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VGP2021受賞インタビュー

TCLジャパン・張社長、2022年にはマイクロLEDや8Kテレビを商品化。さらなる飛躍へ“テレビ一点集中”で突き進む

PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
2021年01月14日
受賞インタビュー:TCLジャパンエレクトロニクス


「VGP2021」で4K対応スマートテレビ「C815シリーズ」が企画賞を受賞したTCLジャパンエレクトロニクス。大画面時代に注目される “テレビの音” に、サウンドバーとサブウーファーを内蔵し、臨場感を手軽に手にできる提案が高く評価された。量子ドットLED技術「QLED」を搭載した画質面での先進的なアプローチも注目を集め、さらにミニLED、マイクロLEDへと積極的な展開を進める。日本市場への本格参入から三年目を迎えたここまでの進捗、そして今後の意気込みを張海星社長に聞く。
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株式会社TCLジャパンエレクトロニクス
代表取締役社長
張海星


プロフィール/中国黒竜江工程学院(HEILONGJIANG INSTITUTE OF TECHNOLOGY)卒業。2010年7月 TCL中国本社入社。黒竜江支社 営業マネージャー、2016年1月 TCLフィリピン支社 マーケティングマネージャー、2017年4月 TCL香港支社 社長、2018年11月 株式会社TCL JAPAN ELECTRONICS 副社長、2019年12月 株式会社TCL JAPAN ELECTRONICS 代表取締役社長、現在に至る。好きな言葉は「信じていれば実現できる」。

■日本市場参入で掲げた2つの目標をクリア

―― 「VGP2021」で4K対応スマートテレビ「C815シリーズ」が企画賞を受賞されました。おめでとうございます。2019年9月に日本市場への本格参入を発表され、「2020年12月末までにテレビ販売台数13万台」「2021年末までにテレビ国内シェア3%」の目標を明言されスタートを切りました。丸二年が経過し、三年目に入られますが、目標の進捗はいかがですか。

サウンドバーとサブウーファーを内蔵、コスパに優れたAndroid TV搭載の大画面テレビの商品企画に対して、VGP2021「企画賞」を獲得したTCL「C815」シリーズ。

 テレビ販売台数については、お陰様で目標の13万台を達成することができました。シェアについても、単月ではすでに3%を突破している月もあり、1年を通しても、目標の一年前となる2020年末の段階で、3%に手が掛かるところまで来ています。

―― 順調にステップアップされているわけですね。

 目標数字を設定したときと比較してみると、まず大きな要因として、チャネル開拓が想像以上にスムーズに進んだことが挙げられます。その牽引役ともなったのが、2020年6月に発売したAndroidシステムを搭載するスマートテレビ「S515シリーズ」です。チャネル開拓を進める上で核となったベストセラー商品で、売上げに大きく貢献しています。40V型の「40S515」、32V型の「32S515」の2モデルのラインナップとなりますが、新型コロナの影響による在宅勤務も追い風となり、需要がさらに伸長しました。

日本市場のチャネル開拓の牽引役ともなったベストセラーモデル、TCL「S515シリーズ」。

―― 日本市場への本格参入を発表された際には、家電量販店をはじめとするBtoCだけでなく、ホテルなどBtoBのチャネル開拓にも注力されていく方針を示されています。

 今のところ「BtoC」「BtoB」の両方とも進んでいますが、現在は、メインとなっているBtoCにフォーカスして力を入れています。家電量販店を中心に好調に推移しており、コロナの影響もあり、Amazonをはじめとするオンラインでの販売も大きく伸びています。一方、BtoBでは2種類のテレビによる展開があり、通常の家庭用としても使えるテレビのビジネスはすでにスタートを切っていますが、もうひとつのホテル専用の機能を搭載したテレビの展開に関しては、日本市場向けのテレビ開発がもう少し落ち着いた段階で、改めて開発を進めていく予定です。

―― 消費者はもちろん、商品を販売される販売店も、やはり海外ブランドで気にされるのは “買った後” “売った後” のサポート体制ですが、御社のテレビ総合カタログでも特徴的なのは、開くとすぐに「購入後も安心のサポート体制」と題してサポートについての説明があります。

 日本市場で展開するにあたり、「アフターサポート」は大変重要なテーマだと位置づけています。アフターサポートをはじめ、お客様やチャネルへの対応、品質の重要性など、日本市場に実際に進出し、時間を重ねることで、理解を深めることができました。当初より、テレビ業界での経験を持った方を1名採用していましたが、現在はさらに拡充しています。また、コールセンターは、対応する専門スタッフはもちろん全員が日本人で、お客様にも安心していただいております。当初は月曜から金曜日だった稼働日も、現在は年末年始を除いて土日も対応しており、メールだけでなく、お電話でも対応できるようになっています。

製品開発にも直結するアフターサポートも重要テーマと位置づけ力を入れる。修理センターは本社のCRMシステムを導入し、コールセンターとの連携が予定されている。

―― ご苦労された点もあったのではないでしょうか。

 コールセンターの構築には難しい要素が数多くありました。リソースが十分であること、家電の経験がないとなかなかむずかしいこと、もちろん、コストパフォーマンスも求められます。オペレーター達も家電の経験が少し浅かったため、かなりの時間を費やして専門スタッフとしてのトレーニングを行いました。今はようやく慣れて、順調に進んでいます。

―― 修理対応についてはいかがですか。

 修理センターはさらに充実した体制を目指し、キャパシティを拡大すると同時に、本社のCRMシステムを導入し、コールセンターとも連携できるように改善を進めているところです。導入を目指しているグローバルのCRMシステムが英語バージョンのみのため、日本語へのローカライズにもう少し時間を要しそうです。

アフターサポートを強化することは、製品開発にも直結することですから、開発段階からさらに一歩踏み込んで、お客様に寄り添った提案が可能となります。とりわけ日本のお客様の製品を見る目は世界のどの国・地域よりも厳しいですからね。日本市場でスタンダードとしてお客様にご満足いただくことができれば、ワールドワイドで自信を持って、力強く勝負することができます。

■ナショナルブランドの風格漂う画質と音質

―― 商品力に加え、サービス力も日に日にレベルアップされる中で、今回、VGP2021で「C815シリーズ」が企画賞を受賞されました。

 日本市場へ導入する製品は、画質と音質には特に力を入れています。画質面からは、圧巻の色彩とコントラストを実現する量子ドットLED技術「QLED」の採用が私たちの大きな特徴です。これまでの液晶テレビよりも色域が広がり、豊かな色彩で、より自然に近い映像を再現することができます。さらに、テレビの大画面を1,296のゾーンに分割し、映像情報を詳細に分析することでコントラストを大幅に高める「マイクロディミング」、日本以外の市場ではまだ導入していない120Hz倍速駆動技術「MEMC」など先進技術を搭載しています。

TCLの大きな強みのひとつが量子ドットLED技術「QLED」。従来の液晶テレビより表示できる色域が広がり、より豊かな色彩で自然に近いカラーを再現できる。

―― 審査会では、テレビにサウンドバーとサブウーファーを搭載、さらにドルビーアトモスにも対応し、テレビの音に対する革新的な一手を投じたことに高い評価が集まりました。日本市場では元来、 “テレビの音” に対するアピールが不得手な面もあり、日本市場でのTCLの活躍も期待されます。

 TCLのテレビのラインナップでは、昨年発売したフラグシップの「X10シリーズ」と「C815シリーズ」の上位2シリーズは、欧州のデザインチームが製品デザインを行っています。 “北欧スタイル” と呼ばれるデザインで、サウンドバーを一体にしてスッキリとまとめられている点が特長です。フラグシップの「Xシリーズ」に採用後、「C815シリーズ」にもそのコンセプトが導入されました。おしゃれなデザインと音質アップを両立したモデルと言えます。

特に「C815シリーズ」ではドルビーアトモス対応となり、サウンドバーに加え、背面にサブウーファーも搭載し、まるで映画館にいるのと同じような、3次元のリアルな立体音響に包み込まれる体験を家庭で味わうことができます。映画や音楽では特に “音” は大変重要な要素ですからね。

―― お客様や売り場での手応えはいかがですか。

 2018年に発売した「C6シリーズ」にJBLのサウンドバーを搭載したのがスタートになりますが、「テレビで臨場感たっぷりの音場が楽しめる」「わざわざサウンドバーを追加購入しなくても済む」など大変好評をいただいています。お客様は映画やスポーツはもちろんですが、いまはスマートテレビでゲームなども楽しむことができます。画質だけでなく、臨場感あふれる音質をお客様も求めており、購入の際の決め手のひとつになっています。画質も音質も、ナショナルブランドを目指してさらに力を入れて参ります。

サウンドバーとサブウーファーを内蔵したTCL「C815」シリーズがVGP2021「企画賞」を受賞。「臨場感あふれる音質はお客様が購入を決定する際の決め手のひとつになっています」と語る張社長。「日本市場へ導入する製品は画質と音質には特に力を入れています」と力を込める。

■進化するQLEDが築く大きなアドバンテージ

―― 御社の大きな強みのひとつが、さきほど画質のお話でも挙げられた量子ドットLED技術「QLED」ですね。

 他社と差別化を図る上でも大きなポイントになる技術だと自負しています。今後さらに、QLEDの上の “QLEDプロ” として、QLEDプラス ミニLED、さらに開発中のQLEDプラス マイクロLEDへとレベルアップを進めていきます。

QLEDプラス ミニLEDについては、2019年に発売した「X10シリーズ」に搭載しました。QLEDプラス マイクロLEDについては、中国のLEDメーカーで最大手となるSan'an(三安光電)と共同開発を行っています。マイクロLEDにはサムスンもかなり力を入れて開発を行っていますが、この技術が開発できれば、明るさをはじめとするテレビの画質を格段とレベルアップすることが可能で、大きなアドバンテージを築くことができます。

マイクロLEDを搭載した商品の市場導入は2022年を予定しています。また、8Kテレビを2021年の市場導入の予定で開発を進めていたのですが、現在、自社で開発を行っている4Kチューナーを搭載できるタイミングで、改めて2022年の市場導入を目指して鋭意開発中です。その際に、もう一段進化させた自社開発の画質エンジンの導入を予定しています。

音質の面からは、現在、グローバルでコラボレーションの契約を進めているサウンドバーの案件があり、準備が整い次第、日本製品にも導入していく予定です。コラボレートが実現する企業のサウンドバー技術を導入することで、同ブランドの知名度も生かしながら、さらにブランド認知度も高めて参ります。

―― TCLグループはテレビの出荷台数でも世界2位の実績を誇ります。

 製品開発では、TCL傘下のパネルメーカーであり、また、開発センターでもあるTCL華星光電技術(CSOT)が自社パネルを開発。その製造から組み立てまで、自社で一貫して手掛けることで、高い品質と価格競争力を両立できることが大きな強みと言えます。

約75,000名の従業員、28の研究機関、22の製造工場を有し、世界160の国と地域にビジネスを展開するTCLグループ。2019年のテレビ出荷台数は世界2位の約3,200万台を誇る。

TCL傘下のパネルメーカーであり、また、開発センターでもあるTCL華星光電技術(CSOT)。

―― 2020年はディスプレイにまつわるM&Aの発表も目につきました。

 2020年8月に、日本のJOLED(ジェイオーレッド)に200億円の投資を行いました。JOLEDが研究開発している低コストで多品種対応力に優れた「印刷方式」により、プリント有機ELテレビの開発を共同で進めていく予定です。有機ELテレビの楽しさをさらに大きく広げていけるものとして、私たちも大変楽しみにしています。同じく8月には、韓国サムスン電子の傘下にあるサムスンディスプレイが江蘇省蘇州市に持つ液晶パネル生産子会社を買収しており、大型液晶パネルの生産にもさらに力を入れていく予定です。

もうひとつのポイントとして、2020年よりGoogleと正式パートナーとなり、Android TVの展開をスタートしています。現在、4Kテレビに導入していますが、これからは2Kを含めたすべてのラインナップをAndroid TVを搭載したスマートテレビにしていきます。今後、Googleとのコラボレーションで、お客様をもっとワクワクさせるいろいろな機能を搭載していきますので、どうぞ楽しみにしていてください。2021年1月開催のCESでは、Google TVをTCLのテレビに搭載することを発表しました。既存のAndroid TVよりコンテンツにアクセスできる機能やライブ番組、Watch Listなどの機能が追加されます。なお、日本での導入時期は現時点では未定です。

■ブランディングに徹底フォーカスして認知拡大

―― 製品からサポートまで総合力に磨きがかかりますが、現在、日本市場ではどのような層から支持を集めているのでしょうか。

 当社がメインターゲットと設定しているのは20代から40代の若い方です。2018年と2019年に行った大規模な市場調査からも、ターゲットとする20〜40代のお客様がメインテレビとして購入、使用されているケースがもっとも多く、次いで、40代以上のお客様が寝室などのセカンドテレビとして使用されていることがわかりました。若い方は、画質・音質などの性能からコストパフォーマンスまで総合的に見て判断していただけますので、自社でパネル生産から垂直統合で製品をお届けできるコストパフォーマンスの高さも、他社に対する大きな差別化ポイントとなっています。

ただ、TCLのブランド認知度はまだ決して高くはないと認識しており、ここ数年はそこへとことんフォーカスし、ブランディングには特に力を入れていきます。重要なサポート面からも、日本の消費者が安心できる商品を提供することで、売り場からも信頼が生まれ、メーカー、売り場、お客様間のシナジーが発揮できると確信しています。

―― コロナ禍の巣ごもりが追い風になり、テレビ市場は目下、好調に推移しています。2021年は延期された東京五輪の開催も予定されています。今後の市場展望をお聞かせください。

 コロナ禍で進展するリモートワークによる需要増などもあり、新生活シーズンとなる春先は、小型サイズが例年以上に売上げを伸ばすと予想しており、32V型と40V型を揃える「S515シリーズ」をはじめとする強力ラインナップで迎え撃ちます。そして、五輪前には、大きなサイズで、動きの速いスポーツもくっきり楽しめる倍速機能を備え、音声も臨場感たっぷりに楽しめるテレビがお客様のターゲットです。そこをしっかりと訴求できる商品を市場へ導入して参ります。

2021年は各チャネルでのコラボレーションを深めて、コロナ終息後にはいろいろな場面でプロモーションを実施するチャンスも増やしていきます。また、TCLではこれまで、国際バスケットボール連盟(FIBA)やサッカー界のスーパースター、ネイマール選手とのパートナーシップを発表していますが、五輪イヤーとなる2021年は、スポーツによるブランディングのコミュニケーションにも力を入れていきます。現在、スポンサーシップの提案が何社かあがってきており、2021年早々には発表できる予定です。

―― それでは最後に、2021年の意気込みをお願いします。

 製品はもちろん、サービスの拡充も重要なポイントとなります。また、コロナ禍で2021年も恐らく、消費者の購入スタイルはオフラインからオンラインへのシフトが進んでいくと思われ、多様化するチャネルそれぞれへの施策やブランディングにも一層フォーカスしていく計画です。日本のテレビ市場におけるシェア4%を目標に、さらに5%にも果敢にチャレンジしていきます。

製品、サービス、ブランディング、チャネルの取り組みがテレビ部門において一定の成果をあげられた段階では、他のカテゴリーの製品の日本市場への導入も視野に入れており、本社では洗濯機や冷蔵庫、その他の小物家電を開発中です。しかし、とにかく今は、さらなる飛躍への大きな節目の年となる2022年まで、テレビに一点集中して参ります。どうぞご期待ください。

マイクロLED搭載商品、自社開発4Kチューナーを搭載したで8Kテレビ、新画質エンジンの導入を予定する2022年へ向けて、「テレビに一点集中していく」と意気込む。

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