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新社長・矢原史朗氏登場

パイオニア新社長が再建への抱負を語る。「新たなポジションを構築し、モノ&コトの価値展開を図る」

公開日 2020/01/23 19:05 Senka21編集部 徳田ゆかり
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パイオニア株式会社では、2019年11月28日開催の取締役会において代表取締役の異動につき決議、2020年1月1日より新たな代表取締役 兼 社長執行役員として矢原史朗氏が就任している。本日、同氏による記者会見が開催された。

パイオニアはベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)とのパートナーシップの締結により、同社の支援を受けて、財務基盤の強化や収益性とキャッシュ・フローの改善、新体制の構築を図ってきた。

今後は「成長ステージを見据えた新たな経営体制のもとで、持続的な成長の確保による企業価値の向上を図るとともに、独自の製品やサービスを通じて今まで以上にお客様へ新たな価値を提供できる企業を目指す」として新代表取締役を選出した。なお前代表取締役の森谷浩一氏は新たに代表権を有さない取締役に就任し、現社長のサポートにあたっている。

記者会見に登壇した矢原氏は、これまでの自身の経験に絡めて今後パイオニアで取り組むことに対する抱負を次のように語った。


矢原史朗氏プロフィール
昭和36年12月12日 愛媛県生まれ。最終学歴:昭和61年3月 東京大学経済学部卒業、平成5年 ミシガン大学MBA取得。職歴:昭和61年4月 伊藤忠商事株式会社入社 自動車部門、平成11年9月 日本GE入社 企画開発部長、平成11年9月 GEキャピタルリーシング株式会社 SVPインテグレーション本部長、平成16年7月 GE横川メディカルシステム株式会社(現 GEヘルスケア株式会社)常務取締役営業本部長、平成19年4月 ベインキャピタルジャパン入社 オペレーティングパートナー、平成20年4月 サンテレホン株式会社 代表取締役社長、平成22年3月 株式会社ベルシステム24 代表取締役社長、平成25年3月 ジュピターショップチャンネル株式会社 代表取締役副社長、平成26年4月 日本エア・リキード株式会社入社 専務執行役エレクトロニクス事業本部長、平成26年12月 同社 代表取締役社長兼CEO 就任、令和元年 12月 パイオニア株式会社入社 顧問、令和2年1月 代表取締役 兼 社長執行役員就任

■「名門日本企業の再建の象徴的なケース。チャンスをいただけ非常に興奮している

大学卒業後、伊藤忠商事の自動車部門に配属された経験があるが、今回のことで自動車に縁があると思っている。そこで12年を過ごす間にアメリカの大学でMBAの派遣留学もし、その後日本GEに転職してジャック・ウェルチ氏とジェフリー・イメルト氏の二人のリーダーのもと10年間過ごした。それからファンドであるベインキャピタルジャパンに入り、投資をした後の企業のバリューアップで経営チームを支援する部署の東京のヘッドとなった。

今回パイオニアはベアリングという別のファンドの傘下に入ったということで、私の立場がよく誤解を招いている。ベインキャピタル時代、私はファンドの人間として経営支援をし、結果としてそこの社長になって現場で実行する経験もしてきた。けれどもパイオニアでの場合はそうではなく、前社長の森谷氏からバトンを引き継ぎ、会社の成長を自らリードする立場にある。

ベインキャピタルでの経験の後は事業会社に戻ろうと思い、産業ガスを展開する非常にディープな製造業で、フランスに本社をもつ日本エア・リキードで日本の社長を5年間務めた。そこで今回の話をいただいた。

率直な感想というと、パイオニアの名は当然よく知っていて、自身でパイオニアのオーディオを使ったこともあり、懐かしいと思った。ただ最近の動向はわからず、さっそく検索してみたところ、ここ数年大変な状況があってファンドの傘下に入りこれから再建が始まるということで、あぁそうなんだ、と。あまりポジティブな印象ではなかった。

しかし森谷さんやベアリングのメンバーと面接し、いろいろと話を聞くにつれて、これはいわゆる名門日本企業の再建の象徴的なケースだと認識した。ビジネスマンとしてはユニークな私の経歴の中でも、パイオニア再建は非常に大きいものになり、おそらく日本や海外に与えるインパクトも大きい。グループ全体に社員も多く、やりがいもとてつもなく大きいものだと。だからこのチャンスをいただけ、チームの陣頭指揮をとれるならと興奮してきた。話を聞くにつれてワクワク感が募り、感情移入し、そして最終的に私に話をご提示いただいたということでお受けした。

昨年12月1日に顧問として出社し、今年1月1日付で正式に社長となり、6日に新社長として初めて社内の皆さんに挨拶した。午後にCESに発ったが初めての経験で、現地でパイオニアや競合のブースを見聞きして話をしてきた。CESはもはやカーエレクトロニクスショーの様相で、私がかつて経験したモーターショーより勢いを感じた。近い将来訪れるであろうモビリティの世界が描かれており、非常に興奮した。そこで新しいパイオニアのポジション、どんな価値を展開していくかと楽しみなところである。

「モノからコト」へのシフトではなく、「モノ&コト」を推進する

この1ヶ月に拠点やお客様の挨拶周りをして感じたことは、パイオニアの強みは “パイオニアスピリット” をもち、世に新しいイノベーティブなものを技術力で生み出す会社であること。発想力があり優秀な人材がいること。これを確認でき、とても力強く思っている。

世の中には今、モノづくりや「モノからコトへ」という言葉がある。パイオニアには世に新しいものを出したい強い思いと、それを裏付ける技術力があり、これまでたくさんの新しいものを出してきた。しかしリーマンショック以降景気が低迷し、フォーカスする部分が残念ながら思い通りにいかなかったのがここ数年の状況だと思う。けれどもモノづくりに対する思いや技術力が隆々とある。

しかし世の中では、ハードだけでなくコトへのフォーカスが進み、新しいプレーヤーの参入がどんどん起こっている。自動車の転換期というものをまさに実感している。私としては、「モノからコト」ではなく「モノ&コト」と考える。モノの強みを捨てるのではなく、モノの強さや品質、製造ノウハウといったことを重視する。車の中のエレクトロニクスは厳しい環境の中での安全性が求められるので、ハードのノウハウは新規参入プレーヤーが簡単にパイオニアを凌駕できるものではないと思う。

パイオニアとしては、モノづくりの強みを生かし、その上にコトをいかにのせていくか。コトにはいろいろあるが、社会の課題を解決するソリューションをつくり出し提供することが企業の使命であり、継続して成長するには必要だと考える。パイオニアはまさにそこに立ち向かっている。

日本の社会の課題は人口減少とエネルギー問題に集約されると考える。人口減少で、物流を支えるドライバー減の問題がある。経験値の少ない人を採用しても安全で安定したデリバリーを確保するために、パイオニアのカーナビゲーションや地図情報、自動運転技術をコトとして解決策を提示できる。モノ&コトをセットにして、OEM向け、市販向け、また自動車保険や地図アプリケーションなどのソリューションを開発提供することができる。さらにエンターテイメントも加えて、非常に世界が広がり、業界も広がることとなり楽しみである。

スピード感をもって実現する。社外企業とのパートナーシップも含めてやりやすい組織を構築する

そして今後。会社のリソースや時間は限られるので、自社だけでどうにかなるとは思っていない。エコシステムの中で早く目に見える形で価値を提供できるよう、アライアンスやパートナーシップは非常に重要。CESではさまざまなパートナー候補とミーティングするいい機会だった。エコシステムを一緒につくるパートナーシップの構築も、スピードを上げてやっていく。

社内で変えなくてはならないこともある。この10年間の業績不振の原因は、内的要因もある。組織も大きくなると決断のスピードが鈍くなり、横の連携がしにくくなる。ガバナンスと、風通しのいいコミュニケーションづくりをまずやると役員たちとも合意した。コミュニケーションが悪いと決断が遅れ、ベストでない決断をするリスクもある。現場の社員が疑問に思うことを吸い上げ、部門最適でなく全社最適なものをできるだけ早くつくる。

その上で、あたりまえのことをあたりまえにやる。私が経営者としてこれまで学んだことは、ジャック・ウェルチ氏が “Control your own destiny or someone else will.” と言っていたが、一人一人が当事者意識(オーナー意識)をもってことにあたるということで、これが遅れると選択肢が狭まり、他人にコントロールされてしまうと。この教育を受け、私のその後のビジネスで信念となった。これはパイオニアでも当てはまり、私がそうするのはもちろん、役員やあらゆる階層の社員1人1人に当事者意識をもってもらう。すると必然的にスピードが早まる。

そして、それを可能にする組織やガバナンスづくりを今やりつつある。そのひとつは権限委譲。現場の最前線でお客様対応をする時、権限をもっていなければやることは限られる。その上司を含めて権限が明確であればやりやすい。スピードを重要視して、やりやすい仕組みや組織をつくる。

<質疑応答>
Q:3D-LiDARの価格がまだ高く普及が進んでいない。対策は。

A:3D-LiDARは競合他社が増えているが、実現には法的制度も含めてまだ少し時間がかかると見る。基礎技術を高めてよりコンパクトにし、コストを下げるのは、我々を含めて各企業が努力しているところ。一社単独では時間がかかる、我々もよいパートナーを見つけ加速の実現を早めたい。

Q:ソリューション事業に舵を切るのか。

A:モノ&コトと言ったが、コトをソリューションに置き換えてもいい。左から右への移行というより、右の取り組みが少なかったというか。モノづくり、カーナビやカーオーディオのハードへの力を緩めるのではまったくない。東京モーターショーでNTTドコモと発表した、車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」は、車の中のエンターテイメントとコミュニケーションのレベルを上げ、リビングルームのような環境を提供すること。モノからコトへのシフトというより、融合して新しい価値を生み出すと考える。

Q: 3D-LiDARのレベル3はまだ先というが、5月には解禁しないといけないタイミング。レベル3には3D-LiDARが入らないということか。

A:そうではない。3D-LiDARのアプリケーションを自動車メーカーがどう組み込むかが重要で、すり合わせの時間がかかる。また3D-LiDARは必ずしも自動車だけのことではなく、セキュリティ分野などにも使える。

Q:ディスプレイオーディオ化について、市販カーナビの対応は今後どうするのか。

A:ディスプレイオーディオは織り込み済み。ディスプレイオーディオの流れは増えていくし、それに対してできることをしていく。スマホをクレードルに置いてカーナビを使うスタイルに変わっても、それは使いづらいと思う。きれいな画面でオーディオを含めていろいろできるのは価値あること。ディスプレイオーディオの流れは我々にも追い風と思う。

Q:現時点で再建の道筋は、そして出口は。

A:これまでの経験の中で再建したといっても、危機的な状況でのことはやっていない。いいものをもっているがパフォーマンスが横ばいといったところを強めるテーマだった。パイオニアでも、財務の危機は前社長の森谷さんが見事にスピード感をもって回避し、組織も変わった。モビリティプロダクトカンパニー、モビリティサービスカンパニーという社内カンパニー制にした。モビリティサービスカンパニーのトップは社外から、インターネット企業のリーダーを招聘した。一見バリューが違う2つをどう最適化するか。カンパニーの成長を加速させ、車の中のモノ&コトを実現させるのが自分のテーマ。

再建のゴールというと、企業だから持続的な成長を求めるのであって、ゴールとは思っていない。ベアリングという我々の株主は、資金だけでなく海外のパートナーシップのネットワークをもっており、我々も非常にいいサポートを得ている。私はファンドにいた経験を生かし、株主とのコミュニケーションを密にして、外的環境も変わる中で戦略をファインチューンしなければいけない、そういった場面で株主の理解を得てそれらを確実に進めていくこととが役割と考える。

Q:再上場は。

A:社内外にわかりやすい目標であり、選択肢のひとつとしてある。しかしそれだけだとは思っていない。中計の1年目がスタートしたところで、それを選択肢のひとつとしつつ、より最適な再建を目指したい。

Q:ライバルをどう認識するか。

A:カーナビ、カーオーディオのライバルはいくつかあると思うが、各社いろいろな戦略があると思う。我々も古いハードとしてのライバルにこだわらず、また彼らとパートナーシップを組むこともやぶさかではない。

Q:経営をやっていく上で糧になったものは何か。それをどう生かしていくか。

A:直近の産業ガスの会社はディープな製造業で、インフラが整っていて安全かつ安定した製品供給が求められる。そしてお客様であるさまざまな製造業は、それぞれ世界で戦っているわけで、そこに我々はどう差別化したバリューを提案できるかと考えるのが大事。マーケティング、伝える力、プロダクトアウトでなくマーケットインの視点をとりこむことをしてきて、インパクトがあった。

パイオニアは新しいものを出してきたが、今それは簡単ではない。モノ&コトに関してはいろいろなニーズがあって、それをより早くキャッチしコア技術とどうつないで組み立てるか。自社で足りないものは外からパートナーシップで調達する。そういうことに対して自分の経験と人脈が生かせると思う。

Q:再建は今どの程度進んでいるのか。

A:財務の面では終わりに近く、キャッシュを生む力は戻っている。だからこそより成長に向けた分野にフォーカスし投資を増やすため、実行できる組織と人材を構築している。

Q:カーナビが財務苦境の要因のひとつと思うが、今後どうするのか。

A:カーナビは現時点で売上げに占める割合は高い。財務苦境の原因となったのは開発のせいであり、同じような想定外のことを決断することはしない。カーナビは、スマホに置き換わったりディスプレイオーディオが浸透したり、枠としては変化していくと思うが、ナビだけを見せる装置ではない。総合的なエンタテイメントは我々の核でありつづける。

Q:昨年5月に3,000人リストラを行った。構造改革について今後は。

A:1年前の発表は計画通りに進んでいる。今後、構造改革をしないと言い切るのは簡単だが、モノ&コトを遂行すると、ポートフォリオの再編は必要で、まだそれは途上。モビリティのコアでない事業はたくさんあり、その変革は途上である。

Q:前社長の森谷浩一氏をどう見るか。

A:非常に誠実で立派な方。この2年間大変なときに、会社の危機を先頭に立って回避する、乗り越えると強いコミットメントをもって実行した。もし森谷氏がいなければ、私にこういう機会もいただけなかった。パイオニアの方々は、会社に対する思い入れや愛着が非常に高い。その中で私は新参者で、新しいパイオニアの価値をつくることで新しい愛着心をつくっているところ。

また、インクリメントPという地図データの会社を100%子会社としているが、私は非常に面白いと思っている。地図にとどまらず、道路上のプローブデータをもっていて、その価値は高い。海外の地図はオランダのヒアテクノロジーで、グローバルで展開している。先月NTTと三菱商事が大きく出資すると発表したが、この分野で我々も同じ株主、立場を超え地図情報を使った社会ソリューションを開発販売するのが楽しみ。時間はかかるかもしれないが、3D-LiDARで自動運転につながる。こういうことを期待している。

Q:パイオニアの出自であるホームオーディオについてどう考えるか。

A:パイオニアにはTADというハイエンドブランドがあり、自分でも先日試聴の機会を得て非常に感銘を受けた。ハイエンドオーディオのブランドをもつのは意義あること。今後これをコアビジネスにどう生かしていくかが楽しみである。

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