世界に発信するアジアの監督たち 〜マレーシア編〜 アミール・ムハマド監督インタビュー (13) (14)

2004年01月07日
アミール・ムハマド監督 (写真:Danny Lim)
アミール・ムハマド監督インタビュー
Interview with Amir Muhammad

インタビュー・文 / 山之内 優子
by Yuko Yamanouchi


13.「泳ぐ人」、最も奇妙なアメリカ映画


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−映画をビデオで見ることはありますか?

監督:ビデオで見るのが好きなわけではないけれど、そうせざるをえないこともあるでしょう。そう、昨日の夜なんだけれど、すごくおもしろい映画をビデオで見ましたよ。
バート・ランカスターが主演している、「泳ぐ人」(1968年)というタイトルのアメリカ映画。これ、見るべきです。僕はTSUTAYAで借りてきたんだけれど。

−バート・ランカスターはどんな役を?

監督:バート・ランカスターは、他人の家のプールを次々に泳いで横断しながら、自分の家まで帰るという男で、この映画は、アメリカ映画で最も奇妙なもののひとつだね。(笑)

−(笑)面白そうですが。

監督:すごくいい映画です。10くらいのプールが出てくる(笑)。原作はジョン・チーバーという有名な作家。それで、映画は、安部公房みたいな、すごく実存主義的なものですよ。




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14. 大島渚監督の「御法度」をハワイで見た




−日本の監督の映画で、お好きなものはありますか?

監督:そう、「御法度」。

−大島渚監督の?

監督:そうそう、すごくファニーで面白い(笑)。

−ファニーって、どんなところがですか?

監督:ハワイの劇場で見たんだけれど、会場は満員。で、映画の初めから終わりまで、お客さんは笑っていましたね(笑)。

−でも、コメディでしたっけ?

監督:ええ(笑)。それは、何がおかしかったというと、すごく無表情でしょ、だから、おかしみがあると思う。何をやるときも表情を出さないのが面白いんですよね、僕にとっては。

−シリアスな映画だと思っていたんですけれど(笑)。

監督:そうなんだけれど(笑)。この映画は、軽いタッチがあって、映画として、重々しくかまえていないところが、いい映画だと思いますよ。

−今日は、いろいろなお話をありがとうございました。

終わり。



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2003年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で、
アミール・ムハマド監督の長編第2作、「ビッグ・ドリアン」を見た。

リズミカルな編集のテンポに、まず驚き、コメディのように楽しめる場面も含め、
いろいろな素材をつぎつぎに繰り出しながら、マレーシア社会の
多面性や政治的な問題を語る才気に魅せられた。

社会性のあるドキュメンタリーを、
エンタテイメントの要素で楽しませて見せながら、同時に、
社会、個人の生活、言葉による証言と演技、現実と虚構などについての
考察へ導くメタ・ドキュメンタリー映画としても、映画を成立させようという、
いささか欲張った、しかし、いきいきした実験精神を感じた。
やりたいことをたくさん映画につめこんでいるが、
重たくならないのは、若々しい躍動感があったからだろう。

この生き生きとした生命感が、資金にものを言わせて作った映画や、
巨匠タイプの作品では感じることの少ない、
アジアの若手監督の作る映画の良いところかもしれない。
それにしても、こんなにテンポがよくって、元気がいい映画が
アジアで作られているっていうことはうれしいことだ。

この映画を見て知った、文化的背景の異なる人たちが
共存してしているマレーシア社会の事情は、
日本にとっても、これからますます切実な問題になるだろう。
それを攻撃的でなく、シリアス過ぎもしない
口調で扱うという手並みは、とても新鮮だった。
 
東京でのインタビューに快く応じてくださった
長身のムハマド監督は、どの質問にも間髪いれずに率直に回答。
笑いをまじえながら、楽しい雰囲気を作ってくださった。
いろいろな都市で、どんどん映画を作り、ものを書いていく若い監督の、
生き生きした知性とスピード感覚を感じた。

東京は、ますます、さまざまな人たちの視線の交錯する場になっている。
東京を舞台にしたアミール・ムハマド監督の新作が、
東京で上映される日が楽しみだ。

(2003年11月11日東京・京橋でインタビュー 構成:山之内優子)



ご愛読ありがとうございました。
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