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アプリ審査のガイドラインに見直し要求も

AppleとEpicの裁判、連邦地裁はApp Storeの反トラスト法違反を認めず

2021/09/13 山本 敦
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米国の大手ゲームデベロッパであるEpic GamesがAppleを相手取り起こした訴訟に対して、米カリフォルニア州北部地区の連邦地方裁判所が現地時間9月10日(金)、Apple側の主張を大幅に認める形でApp Storeにおけるガイドラインが米国における独占禁止法である反トラスト法の違反に当たらないとの判決を下した。Epicではこれに対し不服を唱えている。


今回の訴訟は、Epic Games(以下:Epic)がApp Storeで配信するiOS版「Fortnite(フォートナイト)」のゲームアプリ内において独自の決済システムを設けたことに対して、Appleが独自のアプリ配信のプラットフォームであるApp Storeのガイドラインに違反するものとしてアプリを削除したことから、2020年8月にEpicにより提起された。

公開された全185ページにも及ぶ判決の要点は次の通りだ。まずEpicがAppleに対して提起した10件の申し立てのうち、9件について連邦地方裁判所がApple側の主張を認める形でこれらを退けつつ、Appleが独占企業であるとは認められないと結論付けた。

App Storeを通じたAppleによるデジタルコンテンツ配信の仕組みと、アプリ内課金技術の使用に関する要件については、これらがアプリの開発者にとって競争上に重要な利益をもたらすものであり、またサービスを利用するコンシューマーにも有益な仕組みであることを認め、これを継続できるとの判決を示した。

またデベロッパによりApp Storeに持ち込まれたアプリを事前に審査するApple独自のシステムについては、iPhoneなどAppleのデバイスを使うユーザーのセキュリティやプライバシーの保護にも寄与するものとした。連邦地方裁判所は、Appleがデベロッパとの間にプラットフォーム利用の手数料を含む規定を記した契約書の内容についてもその正当性を認めている。

今回の訴訟においてEpicが要求していた、App Storeを経由せずに同社のアプリを入手できる「サイドローディング」、あるいはApp Store内に独自の課金決済システムを設ける「ストア内ストア」の設置については却下された。

App Storeのガイドラインに規定されているデベロッパに対する売上手数料についても、今回の判決では現在の仕組みに対する正当性が認められている。なおAppleは2021年初から「App Store Small Business Program」を立ち上げ、App Storeにおける売上高の額に応じて手数料を条件付きで引き下げる施策を実施。個人・小規模組織のデベロッパを支援するための環境を整えている。

また、EpicがAppleの設けるガイドラインに従わなかった期間中、得ることができた収益についてはその30%を罰金としてAppleに支払うこともEpicに命じている。

米カリフォルニア州北部地区 連邦地方裁判所が公開している判決のドキュメント

連邦地方裁判所は、App Storeの利用ガイドラインに正当性を認めていることから、今回の判決にアプリ内課金の代替システムを設けることについては触れられていない。ただし、代わりに独自のアプリ審査のガイドラインについて2点を見直す要求がAppleに伝えられた。

ひとつは「アプリ内」、もうひとつは「アプリ外」において、デベロッパによるユーザーとのコミュニケーションを制限する項目だ。これが手数料ルールの緩和につながる内容となっており、それぞれについてAppleは、今後もデベロッパとの間に発展的な関係が構築できるようシステムの改善を図る考えを表明している。

なおAppleは今月の初めに日本の公正取引委員会との合意事項として、デジタル版の新聞に電子書籍、音楽・ビデオ配信などコンテンツを提供する「リーダーアプリ」について、デベロッパがアプリ内に自社ウェブサイトへのリンクを1つ設置できるようにシステムを見直し、2022年初からガイドラインのアップデートを実施することを発表している。

今回の判決に対して、Epicのティム・スウィーニーCEOは自身のTwitterで「デベロッパとコンシューマーのどちらにとっても勝利をもたらすものではなく、これからもEpicは10億人のコンシューマーのために公正な競争が行われる環境の実現を目指して戦う」とコメントしている。また今後のiOS版Fortniteの展開については「EpicがAppleのアプリ内決済と公正な競争ができるアプリ内決済システムを提供できる時期と場所が整った時にApp Storeに戻り、節約分を消費者に還元したい」との考えを示している。

一方では今回の米国における訴訟の判決が、欧州委員会がAppleに対して行っている申し立てなどにもどのような影響を及ぼすか、注目だ。

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