「デジタル機器で負け組になった」

「普通の会社ではない、15年度までは危機脱出モード」 − パナソニック津賀社長が収益改善策を説明

ファイル・ウェブ編集部
2012年10月31日
パナソニック(株)は、本日発表した第2四半期の連結業績で大幅な赤字を計上し、また12年度通期業績を下方修正したこと(関連ニュース)などを受け、同社社長の津賀一宏氏が今後の対応について説明を行った。

パナソニック(株)津賀一宏社長

津賀氏は、業績が下振れした要因の8割がデジタルコンシューマー関連と説明。「売上は4分の1にすぎないが、大きな業績悪化要因になっている」(津賀氏)。日本市場の縮小に加えて、同社製品の競争力が低下していることがその理由と述べ、「薄型テレビやブルーレイなどでは、競争力が落ち込んでいる。とりわけ価格競争力が落ち込んだ。大変残念だが、この分野では負け組になっている」とした。さらにデジタルコンシューマー関連の減損処理も、今期業績の大きな下振れ要因となった。

デジタルコンシューマー関連事業悪化の要因には競争力の低下があると指摘

これまで同社が行ってきたデジタルコンシューマー関連の主な投資と減損処理

このような状況を受け、津賀氏は同社が構造的課題を抱えていると説明。まず一つは「低成長・低収益が継続し、事業立地の劣化があり内部イノベーションができていない」ことを問題として挙げ、もう一つは「投資判断の誤りや、環境変化に対応できていないことから、投資からリターンを生めていない」ことだと述べた。

津賀氏は「利益が出ないサイクルから逃れるために過去10年で多額の投資を行ってきたが、それが失敗し、巨額の減損を実施。また利益が出ない体質に戻るというサイクルを繰り返している」と、これまでの歩みを振り返った。

構造的課題を抱えており、「普通の会社ではない」と認識する必要があると述べた

津賀氏はこのような状況を「普通の状態では無い」とし、「普通の会社ではないことをしっかり自覚することからスタートしなければならない」と強調した。

今後、この構造的課題を克服するため、3つの対策を講じていく。1つは「デジタルコンシューマー関連事業のスリム化と構造転換」だ。

デジタルコンシューマー事業の構造改革では、これまで薄型テレビ事業が大きな赤字を生んでいたが、薄型テレビ・パネル事業の規模をスリム化し、非テレビを拡大したこと、また大型化へシフトしたことなどで構造転換は順調に進捗していると評価。その上でさらに構造転換を推し進め、チェコとマレーシアの拠点を12月から1月にかけて精算する。12年度の営業利益は前年度比で1,100億円程度改善する見込みとした。

薄型テレビ・パネル事業の構造改革は順調に進んでいると説明した

一方で携帯電話事業は、海外事業を見直し、欧州スマートフォン事業から2012年度内に撤退する。また体制のスリム化にも着手し、人員の適正化、国内生産撤退、販売子会社の他社への統合などを行い、国内の固定費を約3割減らす見通しだ。同時に、端末事業に特化した新会社を13年4月に設立する予定で、AVC事業との連携で新ビジネスを創出する。

そのほかシステムLSI事業や民生リチウム電池事業、ソーラー事業などについても事業のスリム化や再構築、また投資の厳選・抑制などを行い、収益力を高める考えだ。

構造を改革する試みの2つ目は「フリーキャッシュフローの拡大」だ。まず全社での緊急対策として、「キャッシュフロー経営実践プロジェクト」を進め、投資計画をゼロベースで見直す。また不動産の売却・流動化なども行っていく。

設備投資は、今年度はゼロベースで見極めを行う。13年度は減価償却費の60%以内、14-15年度は90%以内を目安にする

また報酬・処遇等も見直し、役員報酬は7月に削減していたものを11月からはさらにカットし、前年比20%削減とする。さらに会長・社長は対前年比40%削減する。また役員専用車を廃止したり、管理職の冬期賞与を前年比35%減にするといった対策も行う。

さらに企業スポーツの見直しも行い、バスケットボールやバドミントンの休部なども行う。また配当についても年間無配とする。なお同社が無配となるのは、戦後の混乱期を除いて初めて。津賀氏は「株主の皆様の期待に応えられず申し訳ない」と謝罪した。

役員賞与や冬期賞与のさらなる引き下げ、企業スポーツの見直しなども行っていく

3つ目の業績回復のための試みは、新たな成長への仕掛けとなる新中期計画を掲げ、遂行すること。重要視していることは、ビジネスユニット基軸の経営を行うことでキャッシュを生み出すこと。津賀社長は「このような説明をすると志が低いと言われるかもしれないが、これが現実だ。2015年度までは危機脱出モードで進めるしかない」と説明した。

新中期計画では、毎年度フリーキャッシュフロー2,000億円以上を目標とし、さらに2015年度には全ビジネスユニットで営業利益率5%以上を実現することを目指していく。


非デジタルコンシューマー」の新たな成長分野を探っていく
津賀氏が「危機脱出モード」と定義する2015年度以降、2018年度へ向かっては「非デジタルコンシューマー」の新たな成長分野を設定し、新たな収益機会を探っていく。また13年4月からは「アプライアンス」「エコソリューションズ」「AVCネットワークス&システムズ」「オートモーティブ&インダストリアル」の4カンパニー制とし、新たな成長領域にくさびを打っていく。

また現在88あるビジネスユニットを、13年4月から56のビジネスユニットに再定義。それを上記の4カンパニーが束ねるスタイルとするが、「あくまでビジネスユニットごとの経営を重視する」とした。

以下、決算会見で行われた質疑応答をご紹介する。

Q:黒字予想をしてから、わずか3ヶ月で大きな赤字予想を発表するに至った。この2年の累積の赤字は過去20年の利益をすべて吹き飛ばすインパクトがある。私(日本経済新聞の記者)は企業体質にこそ、この原因があるのではないかと考えているが、津賀社長はどう考えるか。
A:のれん代などについては、将来的な回収の可能性を見ていたが、利益を優先すると今後の売上げ増が見通せない。これが減損処理に至った理由だ。

企業体質という話に関しては、当社は売上の成長を目指してきた会社。売上が伸びれば収益は作れるというのが基本的な価値観としてあった。ただし現在のコモディティー化した製品領域ではそれが成り立たない。価値観を大きく変えなければならないというのが私の理解だ。

Q:欧州のスマホ事業からすぐ撤退したり、投資がちぐはぐという印象が私(日本経済新聞の記者)にはある。この点についてはどう考えるか。
A:たとえば欧州のスマホで言うと、ボリュームを追わなければならないから、日本と欧州で同じスペックのものを作って開発したが、これが受け入れられなかった。ある仮説をもとに再参入を行ったが、その仮説が間違っていることがわかった時点で撤退するという、ごく当たり前のことを行ったということだ。

Q:中国リスクはどの程度になるか。
A:今年度で300億円を見込んでいる。

Q:テレビ事業について聞きたい。かつてテレビは家電メーカーの顔で、量を追うビジネスだった。これまでテレビを経営の主軸に置いてきたのは間違いだったのか。また、テレビ事業で得たものを今後どう活かしていこうと考えているか。

A:かつてはテレビは家電メーカーの顔だったので、その時点では間違っていたわけでは無い。何が顔かは市場によって、また時代によって異なる。テレビをやめるわけではないが、いつまでも「テレビが顔ですよ」とすべての地域で押しつけるわけにもいかない。

たとえばアメリカで、テレビを買われたお客様に「どこに置くのか」と聞いたら、「ガレージに置くよ、あるいはプールサイドかな」と言われた。お客様によってもテレビの価値は異なる。

今後は空間全体を考えたときに何が求められるかという発想に変えるべきだ。またテレビ事業で培った事業はパネル事業、B2B事業で活かすことができる。

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