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デジタルカメラグランプリ2022 受賞インタビュー

【インタビュー】「Z fc」「Z 9」が大きな話題のニコン。高評価を集めるレンズ群も拡充。需要喚起へ思いがたぎる

2021/12/01 PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
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カメラの新商品がことごとく高価格帯にシフトする流れに楔を打ち込んだニコン「Z fc」が、「デジタルカメラグランプリ2022」で総合金賞に輝いた。並外れたコストパフォーマンスは若いユーザーからも大きな支持を集め、カメラの新たな可能性を切り開いた。いまだ品薄状態とうれしい悲鳴をあげる。さらに、年内発売を目指して正式発表されたZシリーズ待望のフラグシップ機「Z 9」にも大きな注目が集まるニコン。堀内淳氏に話を聞く。
>>デジタルカメラグランプリ2022受賞一覧(PDF)はこちら


株式会社ニコンイメージングジャパン
広報宣伝部 ゼネラルマネジャー
堀内 淳


ほりうちあつし Atsushi Horiuchi
プロフィール/東京都小金井市出身。2011年ニコン入社、21年6月まで5年間にわたり中国駐在、7月より現職。趣味は撮影、スポーツ観戦。

■過去最高レベルの反響を得た「Z fc」

―― デジタルカメラグランプリ2022で総合金賞を「Z fc」が受賞しました。おめでとうございます。話題を集める新商品が高価格帯へシフトするなか、まさにお客様も流通も待ち望まれていた商品の登場と言えるのではないでしょうか。

堀内 まずは、このたびは「Z fc」を『総合金賞』にお選びくださりありがとうございます。非常にありがたいことに、ニコンの近年のカメラのなかでも過去最高レベルの反響をいただいています。Twitterでは発表当日に「Z fc」がトレンド入りしました。また、抽選でZ fcをプレゼントするSNSキャンペーンでハッシュタグをつけて投稿していただいた「私の世界を変えたもの」というワードもトレンド入りするなど、大きな反響のもとでの滑り出しとなり、抜群の手応えを感じています。


「デジタルカメラグランプリ2022」で総合金賞を受賞したニコン「Z fc」。
ニコンの歴史的カメラ「FM2」にインスパイアされたデザインに愛着を感じるカメラ愛好家はもちろんのこと、レンズ交換式カメラを初めて手にする若い方には新鮮なデザインに映ったようで、男女の区別なく、世代を超えた幅広い支持をいただくことができました。お届けに時間を要している点は大変申し訳なく、現在、全力を挙げて取り組んでおります。

―― レンズキットでも十万円台半ば。若い人も少し頑張れば手が届く価格帯はうれしいですね。

堀内 先日、大きな公園に出かけると、若い女性がZ fcを肩から提げている光景を目の当たりにして本当にうれしく思いました。薄さ43.5o、約445gでグリップのない軽量ボディーはバッグにも入れやすいので、気軽に持ち歩いて日常的に撮影を楽しんでいただきたいです。

操作性では、手に持ったときにしっかりと質感を感じていただくことができます。アルミの削り出しからなる3つのダイヤルやシャッターのクリック感まで、FM2のデザインを細部に至るまで再現して作り込んでいます。これまで多くのカメラ愛好家にお会いしてきましたが、「FM2でカメラを始めたんです」とおっしゃられる方が本当に数えきれないくらいいらっしゃいます。現在、写真家として活躍される方も多く、FM2にまつわるいろいろな物語があります。若い方もZ fcに対して、ただのクラシカルなデザインいうだけではなく、そうした背景にあるストーリー性を肌で受け止めていただいているように感じられます。

―― 発売を記念して実施されている、6色(ホワイト、ナチュラルグレー、サンドベージュ、コーラルピンク、ミントグリーン、アンバーブラウン)の中から好きなエクステリアに張替えられる「プレミアムエクステリア張替キャンペーン」も好評ですね。通常4,950円かかる有料サービスが期間限定で無料になる。


6色の中から好きなエクステリアに張替えられる「プレミアムエクステリア張替キャンペーン」も好評だ。
堀内 6色それぞれ多くの方にお申し込みいただいています。若い方がモノとしての所有欲を満たし、気に入って永く使い続けたいと感じてもらう動機付けにも効果を発揮しているように思います。「ニコン」はプロ用の機材、縁遠い存在として認識されている若い方も多くいらっしゃいますが、カラーバリエーションで店頭展開していると目を引き、お客様が気軽に立ち寄り手に取るというハードルを低くできます。そして実際に試してみると「意外と操作も簡単じゃないか。これなら私にも使えそう」とニコンのカメラの使いやすさを理解していただくきっかけにもなっているのではないかと実感しています。

非常にクリエイティブな映像をスマートフォンで撮られている若い方が大勢いらっしゃいますが、カメラで撮影していただくことでさらに表現力は向上します。カメラは難しいものと思われている映像表現が好きな若い皆さまが、Z fcをきっかけに“ニコン”というブランドに対しても親しみを持って選択していただけることを嬉しく感じています。

■ベストセラー機「D850」に匹敵する注文殺到の「Z 9」

―― Z fcとはまさに対極とも言える、Zシリーズ初のフラグシップ機「Z 9」が正式発表されました。現在、予約すると1年待ちとの話も噂になるなど、こちらも大反響を集めています。

堀内 Z 9も非常にありがたいことに、多くの方に支持をいただいた「D850」に迫るご注文をいただいています。動画、静止画ともに最高レベルを目指し、D一桁モデルをお使いのプロフェッショナルの皆さまのニーズに応え納得してお使いいただけるモデルとして開発をしてきましたので、大きな反響をいただけていることを心より嬉しく思います。年内の発売を目指して準備を進めています。


ニコン「Zシリーズ」初のフラグシップ機「Z 9」を正式発表。大きな反響を集める。
静止画では特に、オートフォーカスとファインダーが大きく進化しています。Z 9を先行してお貸出しし、撮影いただいた写真家の方からは「本当によく仕上げられている」「びっくりするほど食いついて追い続けてくれる」と驚きの声をいただいています。

一例ですが、ポートレート撮影では、進化した瞳AFによりピント合わせをカメラに任せられることで、相対する被写体のモデルとのコミュニケーションに全力を注ぎ、いい表情を引き出すことに集中することができます。自分の能力をクリエイティブな方向に専心できるので、もっといろいろな新しい撮影ができるのではないかと大きな可能性を感じていただいています。9つの被写体検出が可能となったことで、ポートレート撮影以外にも、様々なジャンルの写真家の皆さまからも同じような言葉をいただくことができました。

また、動画についても、映像作家として活躍されている方から、仮にZ 9が静止画撮影の機能を搭載しない動画専用カメラだったとしても、「使いたいカメラ」と評価をしていただいています。

なかでも最も高い評価をいただいているのがプロフェッショナルなニーズに応える8K UHD/30P動画で、効率的に放熱することで、最長125分間にわたる撮影を可能としました。この大きさのカメラでこの機能を実現したことは、イベントを長回しで撮影する現場などでも存分に活用していただくことができます。また、特に8K撮影で被写界深度が浅いときなどには複数のモニターを使ってチェックするケースが多いのですが、上部に取り付けたモニターで全体の構図を確認しながら、Z 9のモニターではピント面を拡大して表示させることで、ピントが非常にシビアな動画撮影でも、ひとりでピントまで責任を持って撮影できます。最小限の機材でドキュメンタリー作品などをひとりで撮る方にとってはこれも画期的なことと、いずれも大変高い評価をいただいています。

動画の内部記録では、H.265(HEVC)、ProRes 422 HQから選択が可能で、編集環境に応じて最適な動画記録ファイル形式を選ぶことができます。いままでニコンを使う機会のなかったビデオグラファーやクリエイターからも認めていただき、Z 9を契機に動画業界におけるニコンの存在を拡げていく大きなチャンスが到来したと確信しています。

■新しい楽しみ方がカメラの魅力を拡げる

―― 交換レンズでは「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」が総合金賞を獲得しました。前回「デジタルカメラグランプリ2021 SUMMER」の「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S」に続く連続受賞となりました。審査会では山田久美夫審査委員長より、クリアで柔らかいけど凄い解像感がある。このレンズを使うためにZマウントのカメラを買うことをお薦めできる。それくらい印象深いレンズだと高く評価されていらっしゃいました。

堀内 ありがとうございます。NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR Sは、ニコン伝統の焦点距離105mmの“渾身の1本”として発売し高くご評価いただけたことを嬉しく思います。2006年に発売した前モデル「AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED」は、マクロ撮影からポートレートまで非常によく写るレンズとご評価いただいたロングセラーのレンズです。その後を受けて「最高峰のマイクロレンズ」をコンセプトに掲げ、圧倒的に進化した光学性能を実現しました。私も実際に撮影で使ってみて、絞り開放から色収差が徹底的に抑え込まれていることに驚かされました。絞り開放でも画像の周辺部に至るまで非常に鮮明な描写力を誇り、シャープネス、解像感を損なうことなく撮影できます。本当に凄い進化を遂げることができたと実感しています。


「デジタルカメラグランプリ2022」でニコン「NIKKOR Z MC 105of/2.8 VR S」が交換レンズの総合金賞を獲得。
NIKKOR レンズは「キレイな点像」「高い解像力」「キレイなボケ」「少ないフレア、ゴースト」この4つを大切にしています。レンズをよくご存じの方ほど、点を点で写すことや開放絞りから全ての性能を発揮することの難しさをご存じかと思います。それだけに、本レンズを使用すると「これは凄い」と高い光学性能に目を丸くされます。室内を撮ってもよし、人物を撮ってもよしと、プロの方に限らず幅広いお客さまに使っていただけるレンズです。

―― 厳しい環境下にあるカメラ市場ですが、WEBカメラやVlogなどカメラの新しい楽しみ方にも関心が集まり、今後の巻き返しが期待されます。

堀内 最近、若い方がカメラを購入する際に、動画用途を強く意識される傾向が見受けられます。そこへ商品だけでなく、ノウハウやサポートを一緒に提供し、安心して機材を購入できる環境を構築してくことが重要と考えています。弊社が運営するフォトライフスタイルWEBマガジン「NICO STOP(ニコストップ)」では、「ミラーレスではじめる動画撮影」と題したコンテンツを今年9月まで7回にわたって連載でお届けしました。動画撮影初心者向けに、ポイントやテクニック、用語解説などをわかりやすくイラスト入りで説明しています。Z fcやZ 50が若い人からも人気を集めるなかで、これから動画を始められる方に向けた情報発信を強化して参ります。


拡大する動画用途に対し、「商品だけでなく、ノウハウやサポートを一緒に提供し、安心して機材を購入できる環境を構築してくことが重要」と訴える堀内氏。
―― 新型コロナウイルスの新規感染者数が大きく減少し、人流も回復しています。外出して撮影を楽しむために、カメラやレンズを買い替える機運の高まりが期待されます。年末に向けての販促施策と市場創造へ向けた意気込みをお願いします。

堀内 コロナ禍でなかなか外出できないなか、オンラインを主流としたコミュニケーションが中心となりましたが、今後はリアルの場でのイベント開催も充実させたいと考えております。ニコンの製品は特に、スペック云々というよりは、実際に手に取り使っていただくことで良さを納得いただけるものが多く、店頭やニコンプラザなど、コロナ禍でもわざわざ足を運んでくださるお客様に、期待以上の体験をご提供できるようご販売店様とも連携して力を入れて参ります。

大きな話題と期待を寄せていただいた新製品Z 9をはじめとするカメラや、すでに30本以上のラインナップに拡充したレンズ群でZマウントシステムを一段と充実させお届けしていきます。どうぞこれからのニコンにご期待ください。

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