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「4倍速BD-R」を強化した理由とは? ー TDK Life on Record BDディスクの08年夏モデルを徹底解剖

2008/07/14
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BDレコーダーをはじめとするデジタル録画機が進化していく歴史において、世代を追うごとに着実に歩みを進めている機能の中にディスク書き込み速度の高速化がある。録画用BD-Rでは4倍速記録対応のディスクが主流となりつつある今、BDディスクの高速化は、ユーザーにとって使い勝手をどのように変えていくのだろうか。今回はイメーション(株)において、TDK Life on Recordブランドの記録メディアを担当する渡邉氏にインタビューし、この夏に発売されたTDK Life on Recordブルーレイディスクの最新ラインナップと、そのコンセプトや特徴について訊ねてみた。

(レポート/折原一也)


■高速記録モデルを積極展開するTDK Life on RecordブランドのBDラインナップ

TDK Life on Recordブランドが6月に発売したBDディスクのラインナップは、ユーザーである筆者の視点から見ても積極的な製品展開と見て取れた。BD-Rのラインナップは「1〜4倍速対応」の製品を中心としており、ワイドプリントでインクジェットプリンタ対応の片面1層BD-R「BRV25PWシリーズ(3/5/10/20枚)」、カラーミックスの片面1層BD-R「BRV25PWMB5S(5枚)」、ワイドプリントでインクジェットプリンタ対応の片面2層BD-R「BRV50PWB3S」などを始めとして、様々にバリエーション豊かな製品が並ぶ。


イメーション(株)コンシューマ商品 マーケティング本部 プロダクトマネジメント部 メディアグループ リーダー 光商品技術担当 渡邉学氏
4倍速ディスクの価格設定についても、従来の「1〜2倍速対応」のディスク並みに抑えている。「4倍速のBD-Rは昨年の時点で既に発売していましたが、当時はその価格を高値にせざるを得ませんでした。今回のモデルでは、4倍速ディスクをより多くの方々に使っていただけるような価格設定を実現するためにも、力を注ぎ込みました(渡邉氏)」。このように担当者も説明する通り、TDK Life on RecordブランドのBD-Rディスクについて、7月初頭時点の店頭価格を比較してみると、10枚パックの4倍速ディスクが約6,800円、同入り数の2倍速ディスクが約6,500円と、その価格差が縮まりつつあることがわかる。

実際にディスクを使うユーザーの視点でラインナップを一望すると、片面1層25GBの録画用BD-Rが4倍速の高速化を実現している点や、4倍速には20枚入りのPOT(スピンドル)ケースパッケージ「BRV25PWB20PS」が揃っているところにも注目したい。

録画用1〜4倍速対応BD-Rのパッケージ。中央にブルー系の色合いによるサークル状のデザインをあしらっているところが特徴だ

録画用・データ用双方のラインナップに1〜4倍速対応の「20枚入POT(スピンドル)ケース」が加わった点も注目される。BD-Rヘビーユーザー層の「まとめ買い需要」の起爆剤としても期待がかかる商品だ


■4倍速BD-Rならば、最高画質で録画した地デジの2時間番組が15分でダビングできる

BD-Rを中心とした1〜4倍速対応の高速ディスクへの取り組みは、BDレコーダーのユーザーにどんなメリットをもたらすのだろうか。簡単におさらいしておこう。やはり直接的な恩恵としては、ダビングにかかる時間が節約できる点が挙げられるだろう。

例えば、片面1層、25GBのBD-Rディスクにハードディスクから、容量いっぱい分(25GB)のデータをコピーするのにかかる時間は、2倍速ディスクで約45分であるのに対して、4倍速ディスクでは半分の22分にまで短縮することができる。さらに地上デジタル放送の場合は、そもそものビットレートが低いため、4倍速のディスクを使用すれば2時間の番組も約15分で書き込める計算になる。つまり、実際の番組放送時間に対して約1/8の時間で書き込めるようになるのだ。H.264録画の番組をダビングするなら、標準モードでもその時間をさらに約半分まで短縮することができる。数値上の速度向上は以上の通りであるが、しかし、BDレコーダーを日頃からヘビーに使うユーザーである筆者としては、4倍速書き込みのBDレコーダーとディスクを組み合わせて使える高速ダビングの時間的なメリットはとても大きなものであり、改めて着目したいと思う。


下の棒グラフに注目して欲しい。4倍速BD-Rならば、DRモードの最高画質で録画した地デジの2時間番組も15分でダビング可能になる。1倍速、2倍速のディスクと比べてもユーザーの利便性が格段に向上するのは間違いないはずだ

■BDレコーダーがより自由に使えるようになる4倍速書き込みのメリット

実際にBDレコーダーを使っているユーザーにとって、BDディスクへのダビング時間は、単純に出来上がりまでの待ち時間というだけの話ではない。BDレコーダーユーザーの方は思い出して欲しいが、BDレコーダーでダビングを実行している最中は、番組予約や録画した番組の再生など、その他操作も含めて一切受け付けてくれない。ダビング中はBDレコーダーとしての機能に大きな制限がかかり、使っていくうえで最も不自由を感じる時間だ。4倍速BD-Rにより書き込み時間が短縮されることで、この不自由が緩和されることも注目だ。書き込み時間が短縮されることによって生まれる時間により、BDレコーダーをもっと様々な用途に活用できるチャンスが増えるという側面もあるのだ。

また、ダビングを始めると実行中にほかの操作ができなくなるため、実際にダビングを行う際にはある種の気構えのようなものが必要だったように思う。書き込み速度の高速化により、実際のダビングがすぐに終わるという実感も得られ、今までよりももっと気軽に、安心感を持ってダビングにチャレンジしやすくなるだろう。

またダビングと録画の操作は同時に行なえないという仕様のBDレコーダーが多いため、家族が大勢いるユーザーにとって録画したい番組が集中する時期にはレコーダーがなかなか開放されないということも考えられるだろう。北京五輪のように、レコーダーを使う機会が多くなるシーズンには、録画と放送の合間を狙ってダビングを済ませることができる、4倍速BD-Rの取り回しの良さを改めて実感する機会になるはずだ。


■1・2・4倍速の全てをカバーする広いパワーマージン

TDK Life on Record製品を語る上で、その高い信頼性も忘れてはならない。DVD時代には“超硬”の名前で親しまれたキズ・ヨゴレ・ホコリに強いハードコーティング技術は、元々はBDのベアディスクを実現するために開発されたDURABIS(デュラビス)技術であることは周知の通りだが、これ以外にも「1〜4倍速」という規格を満たすためには、ディスクへのデータ書き込みを安定して実現するための技術も求められてくる。

「BDディスクに対する信頼性の目安になるのは、規格にも定められているジッター値のコントロールがカギになります。一口に“4倍速BD-R”と言っても、1倍速/2倍速/4倍速すべての記録速度をサポートし、基準値を満たす必要があります。従って、そのディスクは低速記録から高速記録まで低ジッターで記録できる特性が求められてきます(渡邉氏)」。


通常の記録ドライブはそのディスクに最適なレーザーパワーを検出し、記録を行っていく。何らかの理由でレーザーパワーが不安定になったとしても、パワーマージンの広いディスクであれば低ジッターの記録特性を保つことができる

さらにTDK Life on Recordブランドのディスクでは、BDディスクのジッター基準値を満たす広いパワーマージンが確保されているという。

「4倍速の書き込みに対応しているBD-Rをうたうのであれば、データ上はジッター基準値を満していれば良いのですが、実際には書き込みを行うドライブのピックアップの個体差や、使用年数による経年変化などで、書き込み中のレーザーパワーに振れが生じます。このときに多少の振れがあっても、ディスクの側で広くパワーマージンが確保できていれば良好な記録特性を維持することが可能になります(渡邉氏)」。


TDK Life on Recordブランドのディスクでは、低速・高速記録時の双方で低ジッターでの記録が可能

一方、1〜4倍速のジッター基準値を満たしていないディスクでは正しく書き込みを行うことができない
TDK Life on Recordブランドでは、高い信頼性を確保し続けるため、レコーダーやドライブを発売するハード機器のメーカーに、商品開発の初期段階からディスクサンプルを持ち込み、個別に結果を検討しながら、ディスクとドライブ双方の特性を見て、良好な記録特性が得られるような活動をしている。その成果として生まれた4倍速BD-Rだけに、最新機種のみならず、既に発売された低速記録専用のレコーダーも含めた幅広い互換性を実現しているのだ。また記録後のデータ保存に関しても、TDK Life on Record BD-Rでは従来から採用するSi(シリコン)とCu(銅)を使った合金の金属2層構造を採用することにより、光の影響を受けにくく、長期保存に優れたディスク性能を達成している。

4倍速対応BD-Rという、いま最もユーザーメリットの高いディスクの規格に対して、TDK Life on Recordブランドではコストパフォーマンスと高い信頼性を合わせ込みながらこの夏の新しいラインナップで積極的な攻勢を仕掛ける。品質の高いディスクを提供し続けてきた同ブランドならではの技術力とノウハウに裏付けられたチャレンジであると言えるだろう。

(折原一也)



執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。

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