最上位機「MDR-EX700SL」との比較試聴も敢行

ケースイが迫る!ソニーのインナーイヤー型デジタルNCヘッドホン「MDR-NC300D」を聴く

鈴木桂水

前のページ 1 2 次のページ

2009年06月19日
ソニーが発表したノイズキャンセリングヘッドホン(以下、NCヘッドホン)を2回に渡って紹介している。前回のレビューでは、同社にとって初のインナーイヤー型デジタルNCヘッドホンとなる「MDR-NC300D」の開発者インタビューをお伝えした。今回は実機を使ってリスニング感のテストリポートをお伝えしよう。

今回テストするのは下記の3製品だ。


MDR-NC300D
インナーイヤー型初のデジタルNCヘッドホン


MDR-NC33
インナーイヤー型アナログNCヘッドホン


MDR-NC600D
オーバーヘッド型デジタルNCヘッドホン

まずはMDR-NC300Dからテストしてみよう。本機には周囲の音を解析し、最適なノイズ軽減を行う「フルオートAIノイズキャンセリング機能」が備わっている。これはオーバーヘッド型のMDR-NC500Dにも搭載されていた機能で、デジタルNCヘッドホンならではの機能だ。

NCの効果は3種類あり、「NC MODE A」は飛行機、「NC MODE B」は電車・バス、「NC MODE C」は空調機器・パソコンの冷却ファンなどの音を軽減する。「NC MODE C」はオフィス、勉強部屋モードといえるだろう。今回のテスト期間中には飛行機に乗る機会がなかったので、NC機能は地下鉄と自宅の仕事部屋でテストした。


試聴は『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』(ソニーレコード版)のサントラから「運命の闘い」と、ZAZEN BOYSの『ZAZEN BOYS』から「開戦前夜」、ロバート・パーマー『HONEY』から「ガール・U・ウォント」を聴いた。

「運命の闘い」では低域から高域の変化と再現性、「開戦前夜」ではヴォーカルと楽器音の再現性を評価した。「ガール・U・ウォント」は、歌詞にサ行が多く、高域に弱いヘッドホンが音を上げやすいのでテスト素材に選んだ。プレーヤーはアップルのiPod第5世代の30GBモデルを使った。なお、製品の詳細については今回、ソニーの製品開発者であるコンスーマープロダクツ&デバイスグループ オーディオ・ビデオ事業本部 パーソナルエンタテインメント事業部1部 主任技師の角田直隆氏にお話をうかがった。

ソニー角田氏に新製品「MDR-NC300D」の開発経緯などインタビューを行った

■MDR-NC300Dの再生能力をチェック〜インナーイヤーのフラグシップ「MDR-EX700SL」との比較も行ってみた

地下鉄では、電源を入れて数秒で液晶の表示が「NC MODE B」に切り替わり、電車のモーター音や車両の風切り音がほとんど気にならなくなった。「運命の闘い」ではコーラスが伸びやかで、コントラバスなどの低域の表現も豊かだ。「開戦前夜」ではボーカルの声質やリバーブなどのエフェクト表現もしっかり感じられる。「ガール・U・ウォント」では高域が割れるヘッドホンが多いが、なんとか持ちこたえたのはさすがだ。


ボリュームはあるが、装着した感じは軽い

本体上部に操作ボタンを配置する。操作性は良い。クリップは着脱可能だ。なおクリップの挟む力はもう少し強くてもよかったように思う
筆者は日ごろインナーイヤー型では「MDR-EX90SL」を愛用しているが、こちらに比べると若干、音の輪郭が曖昧になっている感もあるが、騒音下で使うならNC機能がある「MDR-NC300D」の方が体感音質は上だろう。

本機にはNC効果の調整機能も備わっている。インナーイヤー型のヘッドホンはオーバーヘッド型に比べ、外耳道の形状や容積から、NC機能の個人差が出やすいが、MDR-NC300DにはNC効果の調節機能が備わっており、個人の好みにあわせてNC機能を調整できるのは素晴らしい。


付属のポーチに収めた状態

付属のレザーケース。付属品がキレイに収納できる使いやすいデザインだ。高価なNCヘッドホンというと、なぜか高級シェーバーのような皮っぽいケースが付属することが多いが、筆者はオジサンくさい気がして使わないことが多い。筆者には相応なんだろうが…
筆者が個人的に感動したのはMDR-NC300Dが搭載するサウンドモードだ。ノーマルモードのほかに、MovieモードとBassモードがある。Movieモードはいわゆる「コンプレッション機能」で、ささやき声を大きくし、爆発などの効果音を小さくし、映画などの音声を聴きやすくする。角田氏によると「イコライジングとダイナミックレンジコンプレッションを組み合わせている」とのこと。イコライジングでは1kHzあたりの声が不自然に聴こえないよう、わずかに強調することで、台詞を聴きやすくしている。

「ダイナミックレンジコンプレッションについては、一般的な乗り物のノイズレベルを勘案し、それらにセリフが隠されないようコンプレッションカーブを整えるよう試聴を繰り返して設定しました」と角田氏。開発者が実際に様々な乗り物に乗り、台詞や効果音の再生チェックを繰り返しながら音質を調整していったという。その甲斐あって、このモードを使うと騒音の中でも映画やドラマが聴きやくなる。筆者はPSPやウォークマンでドラマや映画を移動中に楽しんでいるのだが、この機能で視聴すると、台詞が聴きやすくなりとても快適に楽しめた。


PSPで映画やドラマを見るなら相性は抜群。Movieモードが役立つ。PSPはヘッドホン出力が小さく、ボリューム不足に悩まされるのだが、この機能を使えば迫力満点で楽しめる

電池交換のときに電池が飛び出さないようにツメでホールドしている。開発者の角田氏がテスト中に機内で電池を飛ばして、探すのに難儀したのがきっかけで“ツメ”がついた
Bassモードは最近のJポップやJロックなど、低域がカッコイイ曲を聴くのに最適だ。埋もれているベースラインがぐっと引き立ち、気持ちよく楽しめた。モバイルシアター派にはぜひオススメしたい機能だ。

筆者がこの機種を目の当たりにした際、真っ先にテストしてみたいと考えたのが、同社のインナーイヤー型のフラッグシップモデル「MDR-EX700SL」との比較だ。どちらも同じ16mmのダイヤフラムを使用している。製品の方向性は違うものの、MDR-NC300Dが搭載するデジタルアンプの効果や、具体的な音質の違いを比較してみたかった。


MDR-EX700SL(左)とMDR-NC300D(右)の比較。マイクを内蔵するのでMDR-NC300Dの方が若干本体サイズが大きい

MDR-NC300D(左)とMDR-EX700SL(右)の開口部の違い。MDR-EX700SLの方がわずかに開口部が大きい
実際にテストしてみると、予想以上に音質の違いが現れた。MDR-EX700SLの方が解像感は高いが、全体的に音が硬く、高音が暴れ気味という印象を受けた。MDR-EX700SLで「ガール・U・ウォント」を聴くと、ややキンキンと響くような音の印象を受けた。だが、やはり解像感は優れており「運命の闘い」の低域も崩れることなくしっかりと再現している。ヘッドホン自体の再生能力が高いということなのだろうが、プレーヤー側にしっかりとしたイコライザー機能がないと聴きづらい場合もあるだろう。

一方のMDR-NC300Dの方は様々なソースへの対応力が高い。MDR-NC300Dの方が長時間使っても聴き疲れすることは少ないだろう。筆者の好みとしては本機の方が普段使いに向いていると感じた。これには本機のデジタルアンプやデジタルイコライザーによる効果も大きいだろう。一方のMDR-EX700SLは基本スペックは優れているものの、ユーザーの好みにあわせて音質が調整できるプレイヤーと一緒に使いたいという印象を受けた。モバイル環境と言えども、良質なサウンドを追求するならば小型で高性能なヘッドホンアンプが必要だと実感した。

ちなみにMDR-NC300Dの開発を担当した角田氏によると、MDR-EX700SLとMDR-NC300Dではどちらもダイヤフラムの直径は同じだが、MDR-NC300Dの方が多くの溝が切ってあり、これにより音質を最適に調整したのだそうだ。

MDR-NC33の再生能力をチェック〜前機種「MDR-NC22」からの進化は如何に?

前のページ 1 2 次のページ

関連記事