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碓井稔氏から小川恭範氏へバトンタッチ

セイコーエプソン新社長会見。「仕事を楽しむ」環境をつくり、さらなる成長と社会課題の解決に取り組む

公開日 2020/01/31 18:32 Senka21編集部 徳田ゆかり
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セイコーエプソン(株)は本日の同社取締役会において、代表取締役の異動および社長交代について決議。現代表取締役社長の碓井稔氏が取締役会長に、現取締役 常務執行役員の小川恭範氏が代表取締役社長に就任することとなった。両者の就任予定日は2020年4月1日。

このたびの異動の理由についてエプソンでは、このように説明している。

エプソンは、長期ビジョン「Epson 25」の実現に向けて、2019年3月に第2期中期経営計画を策定し、環境変化や社会課題に対応したメリハリのある経営により、高い収益を生み出す事業運営への改革に取り組んでいます。第2期中期経営計画の初年度である2019年度においては、厳しい経営環境のもと、協業・オープンイノベーションの推進に加えて、将来成長につながる従来にはない商品およびサービスの開発・提供などにより、改革に向けた事業基盤の強化が進展しました。今後、エプソンを取り巻く経営環境の大きな変化が継続的に見込まれるなか、新社長による優れた統率力と新たな視点に基づく柔軟かつ迅速な経営により、中長期的な企業価値向上を実現してまいります。

本日、新会長、新社長が揃っての緊急記者会見が開催された。

新会長の碓井稔氏(左)と新社長の小川恭範氏(右)

碓井氏は、2008年に代表取締役社長に就任してから今日までを振り返ってこう語った。「“極めて極める”。ものごとの本質を追求し、方向性が決まったら目的に向かい、達成できるようとりくむ、成し遂げるということ。これを座右の銘としてやってきた。技術を磨き極め、お客様にとって価値あるものを追求し、価値ある商品を提供。社会になくてはならない会社になるべく取り組んだ」。

碓井稔氏

「2008年にはリーマンショックなどもあり、3月には長期ビジョンを定めて事業の選択と集中を図り、安定した利益体質成長への新たな道筋を定めた。電子デバイスで構造改革を図り、事業の柱であるプリンターでは、インクジェットで拡大するという目標のもと、2013年度以降業績改善につなげることができた。2016年には2025年に向けた長期ビジョン『Epson 25』を策定。インクジェット、ビジュアル、ウェアラブル、ロボティクスでイノベーションを起こすと、目指す方向をより明確にすることができた」。

「2019年度の業績は厳しい状況になっているが、大容量インクタンクプリンターやオフィス共有プリンターなど強化領域は順調に拡大しており、将来成長につながる消費やサービスを投入できている。デジタル化へも方向づけができた。さらに協業・オープンイノベーションも加速、外販も実利の見通しが定まってきて、事業基盤も強固になってきた」。

あとは計画を着実にスピーディに実行するのみ、として「着実に俊敏に新しい事業領域を開拓できる商品やお客様接点をつくるのが重要。そこで、新しいリーダー、長く重責を担える人にバトンタッチするタイミングと考えた」。そして取締役選考審議会の審議で小川氏が選任され決議されたと説明。

小川氏はプロジェクター事業に携わり、技術開発からトップマネジメントまで長年にわたり活躍。1998年にエプソンが初めて開発したビジネスプロジェクターでは、今日のプロジェクターによるプレゼンテーションの文化創造をリード。碓井氏は「コア技術への造形深く、エプソン全体の競争力の源泉となる研究・技術開発を担っている。今後はすぐれた統率力でさらに飛躍させてくれるものと思う」と高く評価する。

小川氏は、挨拶の言葉をこう述べた。「私は社内に向けていつも、楽しく仕事をしようと言い続けてきた。すべての社員が仕事にやりがいを感じ、楽しんで欲しいという強い思い。辛い仕事でも、それを楽しむ姿勢や気持ちが大事。楽しく仕事をすればパフォーマンスが上がり、アイデアが浮かびやすく、お互いが協力し合える状態になりやすいはず。これはまさにエプソンの経営理念にある創造と挑戦、総合力を発揮するための大切な条件」。

小川恭範氏

会社をこのような状態にするために、「組織風土を重要視する。自由闊達で風通しのいいコミュニケーション環境のもと、誰とでも気軽に話ができる環境こそ楽しく仕事できる条件。それによって想像と挑戦、総合力が磨かれ、お客様を大切にする気持ちにもつながると考える。あえてここを強調し注力したいと思う」。

エプソンの強みは「技術開発力、省・小・精の技術をDNAとし、どの領域も技術力が高く評価されている」とし、今後については「SDGsの持続可能な社会の実現に向け技術力を高め、生かし、イノベーションを起こして社会課題解決に取り組みたい。どんな世の中でありたいか、その姿を明確にし、実現に向けたシナリオをスピーディに実行する」との決意を語る。

また「環境変化に柔軟に対応することは必須。そのためにも協業・オープンイノベーション加速する」。エプソンの強みであるモノづくり力、生産・製造力、全世界での販売網には強い自信があるとして、「それを実現するためにも、グローバルでの7万人の社員が最大限に能力を発揮する環境をつくることが重要。自由闊達で風通しのよい環境づくりが必須。健全な危機感をつねにもち、社員1人1人がやりがいをもち、活気ある会社にしていきたい」とした。

2020年度はエプソンの長期ビジョン「Epson 25」の第二期中期経営計画の2年目。「2019年度までに進むべき方向は定まり、事業基盤も強固になった。2020年もエプソンを取り巻く環境は厳しいが、新たな視点で柔軟で迅速な経営を行い、独創の技術、モノづくり力、グローバルの叡智を集めるチーム力でさらに強固なものとし、エプソンを社会にとってなくてはならない会社にするべく努力する。変化に対応し、省・小・精を磨き、10年後にはSDGsで目指す持続可能な社会を牽引できる会社にする」と締め括った。

<質疑応答>
Q.バトンタッチをどう決め、伝えたか。

碓井氏 2年ほど前から考えていた。本格的に選考審議会で議論を進めた。最終的に決めたのは昨年末、年明け早々に小川氏に伝えた。本人にわかるようにオペレーションをやってもらっていたところもある。

Q.打診されたときの気持ちは。

小川氏 自分の受け持つ範囲が全社が見える範囲になってきていたので、そんなことも考えているのかなとは思っていた。

Q.碓井体制の中でやれたこと、やれなかったことは。

碓井氏 デバイスをなんとかしなければならないタイミング。集中と選択、強みを追求し構造改革してきた。何を中心にどういう方向でというのはだいぶ定まった。2012-13年に復活できたが、そのときはエコタンクのビジネスモデルも確立。これまでの足跡を大きくかえずにできた。就任中の前半はスピーディにいったが、後半は計画通りのスピード感で運ばなかった。もっと早く、あるべきEpson 25の姿を数字として見せられるようにと思ったが、そこまでいかなかった。ただ、こういうもので成長できるということは示せるようになってきている。枠組みをつくってアクセルを踏める状況になった。1人1人がエプソンを動かしていける体制をつくらないといけない。

Q.指名にあたってのポイントは。

碓井氏 技術を見る目、事業の方向を定めるところが優れている。人望もあり、ひとりひとりの内面に入り込み、やる気を出させてくれるマネジメントスタイルで、自分とは違うスタイル。こういう状況になったタイミングでは、こういうスタイルがスピードを出せて、総合力を発揮できると考えた。

Q.自分の長所短所をどう見るか。

小川氏 強みはまさに社員の力を最大限に引き出し総合力を発揮するところと思う。向かうべき方向が明確になったので、そこにむけ従業員の力を最大限に導く。環境変化に対応する必要、柔軟な思考も自分の強みと思っている。現状でこれまでの役員経験は浅いが、これを欠点にならないようにする。

Q.数字として示すために取り組むことは。

小川氏 これまでの事業に加えて、さらに成長させるための新たな事業の開発も進めている。すぐに出てくるものではないが、新しい事業を牽引していきたい。技術の力で成し遂げる、将来の社会課題にどう解決策を提示するか、そのためのビジネス構築が課題。まさに取り組み始めたところ、結果を数字としても出したい。

Q.経営のテーマ、座右の銘は。

小川氏 エプソンは技術の会社。これまで強い技術をつくり、いかにお客様に届けるかという方向だった。これからは、社会課題への取り組み、エプソンがどう解決策を出せるかという発想を社内に浸透させ、舵取りをしていきたい。座右の銘というか、社内で言ってきたのは「仕事を楽しむ」。これに尽きる。社員1人1人が仕事を楽しむことで、さまざまなアイデアが出て、多様な意見が出る。お互い刺激し合って最終的に方向を決めていく、というやり方をしたい。

Q.趣味は。

小川氏 スポーツをいろいろやってきた。特にスキー。旅行も好き。アフリカや中近東など人の行かないようなところにも行っている。

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