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【特別連載】第4回「RITEK光ディスクへのこだわり」

若手アーティスト座談会/「Ritek Pro“CG”」を手に実感したモノとしてのCD-Rの価値とありのままを直に伝える大切さ

公開日 2022/02/22 10:23 PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
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高い品質と信頼性で音楽業界などプロ用BtoB市場から高い評価を集める「Ritek Pro“CG”」。昨年9月にお届けした本特別連載・第2回では、ディスク全盛時代を知らない若手アーティストの皆さんに実際に使用していただき、目や耳、肌で感じた率直な感想を寄せていただいた。今回はコロナも収まりを見せていた昨年末に座談会を開催。CD-Rというメディアに対する気づきや期待について改めて語っていただいた。座談会には著名な録音プロデューサーとしてCD-Rを知り尽くす温井亮氏、「Ritek Pro“CG”」の開発にも携わったディーアンドエーミュージック 代表取締役・白川幸宏氏、That’sブランドを手掛けたスタート・ラボで社長を務めた揚伯裕氏にも参加いただいた。

前列左から浅見諒介さん、ハクさん、田村明石さん。後列左から温井亮さん、揚伯裕さん、白川幸宏さん

<出席者>
浅見諒介(堀江諒介) 1994年、父は元シグナル・あさみあきお、母はアニメソング歌手のパイオニア・堀江美都子という音楽一家のもとに誕生。幼いころから音楽やピアノ、ギターなど多くの楽器を習い、高校生から作曲を始める。ライブでの弾き語りバンド活動を経て、現在は独学で身につけたDTMを用いて楽曲制作活動を行う。

ハク 静岡県出身、高校で吹奏楽部に入部して音楽を始める。卒業後に上京し、介護士の仕事をしながらライブ活動を行う。自主制作CD発売、コロナ禍にツイキャスによる自宅からのライブ配信、ミュージックビデオ制作、単独無観客配信ライブなどの活動を展開。現在は2作目のミュージックビデオ制作に取り掛かる。

田村明石 役者。1998年生まれ。トライストーン・アクティングラボにて演劇を学びながら、映像を中心に役者として活動中。幼少期にインターナショナルスクールに通い、留学経験もあるネイティブに近い発音の英会話やスポーツ全般が得意。2021年8月には自身で監督、脚本、出演した自主短編映画「知る辺」を制作。現在、次作を手掛ける。

温井 亮 録音プロデューサー。NPO法人ロングタイムレコーダーズ専務理事/芸術監督。大手レコード会社勤務時代に日本レコード大賞企画賞を受賞。クラシック、民族音楽、純邦楽などアコースティック系音楽を中心に復刻盤や編集盤も合わせて数百枚の音楽CDを制作。本拠地のグリーンフィンレコーズからリリースを続けている。

白川幸宏 「Ritek Pro“CG”」の商品開発アドバイザーとして眼を光らせた、音楽専門のCD-Rデュプリケートサービス事業で業界トップの実績を誇るディーアンドエーミュージック 代表取締役。2012年当時、ライブ当日の感動をその場でパッケージにして持ち帰れると話題を呼んだ「お持ち帰りCD」の製作現場を支えたキーパーソンでもある。

揚 伯裕 プロ用市場や映像、オーディオマニアから絶大な信頼を得た高品質ディスク「That’s」ブランドを手掛けた株式会社スタート・ラボで代表取締役社長兼CEOをつとめた。

■高品質CD-Rの録音・再生で得た新たな音楽体験

―― サブスクの映像配信や音楽配信サービスがすっかり当たり前となる一方、「昭和レトロブーム」もあり、レコードやカセットテープ、フィルムカメラなどのメディアが注目を集めています。皆さんはこれらアナログメディアへの関心はいかがですか。

ハク フィルムカメラなどは「流行ってきたな」と感じています。女性のアイドルの人はだいたいチェキを使われていますし、デジタルとは違い、プリントされた余白のところにサインやメッセージを書き込めますからね。私たちより少し下の世代では最近、レトロなものを求める傾向が強まってきていて、あえて昔のモノやデジタルではないものを「かわいい」と受けとめている感じがします。

田村 僕は古いモノが大好きなものですから、レコードプレーヤーやカセットのウォークマンをたまに使っています。役者なので写真を撮ってもらう機会が少なくないこともあり、自分で撮るときにもこだわってフィルムカメラを使うことがあります。デジタルやサブスクでは、消してしまうと自分がいままで何を聴いていたのか分からなくなってしまいますが、アナログで実際にモノとして買っておけば残るので大事にしています。

浅見 両親が音楽関係の仕事に就いているので、小さいころから家にはレコードや8トラックカセットテープが普通に置いてありました。ただ、使ったことはほとんどないですね。時間が経つとレトロなものが流行るのは世の常ですが、ノスタルジックな気持ちが甦るご年配の方とは違い、古い時代のものを知らない僕より若い人たちは、興味本位で買って使ってみて、「こっちも面白いじゃないか」と感じる人も少なくない。単に古いだけではなく、時代を感じることができるひとつのメソッドとしても必要ではないでしょうか。

―― 今回、皆さんにはRITEKのCD-RとDVD-Rのディスクを使っていただきました。アナログではなくデジタルメディアですが、形に残すことができます。パソコンにもディスクドライブを搭載するモデルは減りつつありますが、今回、実際に手に取って使ってみていかがでしたか。

ハク 音楽活動を始めて約3年になります。周りの若い人たちはサブスクで配信を始めている人が多いのですが、私は興味が持てませんでした。やはりCDでモノとして手に取ってほしい気持ちをずっと持ち続けていたからです。

―― そういう意味では馴染み深いメディアと言えますが、実際に「Ritek Pro“CG”」CD-Rを使われてみて、普段使われていたCD-Rとの違いは感じられましたか。

ハク いままで使っていたCD-Rは、店頭にあるものを無造作に買ってきて使っていました。こだわる以前に、ディスクに対する知識が全くなかったものですから、焼ければいい、聴いてもらえればいいと考えていました。ところが今回「Ritek Pro“CG”」CD-Rを使用する機会をいただいたことで、どのCD-Rに自分の曲を焼いて渡したいか、相手にどういうふうに聴いてほしいかを初めて考えられるようになりました。

―― 田村さんは前回のレポートでは「音が澄んでいて立体感があり、奥行きのようなものも感じ取れる」と感想を述べていらっしゃいます。

田村 普段から「いいな」と思ったアーティストの曲はCD-Rに焼いて残しておくことが多いのですが、CD-Rの違いなどわからず、100均に行って買ってきたCD-Rに落としていました。読み込む際のエラーなども経験していましたが、「Ritek Pro“CG”」CD-Rでは、今回使用した範囲ではまったくそうした心配はなく、聴いたときにもとても音が澄んでいて驚きました。また、100均のCDだと平たく聴こえていた音に幅や奥行きが感じられ、純粋にすごくいいなと思いました。

「Ritek Pro“CG”」DVD-Rも使用させていただき、僕がつくったキャンペーン映画を録画しました。編集段階では音を何層にもわたって重ねるなど、結構入り組んだ複雑なものなのですが、何の不満もなく録画、再生することができました。

―― 浅見さんは前回のレポートでは「音作りを見直すきっかけにもなった」と述べられています。

浅見 僕は今から12、13年前の中学校時代に、父の影響で音楽を始めて以来、今日まで、デジタル媒体でずっと聴いてきたのですが、「Ritek Pro“CG”」CD-Rを使わせていただいたことが、耳をデトックスするいい機会になったように思います。実家にあるいろいろなオーディオ機器にもCDを入れて聴いてみました。音楽データを入れたスマホで聴くことに慣れているため、最初はとても奇異な感じでしたが、CDから直に聴く音源は音が立体的で、ボーカル、その後ろにいるベース、ドラム、ギターとバンドの立ち位置までもはっきりと聴こえてきます。狭かった聴き具合が一気にパーっと広がり、これまでの音に対する固定概念を払拭する機会を得られた感じです。

■大事なのは“変わらない”こと

―― 今は家庭でもコンポのスピーカーから音楽を聴くシーンが減ってきていますが、若い人のこうした声を聞かれて、「Ritek Pro“CG”」CD-Rの商品化に携われた白川さんはどのようにお感じになりましたか。

品質と信頼性で高い評価を得る「Ritek Pro“CG”」CD-R

白川 仕事でCD-Rを創成期からずっと使って来て、信頼を置ける国産のものがなくなってしまったタイミングに、「RITEK(台湾)が本気でCD-Rを作るので一緒にやりましょう」とスタート・ラボの社長を務めていらっしゃった揚さんに声を掛けていただきました。そこで僕が彼らに出したリクエストは「初心に戻って丁寧に作ってください」という単純明快なことでした。

CD-Rの用途は配布することが基本です。ですから、いかに元と比べて音質が変わらずに忠実なものができるか、音楽の表現を変えることなく伝えられるかが最大のポイントになります。仮に、低品質のCD-Rに焼いて、薄っぺらな音に変わってしまったものを渡してしまうと、受け取った人にはそれが“元”だと認識されてしまうのです。

ストリーミングにしても、YouTubeで聴かせるにしても、圧縮されると音は変わってしまいます。アーティストが最初に作った“大元”のものをいかにして届けるか。ライブの生演奏で届けられればいいのですが、そうもいきません。それがいかに大事なことかを忘れないでいてほしいしですし、その役割を担う“CD-R”くらいはきちんとしたものが残っていてほしいのです。

温井 私が初めて「Ritek Pro“CG”」CD-Rを聴いたときに感じたのは、「これは変わらないな」ということ。モノクロの映画を観たときに皆さん、頭のなかで無意識に色を付けますよね。あれは本当の色を知っているから。音楽でも生演奏で本物の音を知っていると、録音したもので聴いたときにも脳内で補正してより音楽を鮮やかに楽しめる。このときの録音屋の大事な仕事としては、できるだけ“変わらないもの”を残しておくことなわけです。今、CD-Rは悪貨が良貨を駆逐する状態になってしまっているように思えます。

ハク 今回、「Ritek Pro“CG”」CD-Rを使用して、これまで路上ライブでCDを配布してきましたが、なんで私はいままで使用するCD-Rに気を使わなかったのだろうとハッとさせられました。こうした機会が得られて本当によかったなと思います。

白川 本物に近い音って、やはり、説得力が全然違うんですよ。

 明らかに他社のCD-Rとは違う。そこをどのようにして啓発、アピールしていくか。そのときに、若い人たちの感性や声というのは無視できない。こうして率直な意見を聞けるのはとてもありがたいことですし、少しずつでも周りの人にきちんとしたディスクメディアの価値や魅力を伝えてもらいたいですね。音楽も映像もサブスクで事足りると言われてしまったらそれまでかもしれませんが、モノとして大切にする気持ちも忘れないでいてほしいですね。

―― 皆さんには映像や音に対しての鋭敏な観察眼や感性をお持ちですが、周囲の今の若い方の音質や画質へのこだわりについてはどのように感じていらっしゃいますか。

浅見 僕は普段、iPhoneに付属するイコライザーで低音域や高音域を補って音楽を聴いているのですが、それを素に戻して、改めてCDと聴き比べてみると、その違いが歴然としました。今回、学生時代の軽音楽部の友人にも薦めてみたのですが、CDというメディアの良さがどこまで伝わったかはわからないですが、率直に「いいね」という感想はもらいました。

ハク 周りの友人はやはりサブスクの音楽配信サービスで楽しんでいるケースが多いですね。私は昔からジャケットも見たい派でしたので、好きなアーティストはCDで購入していたので、本当に好きなアーティストの曲なのに「サブスクで聴いている」などという声を聞くと、なんか悲しくなってしまいます。モノとして持ちたくない人ももちろんいますが、好きなアーティストだったらやはり、一番きちんとしたいろいろなものが削られていないCDの重みをもっと感じてほしいですね。

田村 僕の周りの友人も、最近は圧倒的にサブスクで聴く人が多いですね。よく思うのが、わざとローハイな感じ、編集してシャリシャリにさせてサブスク上で流しているアーティストが少なくなく、僕の周りの友人にもそういう系のバンドを好んで聴いている人がいっぱいいます。どこかで刺激が欲しいというか、恐らく本物ではないけれど、あえてひとつ昔の音に近づけている風なものを皆、結構求めているような気がします。

また、サブスクによって1曲1曲の重みが減ってきているのではないかと感じています。昔はTSUTAYAなどレンタル店まで行って、店頭でヘッドホンを耳に当てて、新たな音楽を発見することも珍しくなかったと思います。曲に対しての知識も深まり、その分、心にも強く残る。ところが今は何でもかんでもパッと聴けてしまうがゆえに、その時はいいかもしれないけど、忘れやすいというか…。僕はアナログレコードやCDなどモノで残して、「こんなの聴いていたな」と聴き直すことも多いですね。

■モノで手に取り伝わる愛情の大きさ

―― サブスクの映像配信、音楽配信サービスが全盛の今の時代に、ディスクメディアに対する思いや期待をお聞かせください。

浅見 僕ら若い世代は、CDを使えと言われても、サブスクでいいじゃないかと皆言うと思います。しかし、CDの大きな違いのひとつはやはり手元にも残せること。また、一般の方が聴いているのは音楽であって、音の良さが二の次・三の次になってしまっている。CDで聴くからこそ感じられる躍動感、息遣い、歌う前の息を吸う感じなどをもっと感じてもらいたい。音源の旨味がそのままぎゅっと詰め込まれた、CDにしかない良さをみんなにもっと知ってほしいですね。

今はYouTubeやニコニコ動画に曲がいっぱいあげられていて、そこで「いいね」をたくさんもらっているものを、音楽業界の方が見つけ出すケースも少なくないと言います。しかし、温井さんから以前にお聞きしたのですが、昔の音楽業界では、バンドが録音したカセットテープやCD-Rをレコード会社の人に「聴いてください」と渡していたそうで、そうした時代の方がよかったですね。

ハク やはり、現場に売り込みに行き、直接お会いしてCDを渡すことによって、“伝わったな”という実感があったのではないかと思います。今は「YouTubeを見てください」といった売り込み方が当たり前になっていますが、それだと私も経験がありますが、再生数やいいねの数だけで判断されてしまうことがあります。CDを持っていった時代だったら、取りあえず聴いてみようかなと思えてもらえたのに、今は、再生数やいいねの数で判断されて、聴いてもらえないこともある。アーティストたちにとっては淋しい一面です。ライブ活動をしていても、ライブハウスからは「データで送って」と言われるケースが多いですし、また、コロナ禍でオンラインでのライブ配信が増えたこともあり、音楽を直に聴かせる機会が減った寂しさを感じてしまいます。

田村 コロナによる自粛期間中に、アナログな遊びにはまってしまいました。最近では、たとえば「70年代、女性、シティポップ」と自分で複数の縛りをつけて、カセットテープにそのベストアルバムを作る遊びに凄いはまっています。ちょっとマニアック過ぎるかもしれませんが、音楽ってもっといろいろなことができる。CDの存在も、そうした気づきのひとつになってくれるとうれしいですね。

浅見 数年前に横浜で弾き語りをやっていたとき、同じ舞台に出ていた出演者の方からCDをいただきました。今では「YouTubeで聴けるよ」と言われて、すぐに聴くこともできるのですが、当たり前だからこそ意識することもなく、聴く機会を逸してしまうことも少なくありません。近いようで遠くて、そこまでたどり着かない。ところが、CDという形に残る媒体で直接渡されると、「これは絶対に聴かなきゃ」という使命感のようなものが生まれてきます。愛情も抱きますしね。

ハク モノとしてのCDに残すことをずっと大切に思ってきました。ジャケットも自分で作り込んで印刷をしたCDを路上で売っていた時、YouTubeでもあげているのですが、お客様から「YouTubeで聴くより、CDの方が愛情が詰まっている」という言葉をいただき、とてもうれしく感じたことが忘れられません。サブスクも確かに便利ですが、CDを手に取って伝わる愛情の方が大きいのかな。

それは子どもの虐待の問題などとも決して無関係ではなく、モノを持ち、思い出になり、思い出すことができることで、愛情へとつながっていくのではないでしょうか。モノを大切にすることで、人にも優しくすることができる。そういう人間の心にもつながっているように思います。目に見えるものから愛情を感じることができる。「残したいな」と思うからこそ、これからもCDを使い続けていきたいと思います。

―― CD、レコード、カセットテープなど、パッケージで手にする喜びはこれからも忘れてほしくはないですし、また、そうしたメディアがどれも同じではなく、品質差があることもきちんと理解していただきたい。ディスクというメディアが担う責任に真摯に取り組む、RITEKの活躍にこれからも注目していきたいですね。本日はありがとうございました。

(協力:RITEK)

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