定した音質を実現した。またその結果として、例えばヘッドホンアンプと携帯プレーヤーの出力の駆動力の違いもある程度吸収され、音質の変化を抑える効果もあるようだ。

このほかにも音質に関わる部分では、ノズル先端に設けられた「フィルター」を脱着可能として、音質にこだわるマニアにとって楽しみな聴き方ができることも特徴だ。本体にはComplyイヤーピースが付属しており、ノズル内部への異物侵入については、Complyイヤーピース自体に用意されているフィルターでこれを回避することが可能だ。フィルターは一度外しても、交換用に新しいフィルターも3組付属している。

イヤーピースを外すと表れるノズルの先端部に「フィルター」が装着されている

フィルターはシール状になっており、付属のクリーニングツールで取り外すことができる


フィルターを外したところ

交換用のフィルターシールが3ペア同梱されている



絡みにくく、取り回しやすいフラットケーブルを採用

ケーブル長は本体52cm+延長75cmで合計1.3m弱。ケーブルの形状はフラットタイプという、いわゆる“きしめん”型だ。フラットケーブルはルックス的に面白味があり、また筆者の経験としては、普通のケーブルよりも絡みにくくて取り回しに有利だ。

フラットタイプのケーブルは絡みにくいことも特長だ

ケーブルの絡みを防止するスプリッターも付く


本体のケーブルは52cm

75cmの延長ケーブルを足して、約1.3m弱のケーブル長になる
イヤーピースは一般的なシリコン素材のダブルフランジ(二段傘形状)と、低反発フォーム素材のComplyが各2サイズ付属する。後者はサードパーティ製イヤーピースの定番だが、イヤホン本体に付属してくるのが嬉しい。

低反発フォーム素材のComplyイヤーチップが2サイズと、ダブルフランジ型のシリコンイヤーピースが2サイズ付属する


試聴インプレッション
「TH-ECBA200BBK」のサウンドに迫る − シングルドライバー機「TH-ECBA100BBK」との音の違いは?


今回の試聴のメインとなる「TH-ECBA200BBK」

シングルドライバーの「TH-ECBA100BBK」も音質比較のリファレンスに用意した
さて音質チェックだ。今回はリファレンスとして、TDK Life on Recordのカナル型イヤホンの兄弟機「TH-ECBA100BBK」を用意して、音を比較しながら確認を行った。

「TH-ECBA100BBK」はシングルドライバー構成のバランスド・アーマチュア型イヤホンだが、そのサウンドは低音域までがしっかりと出ている。ノズルが長く、イヤーピースを耳に深く挿し込む形が功を奏している印象だ。静かな場面での描写の細やかさは、さすがバランスド・アーマチュア型である。

対して「TH-ECBA200BBK」は、低音の鳴りっぷりがもっと伸びやかだ。無理のない素直な出方をする。そしてその低音から高音までに共通する感触として、“しなやかさ”を感じる。


ノズル部はやや角度が付けられており、心地良い装着感を実現している
この“しなやかさ”についてはComplyイヤーピースによるところもあるようで、シリコンタイプのものに交換するとその感触は少し弱まる。ユーザーはこれを選択しながら、音調の微調整が可能なわけだ。以降の試聴は、全てComplyイヤーピースを装着して行うことにした。

ピアノトリオ作品、Helge Lien Trio「Hello Troll」のウッドベースは、アタックのゴリッとした凄みは控えて、木質のしなやかな速さと圧力を感じさせる音色だ。ドラムスも同じく、力みのない、しかし確かな音色だ。フロアタムなど特に低音側のパーツもバスンとキレて決まっている。音像を緩めて太さを稼ぎ出すこともなく、立ち上がりと減衰も適当な、実に素直な低音だ。

ピアノの音色も穏やかな美しさといった風情。音色の角は大きめに落とすが、鈍った音色のようには聴こえない。音のつながりが滑らかだ。

また音色の響きのきめ細かな成分が柔らかく広がることも特長で、空間性も豊かである。

やくしまるえつこ「ノルニル」では、彼女独特の、柔らかくささくれた声の感触をよく伝えてくれる。ささくれの成分を刺さらせずに表現してくれるので聴きやすく、しかしながらその声の魅力を損ねてはいない。

エレクトリックベースは休符の決まり具合が良い。音がスパッと切れて、冷静な躍動感が引き出されている。音色自体もぎゅっと艶やかな密度感のある音色で好ましい。

ストレート形状の3.5mmミニプラグを採用する

続けて、再生・出力機器をUSBヘッドホンアンプからiPodに変更して、その点におけるインピーダンススタビライザーの効果を確認した。

その効果は確かに実感できる。機能はON/OFFできるものではないので、厳密には言えないが、ヘッドホンアンプからの出力と、iPodからの出力に存在するはずの大きなギャップが、本機で聴いた場合はさほど気にならないのだ。これなら音質にこだわる方も、外出時にヘッドホンアンプを持ち歩かなくて済むかもしれない。

最後に続けて「フィルター」を外した状態でも音質を確認してみた。フィルター「有」の音質を“ややウェット”と表現するならば、フィルター「無」は“ややドライ”な感触。中低域の抜け、高域の明るさと硬さが少し増す印象だ。なるほど、選択肢としては十分に効果的である。

6.3mm標準変換プラグのほか、クリップ、クリーニングツールが付属する

こちらも本体に付属するキャリングポーチ


トップエンドにふさわしい高音質、マニアックにも使い込める

ブランドのトップエンドにふさわしい素直な高音質と、イヤホンとしての高い完成度を達成しつつ、ユーザー自身によるチューニングの余地も残されている、遊び甲斐のあるモデルだ。高価格帯のイヤホンに初めて手を伸ばす方から、マニアックにイヤホンを楽しんでいる方にまでに、広く注目してもらいたい製品だ。

また、トップエンド製品の開発経験とその存在は、ブランドの今後の製品開発やラインナップ展開にも好影響をもたらすだろうと期待できる。これからの、TDK Life On Recordブランドのオーディオ製品の展開にも要注目である。


TH-ECBA200BBKの商品パッケージ

【SPEC】●型式:デュアル・バランスド・アーマチュア型 ●ドライバー:デュアル・バランスド・アーマチュアドライバー ●再生周波数帯域:20Hz〜20kHz ●音圧感度:121dB/mW ●インピーダンス:35Ω ●コード長:52cm ●質量:12g ●イメーション お客様相談室 TEL/0120-81-05444

【INFORMATION】TDK Life on Record“プレミアムシリーズ”イヤホンのサウンドは、10月29日(土)に開催されるフジヤエービック主催のイベント「秋のヘッドフォン祭2011」に出展するイメーションのブースでも体験できる。

高橋 敦 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。

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