佐藤良平が聴くファイナルオーディオデザイン“PIANO FORTE II” − 同社初の普及価格帯モデルの実力は?

レビュー/佐藤良平
2010年12月16日
ファイナルオーディオデザインが12月上旬に発売したダイナミック型イヤホン“PIANO FORTE II”「FI-DC1550M1」は、“20万円イヤホン”で度肝を抜いた同社初の普及価格帯モデルだ。ホーン型スピーカーの音質を目指したという本機の音質に、ライターの佐藤良平氏が迫った。


“PIANO FORTE II”「FI-DC1550M1」は、ファイナルオーディオデザインが発売した、実売3,280円前後という普及価格帯のイヤホンだ。


“PIANO FORTE II”「FI-DC1550M1」(ブラック×ブルー)

“PIANO FORTE II”「FI-DC1550M1」(ベージュ×ブラウン)
同社はボディを無垢のクロム鋼から削り出して作ったイヤホンFI-DC1601SC(1台20万円!)を売り出して話題を呼んだ。かねてから日本国内のオーディオの常識を蹴飛ばすような製品を連発していたが、イヤホンの分野でも他社の動向にとらわれず独自路線を貫いている。

本機は同社が発売した製品の中で最も安価だが、15.5mmの大口径を持つユニットは20万円のモデルから殆ど変えていない。装着はイヤーパッドを介さず樹脂製の本体表面が耳に直接触れる形になるが、案に反して着け心地は快適だった。ケーブルはY字型で長さは1.2mあり、非常に細い。延長コードや収納ポーチ、変換プラグなどは一切付属しない。本体のカラーはブラックとメタリック・ブルーの組合せ、またはブラウンの濃淡ツートンから選べる。後者はあまり見かけない成形色だが、ファイナルオーディオデザインの高井社長のお薦めは断然ブラウンであるらしい。

振動板前後の圧力差を最適化し、振動板の歪みを低減する空気圧調整口


イヤーチップなしで使用するタイプ

耳穴にすっぽり収まり、装着感は予想以上に快適。ただし編集部員が試したところ、長時間着けると少し耳が痛くなった
本機の設計意図はホーンスピーカーの音をイヤホンで実現することだ。その狙いは上首尾に達成されており、高い能率がもたらす音離れの良さ、音場の密度が濃く、人懐っこい鳴り方といった点で、他のイヤホンには見られない独自性を獲得できている。金気やプラスチックの匂いが少なく、世間一般がイメージするアナログっぽさを持ち、音色が暖かい。本機の特質である生楽器やボーカルの柔らかさ、空間の広がりを味わうには、録音がシンプルでミックスが単純な楽曲が望ましい。好適なソースとして、メーカーはライブ音源を推奨している。高域の伸びが不足しているように思えるかも知れないが、これだけ出ていれば充分だろう。低域は過度にブーストしていない。バランスが上品で押し付けがましくなく、スピーカーで言えば英国メーカーの製品に通じる持ち味がある。価格の安さもメリットだが、それ以上に本機は音のキャラクターの立て方が面白く、貴重な存在だ。

<筆者プロフィール>
佐藤良平 Ryohei Satoh
1964年、秋田市生まれ。音楽ソフトの品質に特化して研究を続けている、世界的に見ても珍しい文筆業者。「季刊オーディオアクセサリー」(音元出版)、「ヘッドホンブック」(音楽出版社)など多数の雑誌やウェブで活躍している。

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