繊細なタッチと密度の濃いサウンドを両立している

ファイナルオーディオデザイン初のBAイヤホン「FI-BA-SS」を聴く − BAとダイナミック型の美点を両立したモデル

岩井 喬
2010年04月06日
本日ファイナルオーディオデザインから発表された「FI-BA-SS」(関連ニュース)を評論家の岩井喬氏がいちはやく入手&試聴。気になる音質のレビューをお届けします。


「FI-BA-SS」
重量のある金属筐体と、大型ダイナミック・ドライバーを搭載した「FI-DC1601」シリーズで、ヘッドホンファンにも広くその名が知られるようになった「ファイナルオーディオデザイン」。その設計思想を踏襲しつつ、自社でカスタマイズしたシングル・バランスド・アーマチュア(以下、BA)型ドライバーを搭載した、金属筐体のカナル型ヘッドホンが本モデルである。同社初のBA型ドライバー搭載機となり、台数限定販売予定であるという。

このカスタムBA型ドライバーと、特許出願中の独自技術BAM(Balancing Air Movement)機構により、位相や時間軸のずれを解消するとともに、筐体内の空気の流れを最適化。BA型ならではの繊細なタッチと、ダイナミック型ドライバーのような密度の濃いサウンドを両立しているという。ハウジングは精密切削によって製造された高剛性なステンレスを採用し、立ち上がりの速いサウンドを実現。「FI-DC1601」シリーズ同様、鏡面仕上げが施され、高級感溢れるフィニッシュとなっている。そして100を超えるサンプルから導き出されたという素材配合によって製作されたイヤーパッドは、音楽再生に不適合な鈍い低音を発生させず、自然な音色を保つことができるという。コンパクトなBA型ドライバーモデルということもあり、本体重量を感じさせない高い装着感が得られる。

サウンドの第一印象としては、BA型ドライバーらしい高域の繊細さが際立つ音色と、一瞬ダイナミック型かと思わせるような中低域の密度感、そしてナチュラルな音の繋がりに驚いた。シングルウェイならではのトーンの厚さであると思うが、声の帯域の充実度はBA型としては希少な存在であると思う。「カラヤン」におけるオーケストラは、自然な中低域のふくよかさを湛えたホールトーンに包まれている。管弦楽器はナチュラルな音伸びと、鮮やかなハリのバランスが整い、すっきりとした音場に溶け込むハーモニーは清々しい。ローエンドにかけ、キレの良いリリースも感じられる。「オスカー」のピアノも中低域の厚みが感じられ、高域にかけてのエッジ感も素直に表現している。ウッドベースやドラムの胴鳴りは有機的なトーンを響かせ、自然な音像の際立ち感が小音量でも楽しめた。

「ヌーン」や「AP」における女性ボーカル表現は、音像定位の芯が的確で、自然な肉付き感とすっきりとした音ヌケの良さ、素直な音伸び感が得られる。「メニケ」ではリズム隊をキレ良く描き、タイトなロックサウンドを届けてくれるが、エレキの弦は太く、ディストーションは厚みがある。倍音成分も脚色にならない程度に利いているようだ。

全体的に付帯音は感じられず、ソースに込められた情報はストレートに描写する。ゆえに録音の良くないソースは非常につまらない音になってしまうが、アコースティックな素材の良さを正確に楽しみたいというリスナーにとっては最適なモデルといえそうだ。そしてBA型ならではの繊細で解像度の高いサウンドは、小音量でもきちんと全帯域をバランスよく聴かせてくれる。この点は耳への負担を軽減する上でも重要なメリットといえよう。

■試聴ソフト
●『Pure〜AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS』(F.I.X.:KIGA2、略称:AP)
●カラヤン/ベルリン・フィル『ホルスト:組曲<惑星>』(ユニバーサル: POCG- 9355、略称:カラヤン)
●オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(ユニバーサル:UCCU-9407、略称:オスカー)
●noon『Homecoming』(ビクター:VICJ-61567、略称:ヌーン)
●デイヴ・メニケッティ『MENIKETTI』(DREAM CATCHER:CRIDE35、略称:メニケ)


【筆者紹介】
岩井 喬 Takashi Iwai
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。

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