【コピーワンスを考える】<読者放談会>わたしたちはコピーワンスに反対です!(後編)

2006年07月04日
前編より続く>

堀: 映画ならまだいいですよね。録画のチャンスを失ったり、コピーできなくても、何年か待てば次世代ソフトで出るだろうという期待が持てます。問題なのは、ディスクで発売される可能性が薄いもの、あるいは再放送される機会が見込めないものです。例えばトリノ五輪での荒川静香のあの素晴らしい演技。あれは、おそらく完全な形ではもう放送されないでしょう。


コピーワンスの改善を求める河島さん(右)と近藤さん(左)
MM: せっかくのトリノ五輪が、コピーワンスがかかっている番組だったら、5年10年経ったら誰も持っていないかもしれませんよね。データが失われたり、ディスクそのものを紛失したりして。

波瀬: 私はモントリオール五輪のコマネチの演技をもう一回見てみたいんですけれども(笑)。さすがに当時のテープを持っている人はほとんどいないだろうなぁ。パッケージにもなっていないし。

近藤: NHKのアーカイブから各人がパソコンでハイビジョン映像が引き出せるぐらいの仕組みができるといいですよね。

波瀬: そういう意味では映画のほうが最終的に個人が被る被害は少ないのかなと、私は思ってはいるんですけれども。

近藤: 例えば6月からのW杯サッカーをハードディスクに録って、同時に録画しておいて、後でD-VHSに元のクオリティのまま保存することはできますよね。でも、そのD-VHSをBD、HD DVDに移すことはできない。

波瀬: そうですね。要するに、全部のコンテンツに一律な価値を押し付けられても困りますよね。映画もスポーツもニュースやCMでさえも紋切り型に処理されてもねぇ。

波瀬: 現状のコピーワンスで感じた不便さの例を挙げていただけますか?

河島: デジタル放送自体が1回しか録画できないということを知らない友人が結構いるんです。VHS感覚で録れると思っている人が多いんですよね。例えばトリノでの荒川静香のあの金メダルの演技。感動的でしたよね。まさか、メダルを獲るとは思ってなかったんでしょうか? 見逃した友人から「ダビングしてほしい」とお願いされるんです。「いや、ダビングはできないんだけど」と言うと、「なぜ?」と言われます。

編集部: 当然の反応ですよね。

河島: 「デジタル放送はね…」って、いちいち説明をしなければならない。

波瀬: 河島さんが放送しているわけではないのに…。

河島: そうです。SDにコンバートしたディスクを渡しても満足してくれませんよね。しょうがないからマスターをあげちゃったりする場合もあります。

波瀬: 元画が一つしかないから、ご友人に差し上げちゃったら、もうその番組は手元に残りませんよね。

コピー制限1回は理不尽、2〜3回はほしい


放談会の合間にHD DVDを鑑賞。次世代ディスクを体験する4人
波瀬: ユーザーにとってベストなのはコピーフリーだとは思いますが、そうもいかない事情もある。全部が全部フリーというのが許されないとしたら、最低どれぐらいのコピー回数を認めて欲しいですか?

河島: 基本的には、BD、HD DVDに、ハイビジョンの画質が確実に残るのであれば、コピーワンスでもいいと思うんですけど、現状のDVD画質では、やはり最低2回ぐらいは認めてほしいですね。

波瀬: 次世代ディスクであれば、現状の仕組みでもやむなしかということですね。

河島: クオリティが高いからという考え方は理解できます。でも、それをダウンコンバートしたDVDに同じように適用されるのはどうかと思いますね。

編集部: そうですね。

河島: ダウンコンバートしたDVDに資産価値があるかというとそれはないと思います。せっかくのハイビジョンをハードディスクで録ったのにSD画質で残しても、それはただの「記録」という意味にしかすぎませんよね。

近藤: わかります。高クオリティに慣れてしまうとレベルはなかなか落とせませんからね。

波瀬: でも、昔のレコードの音は良いですよね。

河島: 映像の世界は違いますよね。どんどん進化していきますから。

近藤: 録りたくない番組は0回だろうが1回だろうが構わないんですが、やはり2回ぐらいにしておいた方が無難じゃないかなとは思います。1回だけというのは、やはりまずいですよ。ハードディスクに残す行為自体がリスクを伴いますから。それからムーブしている最中に停電して全てダメになるという事もありますから。

堀: 僕も2〜3回は必要だと思うんです。例えば銀行のATM。パスワードを忘れても3回まではやり直せますよね。あれと同じくらいの仕組みを作れないでしょうか。

波瀬: いい例えですね。

堀: ミスをしない人間はいませんから。

MM: 1回というのはやはり理不尽ですよ。最低2〜3回は認めて頂かないとダメです。ムーブ中に停電したらたまったもんじゃないですよ。

波瀬: なるほど、よく分かりました。

従来までの録画文化の既得権を認めるか否か

波瀬: 次に私的録画に関するお話を伺いしましょう。法律を厳密に解釈すると、コピーして人に配るのは一切ダメなんです。コピーして人に配るという行為は、どこまで認めてほしいと思いますか?

堀: 親しい友達ぐらいまでは認めてほしいなという気持ちはありますが。

MM: お金が絡まなければある程度は許していいと思います。そのコンテンツを製作している人が結果的に被害を被ってしまうようなことがなければ…。でも、実際に被害を被っているかどうかは判断が難しいのですかね。

波瀬: 法律の解釈では、他人にコピーして渡すという行為自体で、その相手が対象のソフトを買って、コンテンツ製作者がお金をもらえるチャンスを失わせているということになりますね。家族間であればOKなんです。というのは、親と子供とか、ご主人と嫁さんとの間で「貸し借り」の関係が基本的には成立しませんから。

MM: 他人に渡すと、それが違反になるということですね?

波瀬: ファミリーは1つのものを共同に使うという考え方が根底にありますからね。しかし、友人に渡すとなると、そうはいかない。

堀: でも、あくまで法律上の話ですよね。友人に配ることでマーケットが拡大するという見方もあると思うんですよね。

近藤: 技術でその問題を解決することはできないんでしょうか?

波瀬: 実際は著作権保護技術というのは、何で制御するかではなくて、どの範囲を制御するかということが最大のポイントなんですよ。それによって導入する技術を変えていくという形なんです。例えばあるアメリカのメーカーが考えているのは、ファミリー内は全部OKで、そのファミリーから外に映像を出せないようにする。そういうシステムを考案しているところもあります。

河島: IDみたいなものですかね。

波瀬: キー制御方式というものもあります。ところで、今日ご出席の皆さんは、ファミリー間だけでなく友人レベルまでは許してほしいというご意見のようですね。

近藤: 例えば100円払えばここまでOK、200円ならここまでOKとか、500円なら全部認めるとか、ある程度の著作権料を払えばコピーできるという、もっと柔軟な仕組みがあってもいいですよね。

波瀬: 可能性はありますよね。これからのAVは、インターネット接続が必須条件になる可能性が高いですから。その時は近い将来にそのような形で、きちんとした管理システムが構築できるはずです。お金を払えばROMもコピーが許される可能性もあります。今から10年後ぐらいでしょうかね。そこに至るまでにも色々な形で、著作権を管理した上でのビジネスが出てくるかもしれません。

堀: テープやDVDを買うと、課金されますよね。あれも理不尽だなと感じることもあります。

波瀬: 私的録音・録画補償金制度(※3)ですね。

堀: 何も録画していないメディアにお金を払うのは、少し抵抗がありますよね。

MM: デジタル放送録画の場合、ある程度の料金を払えば何度でもコピー可という形にした方がすっきりすると思いますけどね。

波瀬: 全くコピーできないのであれば、多少のお金を払ってでもコピーさせてもらった方がいいですよね。

MM: 本当にいいハイビジョン番組だったら多少のお金を払ってでもコピーしたいですよね。ただ、その料金が凄く高いとお話になりませんが。

波瀬: その金額のラインはどれぐらいですか?

MM: DVDを買った方が安いのであれば、わざわざコピーする為だけにお金を払うのは馬鹿馬鹿しいですよね。

波瀬: そうですね。ごもっともです。ただ、コピーワンス自体はどうも使いにくいというのは、皆さん同じ意見のようですね。

河島: テレビを普通に観て、保存したい、という極めて当たり前の欲求がなぜ自然に認められないのか、全ての方が今同じことを考えていると思いますよ。

近藤: VHSやベータのときは自由でしたからね。

波瀬: 既得権を認めるかどうか、という話ですよね。

河島: 20年以上フリーだったわけですし、ある意味、録画という行為を文化的側面から捉えてほしいとは思いますね。

波瀬: 確かに日本では、録画文化は既に根付いてますよね。さて、今回AVレビュー読者から頂いたアンケートを集計しますと、8割の方がコピーワンスに反対しています。一番多い反対理由は、ムーブする際のトラブルで困っているという意見がかなりの割合を占めます。

編集部: そうですね。

波瀬: あと、今ムーブしてしまうと、大事なハイビジョン番組が次世代メディアに移せないんじゃないか、という不安を感じている方も相当多いようです。放送の公共性と在り方を考えたときに、あまりにもユーザーの志向が無視されすぎではないかという意見もありましたね。今日皆様から頂いた意見も含めまして、今後も各方面に働きかけていきたいと考えます。

近藤: ぜひ、頑張ってください。

編集部: 今日はいろいろとお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。


※3)私的録音・録画補償金制度
著作権法では個人的に楽しむためであっても、MDやオーディオ用CD-Rなど政令で定められたデジタル方式の機器・媒体を用いた録音、録画については著作権者への補償金の支払いを義務づけている。(著作権法30条2)。これを「私的録音・録画補償金制度」といい、家庭内等で音楽などの著作物を私的に使用することを目的とした録音・録画に対し権利者への補償金を支払うことを定めた制度のこと。録音については1993年6月から、録画については2000年7月から実施されている。補償金の支払い方法としては、政令指定を受けた特定機器・記録媒体の製造メーカーなどの協力を得て、ユーザーが機器・媒体を購入する際に補償金を含める形で一括して支払っている。


【ご参加いただいた読者の方々】

河島 寿正さん
AV歴28年、オーディオ歴も含めると32年のキャリアを持つヘビーユーザーの河島さん。AVをはじめたきっかけは、高校生の時、アルバイトで貯めたお金で購入したVHSの初号機から。幸運にも弊誌のプレゼント企画でDVDレコーダーをゲットし、主に格闘技やオリンピックのスポーツ番組を録り溜めているという。録画方法はHDDではなく、ダイレクトにDVDメディアに保存、映画はほとんどパッケージソフトを購入している。

堀 隆史さん
AV歴25年、大学の頃に購入したβデッキからのめり込む。当時は、保存して残すというよりも、観たい番組(『なるほど!ザ・ワールド』)をタイムシフトして活用していたという。ご自宅にハイビジョン番組を録画した200本ものD-VHSテープをコレクトするエアチェックマニア。現在、次の保存先として次世代レコーダーを待つべきか、ハイビジョン対応のHDD&DVDレコーダーをつなぎとして買うべきか、堀さんの苦悩は続く。

近藤 承神子さん
DVD600枚(LDも同数保有していたが処分)、録り溜めたD-VHS120本、CDとアナログレコード各1200枚を保有するオーディオ歴47年、AV歴20年の大ベテランの近藤さん(もっぱら映画を録画)。ハイビジョン番組の録画はHDD&DVDレコーダーとD-VHSで使い分けている。退職後の現在は、ソニーのフルHDプロジェクターVPL-VW100と7.1chサラウンドが稼動する極上のホームシアターで映画三昧の日々を送っている。

MMさん
高校生の頃からオーディオに興味を持ち、大学生時代購入したボーズのスピーカーシステムは現在4代目、LDプレーヤー、ビデオデッキは4台とライフスタイルに合わせて機器をバージョンアップ。LDソフトはダンボール4箱分を二年前全て処分し今はDVDを蒐集中。S-VHSのエアチェック歴が長かったが、最近ようやくHDD&DVDレコーダーを購入。S-VHSで録り溜めたソースをHDDに移し、さらにDVDに落す悪戦苦闘が続いている。ハイビジョン放映を毎日楽しんでいるが、DVDに落としきれずにいる。

<月刊「AVレビュー」7月号所収記事を転載しました>

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