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ソニー主任技師・角田直隆氏にインタビュー

ケースイが迫る!インナーイヤー型デジタルNCヘッドホン新製品「MDR-NC300D」の魅力

公開日 2009/06/12 15:51 鈴木桂水
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インナーイヤー型でノイズキャンセリング機能を実現するために、デザイン面で工夫を凝らした箇所について角田氏に聞いてみることにした。

角田氏:コンパクトなヘッドホン部のどこにマイクを配置するかということでは、何度も試行錯誤を繰り返しました。NC機能の搭載をアピールする意味でも、見た目にマイクの存在がわかりやすく、それでいて着け心地が良いデザインにたどり着くまで11以上の試作品を作りました。デザインを決めるだけでも2年はかかったと思います。外観だけのデザインとしては満足の行くものに仕上がったと思っても、装着してみたら、左右の耳からマイクだけが“ぴょこん”と飛び出していたりして、着けて歩くのはちょっと…ということもありました(笑)。


ヘッドホン部にマイクを内蔵

新開発のドライバーには16mmという大型なダイアフラムを搭載する


ヘッドホン部の内部構造分解図

MDR-NC300Dに採用された各パーツ
また、インナーイヤー型のNCヘッドホンではイヤーピースのサイズと外耳道(耳穴)とのフィット感がとても重要な要素になります。いくらNC機能が優秀でも、耳にフィットしていないとノイズが隙間から入り込んでしまい、効果が薄れてしまいます。かと言ってあまりにフィット感がキツイと耳が痛くなってしまいます。ソニーにはおよそ数百パターン以上の耳型を集めている“耳型職人”がおり、人間の耳の形、外耳道の直径、深さに対するデータを集めています。そのデータからインナーイヤー型ヘッドホンのフィット感は外耳道の“直径”だけでなく、“深さ”も影響することがわかりました。2007年に発売したインナーイヤー型のヘッドホン「MDR-EX700SL」では、直径と深さのフィット感が選べるイヤピースを付属しました。MDR-NC300Dでは、新しいタイプを加え全部で7種類のサイズを用意して、より多くの方の耳にフィットするイヤーピースを用意しました。例えば外耳道の直径は小さいけれど、浅めに差し込んだ方が安定するという方には「SS」、外耳道の直径が大きく、深く差し込んだ方がフィット感があると感じる方は「LL」という具合に、インナーイヤー型のNCヘッドホンだからこそ快適なフィット感が選べるような工夫を盛り込んでいます。


ペアリングが分かりやすいよう色分けされた付属イヤーピース

左はフラグシップモデルのインナーイヤーヘッドホン「MDR-EX700SL」


角田氏へのインタビューから、インナーイヤー式のデジタルNCヘッドホンを開発するには以下のポイントが重要であることがわかった。

・飛行機の機内音など大きな騒音を打ち消せるだけのパワーを備えたドライバーユニット
・ノイズを瞬時に解析して、ノイズをキャンセルするDNC回路やドライバーユニットの低域をコントロールするイコライザー機能
・DNC回路やイコライザーを正確に制御するプログラム
・耳にフィットする本体デザインとイヤーピース

この4大要素こそ理想的なインナーイヤー型デジタルNCヘッドホンの実現には欠かせないものである。角田氏は海外出張に出かけるときにも開発中のヘッドホンを常時携えて、様々な飛行機に乗ってMDR-NC300DのNC機能をフィールド調査したそうだ。余談だが、その中には話題の“総2階建てジャンボ”の「エアバスA380」も含まれており、「飛行中は気流ノイズが発生する2階席よりも1階席の方が静かに感じました。あとは当然エンジンよりも前の座席位置の方がノイズが少なく、ヘッドホンリスニングもより快適に楽しめるのではないかと思います」と語る角田氏。ユーザーのためにとことん快適な使い心地を調べ尽くそうという角田氏のこだわりように、筆者も驚くばかりだった。

MDR-NC300Dの使用感だが、MDR-NC500Dで味わったデジタルNCヘッドホンの魅力を改めて再認識した次第だ。ソニーの調べでは「ノイズキャンセル率 約98.4%」という実力を備えているということだが、これまでのアナログ方式とは一線を画す静粛性を実現している。住環境に例えるならアナログ方式がサッシ1枚を閉めた程度の効果なら、こちらは二重サッシのような静かさで、音楽を再生すると外音はほとんど気にならなくなる。実際の数値的なNC効果性能よりも、快適なリスニングが楽しめるという実感だ。当然音質も犠牲にしておらず、高音から低音まで見事に再現している。

ドライバーを外耳道に対し垂直に配置する装着方式「バーティカル・イン・ザ・イヤー」を採用。優れた遮音性能と着け心地を実現している

次回のレポートでは、本機のリスニング感についてより詳しくお伝えしよう。

鈴木桂水:筆者プロフィール
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。

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