実写だけでなくアニメもHDRで

Netflix、日本独自制作ドラマ『火花』の4K/HDR化チャレンジを語る。HDRタイトル続々追加予定

編集部:杉浦 みな子
2016年10月06日
世界最大級の映像配信サービス「NETFLIX」は、日本オリジナル制作の4Kドラマ『火花』を、9月からHDR仕様で配信している。Netflixは、以前よりHDRコンテンツのラインナップ拡充をアナウンスしてきたが、日本独自制作のコンテンツが4K/HDRで配信されるのは本作が初だ。同社は本日プレス向け発表会を開催し、この『火花』のHDR化における取り組みについて説明を行った。

『火花』の4K/HDR配信が9月からスタートした

基本として、Netflixの4K/HDRコンテンツを視聴するためには、月額1,450円(税抜)の「プレミアムプラン」への加入が必須となる。インターネット回線は25Mbps以上を推奨。もちろんユーザー側が4K/HDRに対応するテレビ/ディスプレイを用意することも必要になる。

Netflixで配信されるHDRコンテンツは、“ドルビービジョン”と“HDR10”の両規格に対応する。ユーザーがそれぞれのディスプレイ環境にあわせて4Kコンテンツを楽しめるよう、ドルビービジョン、HDR10、SDRの3種類での配信を行っている。『火花』もこれに該当する。画質はディスプレイの仕様や回線状況にあわせ、適応するものに自動で切り替わる。

なおNetflixのHDRコンテンツは、制作時にはドルビービジョンでマスタリングが行われている。そこからHDR10とSDRのバージョンも制作され、ドルビービジョン、HDR10、SDRの3種類で配信されている形だ。マスタリング時にドルビービジョンフォーマットを採用している理由としては、HDR10では他フォーマットへの展開ができないためとのこと。

なお、HDRの輝度値に関してはテレビによって変わってくるので、Netflixとしてテレビ側に“●●nitsで表示する”といった規定は設けていない。UHDアライアンスが定めている規格がテレビ側で基準にされていることをベースにしているのみだという。

■『火花』はSDR配信を想定してスタート。その後HDR化へチャレンジ

今回の発表会では、『火花』のHDR化を担当した(株)ザフール プロデューサー 佐藤正晃氏と(株)IMAGICA 映画・CM制作事業部 映画プロデュースグループ チーフテクニカルディレクター 石田記理氏が登場し、『火花』HDR化制作時の取り組みを紹介した。

佐藤正晃氏(左)、石田記理氏(右)

『火花』は、撮影時にはSDR配信だけを想定しており、HDR化はそこまで意識していなかったという。SDR配信用の映像がほぼ完成に近づいた時期にHDR化の計画が出てきたため、「元々はSDR配信を想定したRAW素材から、改めてHDR化を進める」という流れになった。

石田氏は「今回のHDRだけではなく、将来出てくる新技術に対応するために、いかにクオリティの高いマスターを残すかが大事。豊かな情報の撮影データを大きく残しておくということはチャレンジだった」と振り返る。

今回の発表会では、同一シーンのSDR版とHDR版の比較デモを実施した

元々、映像のルックはSDRでのモニタリングで作っているので「HDR化することによって作品の世界観や表現が変化してしまわないか?」といったことにも配慮し、監督や撮影監督も含めてHDR化による映像のチェックを行った。実際には、例えばHDR化によって明るくなりすぎる箇所は微調整するといったように、SDRバージョンの色調を尊重した上でのHDR化を実施した。

同一シーンのSDR版(左)とHDR版(右)を比較。HDR版では太陽のキラメキや空のディティールが出るようになっている

佐藤氏、石田氏とも「今回、SDRからのHDR化は非常に上手くいった」とコメント。HDR化で作品が魅力的になったシーン例として、主人公が朝焼けの海岸線を走るシーンが紹介された。SDRでは空の太陽がクリップしてしまい雲のディティールなども出にくいが、HDR化によって太陽のキラメキや空のディティールが出るようになっている。制作陣の中では、今後はHDR配信を想定した上で、どのように撮影・制作を行うべきか話し合いもされたという。

■2017年には140の新作を配信予定。アニメのHDR配信も

本日の発表会に登壇したNetflix(株)代表取締役社長 グレッグ・ピーターズ氏は、「人間の目に見えている実際の光景と、ディスプレイに映る映像には差がある。私たち映像コンテンツ業界は、その差を埋めるために努力してきた。近年はインターネットの登場によって、映像のクオリティに関わる技術革新のスピードはこれまでより何倍も早くなっている」と述べた。

グレッグ・ピーターズ氏

「Netflixは、その技術革新を助けるユニークなポジションにいる会社だ。ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、LGなどテレビ/ディスプレイメーカーとの関係を長年にわたって築き上げてきたので、そういった取り組みができる。各メーカーが開発する高品位な映像ディスプレイが登場した際に、その性能を発揮できるコンテンツを提供できるよう取り組んできた。また同時に、Netflixはコンテンツを発信するだけでなく、コンテンツ制作面からも映像の技術革新をサポートしている」。

同氏によれば、Netflixは今年だけで60億ドルをコンテンツ制作に費やしており、2017年には140の新作独自タイトルを配信する予定だという。「テレビ/ディスプレイメーカーはNetflixのコンテンツを使用してディスプレイの素晴らしい性能を表現でき、ユーザーは素晴らしい映像に没入できる。Netflixは、常に最新映像フォーマットで世界最高のコンテンツを提供していくことを約束する。それはつまり、現時点では4K/HDRコンテンツを提供することを意味している。その1つの例が、今回の『火花』だ」と、ピーターズ氏はアピールした。

今後Netflixが配信しているHDRコンテンツは以下の通り。『シドニアの騎士』のように、実写だけではなくアニメのHDR配信を手がけていることもポイントだ。さらにHDR化による映像のインパクトはとても大きいため、Netflixとしては4Kだけでなく2K/HDRコンテンツについても配信を行っていく。実際、『シドニアの騎士』は2K/HDRコンテンツにあたる。

<10/6時点でHDR配信中>
・『シェフのテーブル:フランス編』
・『火花』
・『Marvel デアデビル』
・『ドゥ・オーバー:もしも生まれ変わったら』
・『リディキュラス・シックス』

<今後配信予定>
・『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語(原題)』
・『ブラッドライン』
・『シェフのテーブル』
・『シドニアの騎士』
・『Marvel アイアン・フィスト(原題)』
・『Marvel ジェシカ・ジョーンズ』
・『Marvel ルーク・ケージ』
・『Marvel ザ・ディフェンダーズ(原題)』

Netflix(株)エンジニア メディアエンジニアリング&パートナーシップ 宮川遙氏は、映像配信を手がけるにあたり、「10年後、20年後も今と同じ感動を与えられることが大事だと思う」と同社の姿勢を語った。

宮川遙氏

「そのために、Netflixでは非常に高い基準を設けてコンテンツを制作している。現在最高の技術でマスタリングして配信しても、のちに新しい規格が出たときにも対応できるようにしなくてはならない。最初に高いクオリティのソースを制作しておけば、新しい規格が出たときでも再マスタリングして、改めてその時代の最高のクオリティで配信できるようになる。もちろん『火花』もそのルールに乗っ取っている」。

なお、HDRタイトルをラインナップするにあたり、まずクリエイター側が新しい技術での制作に慣れるなどの必要が生じるため、Netflixとしては想定より時間が掛かっているとのことだ。宮川氏は「市場の機材全てがHDR制作に適しているわけでないので、様々なチャレンジがここ数年続くと思われる。しかし従来のRec.709色域では、暗部を活かすためにハイライトを犠牲にせねばならないといった妥協があった。HDR時代になり、こういった妥協の部分が制作者の中で改善される。結果、視聴者にはより感動を届けられることになる」と語った。

また、現時点で詳細は明かせないと前置きした上で「今後、映像だけでなくオーディオ面に関しても新しい発表ができると思う」とアナウンス。視聴者に素晴らしい映像体験を提供できるように、今後も取り組んでいきたい」と述べた。

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