パナソニックが映像メディア事業説明会を開催。人や環境に制約されない持続可能なワークフローで映像コンテンツの価値向上へ
リモートプロダクションや場内演出などKAIROS活用が拡大
パナソニック コネクト株式会社、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社は、「映像メディア事業説明会および新製品発表会」を開催し、これまでの実績や事例、未来を見据えた新たな取り組み、11月に出展するメディア総合イベント「Inter BEE」展示ブースの見どころについて説明を行った。
パナソニックの国内映像メディア事業について、パナソニック コネクト株式会社 現場ソリューションカンパニー ヴァイスプレジデント 映像メディアサービス本部 マネージングダイレクター・梶井孝洋氏が登壇。

梶井氏は「両社が開発・製造・販売において一体となり、現場の課題に寄り添った取り組みを推進している」とコメント。その領域はテレビ放送やネット配信などのスタジオ、ライブステージやスポーツ中継・場内演出などのスポーツ・ステージング、さらに昨今は企業や地域のイベントなど、制作から配信まで様々な現場へ最適なソリューションの提供を行っているとした。
“撮る”“映す”“創る”“分析する”“管理する”豊富な製品ラインナップの組み合わせで、映像制作ワークフローを実現するパナソニックのソリューションの主軸となるのが、ハイレベルな高品質映像と映像制作現場の効率化を実現する、グローバルシェアナンバー1の「リモートカメラ」、ソフトウェアベースのライブ映像制作プラットフォーム「KAIROS」、リモートプロダクションとの親和性が高く、報道制作現場の効率化を実現する国内納入実績ナンバー1の「サブシステム・ファイルベース」。
このなかから梶井氏は、リアルタイムに映像を合成・加工し、送出することができるソリューション「KAIROS」について説明。その特長として、SDI、ST2110、NDIなどベースバンドとIPパケットをフルサポートする多彩な入出力、ソフトウェアの追加による機能拡張や外部機器連携により顧客ニーズに合わせた機能提供を可能とするフレキシビリティとスケーラビリティ、異なる解像度の入力や特殊画角の出力も可能な解像度フリー・画角フリー、レイヤー構成による多彩な映像表現の4つを挙げた。
放送局に加え、リモートプロダクションや場内演出の用途にも活用が拡大しており、2020年9月に提供を開始したオンプレミスは受注70社138式、2022年6月に提供を開始したクラウドソリューションは契約34社120件の国内実績を誇る。
数多くの導入実績のなかから、演出事例としてトヨタアルバルク東京を紹介。国内アリーナにおける最先端の映像&音響で没入感を高めた新たな観戦体験を実現すると同時に、業務の効率化にも貢献するものだとアピールした。
また配信事例として紹介したNTTビジネスソリューションズ/NTTスマートコネクトでは、大阪・関西万博会場においてデータセンター上に設置したKAIROSを共同利用型で各局に提供するリモートプロダクションを実現。「従来の中継車の代替手段となり、人の移動や機材の運搬コスト削減を可能とした」と説明する。
持続可能な制作環境の第一歩。報道サブをフルクラウド化
今後のさらなる貢献へ向けた取り組みにおいては、映像の活用シーンが広がることで、コンテンツの拡大と多様化が急速に進展すると説明。それに伴い、労働人口の減少と高齢化による業務の停滞・新しい技術の導入の遅れ、経験と勘による属人化による業務の非効率性・品質のばらつき・知識やノウハウの喪失、現場機材の増加・複雑化による操作の難易度アップ・トラブル対応への遅れ・リソースやコストの増加などの課題を指摘した。

その解決には、「業務効率化と映像クオリティ向上を両立させる、一過性ではなく継続することが可能な制作環境が必要」と訴えた。パナソニックでは「フルクラウド化による新たな映像制作モデルの提案」「IP化、自動化、映像表現手法の拡充を実現する製品開発」の大きく2点からアプローチを行う。
一つ目の「フルクラウド化による新たな映像制作モデルの提案」では、その第一歩として放送局内でニュース番組の制作から配信までを行う放送サブのフルクラウド化を目指す。限られた時間・リソースでの対応、視聴者数の減少などの課題に加えて、場所に制約された非効率運営、設備の保守・維持管理、専門人材の確保、ネット配信業務の負荷増大などの課題が輪をかける、人手不足が深刻化するローカル局の変革をターゲットに据える。
国内民放放送局報道サブシステムの納入シェアは国内トップの約40%、業界に先駆けてOTCを導入するなど、熟知する報道制作オペレーションを軸に、人や設備が固定された制作現場に対し、人や設備を柔軟につなげる制作現場への進化を提案する。
3つの進化ポイントとして、場所に制約されない業務遂行と機器削減による運用・コストの最小化、災害発生時も継続が可能な運用サポート、オンデマンド配信までのオペレーションの自動化や字幕表示の作業負担軽減による省力化を挙げた。
梶井氏は「無理にすべてではなく順番でいい。大変でも運用を変えていかないと、継続できなくなる。そこへチャレンジしていく」と力を込めた。なお、11月19日から幕張メッセで開催される「Inter BEE 2025」では、「東京2025デフリンピック」の競技会場からのライブ中継におけるニュース制作のデモンストレーションを実演する予定だ。

IP化、自動化、映像表現手法の拡充を実現する製品開発を加速
続いて、二つ目の「IP化、自動化、映像表現手法の拡充を実現する製品開発」について、パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社 イメージングソリューション事業部次長(兼)プロフェッショナルAV事業統括・谷口昌利氏が説明した。

強いハードウェアとソフトウェアの開発で、顧客ワークフローに貢献を目指すパナソニックでは、KAIROSを軸にしてIPで繋がる世界を実現する「IP/リモート化」、AIを含む技術革新で映像制作をよりシンプルにする「自動化・省力化」、思い描く表現に合わせてシステムを自由に構築できる「映像表現手法の拡充」の3つのポイントから、業務効率化と映像クオリティの向上を両立する製品開発を加速する。
今回、新製品として発表されたのは、AK-UCX100と同一プラットフォームで取り回しのよい、ボックススタイルにした4Kマルチパーパスカメラ「AK-UBX100」。多彩なIP伝送規格に対応し、対応予定のAF機能やシステムカメラ/リモートカメラと共通のROPでシームレスな操作を可能にするなどオペレーションを効率化できるという。

リモートカメラコントローラー「AW-RP200GJ」は、リモートカメラ制御をよりシンプルにしながら多彩な表現が可能。2本のジョイスティックなど運用性もさらに向上させ、IP対応を拡充することで柔軟なシステム構築を実現できるようにした。

Media Production Suite用画質調整プラグイン「Image Adjust Pro」は、最大20台のスジオカメラ、リモートカメラに同時接続した一元操作・管理を実現。PCやタブレットなどさまざまな端末からリモート制御が可能で、場所やスペースに縛られた運用から解放する。ハードウェア風レイアウトや編集ソフト風レイアウトなど、ソフトウェアの強みを活かした柔軟な操作性を実現するとのこと。

アップデートでは、4Kスタジオカメラ「AK-UCX100」は、オペレーターの習熟度を問わずに素早く安定したフォーカス合わせを実現する世界初のオートフォーカス機能(12月)、4Kマルチパーパスカメラ「AW-UB50」「AW-UB10/4K」は、同社製コントローラーから大判カメラのパンチルトを含むリモート制御が可能になる、Movicom社製パンチルト回転台への対応(近日)をそれぞれ予定している。

2025年度第3四半期には、KAIROSの可能性を次のステージへと引き上げるHDMI入力/出力ボード「AT-KC20M2/AT-KC20M3」の発売を予定。映像品質のさらなる高度化、システム設計の簡素化、システム構成の柔軟性向上を実現する。
ブースを出展する「Inter BEE 2025」では、「現場がつながる・変わる・広がる」をコンセプトに掲げ、変わりはじめる映像制作の現場が抱える課題に向き合ったこれら新製品や前述のシステムのフルクラウド化によるニュース番組のライブ配信、さらに、AI審査による自動解析で広告審査をサポートするサービスの紹介などを行うとのこと。



