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インタビュー

<山本敦のAV進化論 第197回>

Amazon Musicキーパーソンに聞く − More than Musicの体験創造

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山本 敦
2020年12月28日
アマゾンがハイレゾ/ロスレスや3Dオーディオの音楽配信「Amazon Music HD」を開始してから1年が過ぎた。 同社はいま、新型コロナウイルスの感染拡大に影響を受けるアーティストの活動、ファンとの結びつきを支援することも目的とする新たな取り組みにも力を入れている。成長を続けるアマゾンの音楽配信サービスの戦略的な取り組みを、アマゾンジャパン デジタル音楽事業本部 アーティスト&レーベルリレーションズ本部長の島田和大氏に聞いた。

Amazon Musicのキーパーソンである島田和大氏に話を聞いた

ECサービスと連携できるAmazon Musicの強み

アマゾンと他社の音楽配信サービスとの違いについて、島田氏は次の2点が大事なポイントであると話している。

ひとつはAmazonのECサービスと連結させて、CDやアーティストグッズの物販をパッケージにして展開できることだ。例えば人気アーティストのあいみょんやSEKAI NO OWARIの新プロジェクトであるEnd of the Worldの新譜CDの発売に合わせて、アーティストグッズをAmazon.co.jpで販売したところ好評を博したという。

もうひとつは主にアーティストにとってメリットになることだが、Amazonがグローバルに展開するプロモーションツールを使った海外進出が図れることだ。アマゾンがニューヨークのタイムズスクウェアの一角に所有する街頭広告スペースに、以前Perfumeが米国進出盤の広告プロモーションを展開したところ大くの反響を得たそうだ。「Amazon Musicと組めば世界展開が見えてくることを、広くアーティストの皆様に知ってもらい活用してほしい」と島田氏が話す。

コロナ禍の中でアーティストとファンをつないだ

Amazon Musicはアーティストとファンを結びつける架け橋であることを最大のミッションとするサービスなのだと、島田氏はインタビューの間繰り返し強調していた。2015年に日本国内ではPrime Musicとしてスタートした同社の音楽配信サービスは、アーティストとの関係を丁寧に深めながら楽曲やサービスを充実させてきたと島田氏が振り返る。アマゾンの音楽配信サービス、Amazon Musicは2020年1月現在に全世界で5,500万人のユーザーが利用している。配信楽曲数はハイレゾ/ロスレス、3Dオーディオのタイトルを含めて7,000万曲以上を数える。

Amazonが提供する音声サービス、Alexaが搭載されたEchoシリーズなどのスマートスピーカーと連携するサービスも、例えばアーティスト自身による作品紹介のスキル(Alexa搭載端末に追加できる拡張機能)開発など、多方面からアーティストとファンを結びつけるための取り組みに力を入れている。

最近ではコロナ禍の中でファンとの接点を見つけることに苦心するアーティストをサポートするため、アマゾンは音楽ライブの配信にも力をいれている。公演映像のインターネット配信に加えてアーティストグッズのWeb通販をからめて、アーティストとファンの結びつきを強くする試みも沢山の支持を得た。

Amazon Musicの音楽文化を支える取り組みについて、海外で面白い事例はあるのだろうか。ニューヨークのマディソン・スクウェアガーデンにテイラー・スウィフトを招いてAmazon Prime Dayコンサートと題した公演を実施し、大きな成功を納めたという。またアマゾン独自の、ゲームなどアクティビティのライブ映像配信プラットフォームである「Twitch(トゥイッチ)」を活用した音楽ライブ配信の数も徐々に増えているようだ。本日12月28日の夜も、世界的に活躍するギタリストのMIYAVIが、Amazon Musicとタッグを組み、国際社会共通の問題であるサステイナビリティをコンセプトとするライブを、Twitchで予定している。

新曲の独占・先行配信にも力を入れる理由

Amazon Musicでは話題のアーティストによる楽曲の独占先行配信も行っている。12月16日には、Amazon Original楽曲としてあいみょんの新曲「スーパーガール」がAmazon Musicでの独占配信がスタートした。また年末にはジャスティン・ビーバーやメアリー・J. ブライジなど、世界的アーティストによるAmazon Originalのクリスマスソングを独占配信して話題を呼んだ。

あいみょんの新曲を独占配信するなどの取り組みが話題に

独占・先行配信の試みは音楽ファンを同社のサービスに取り込むことが目的ではなく、アーティストがファンとの距離を近づけるためのプロモーションツールの一環として提供しているのだと島田氏が説いている。Amazon Musicでの独占配信は期限付きのサービスであり、これを過ぎると他のプラットフォームでも聴けるようになることが多い。

音楽レーベルが新しいアーティストを発掘して、世に送り出す仕事も積極的にサポートしていきたいと島田氏は語る。例えば新人アーティストにフォーカスしたプレイリストの紹介、楽曲のキュレーションを通じてアーティストの魅力を伝えることにも取り組んでいるという。

11月下旬から、Amazon Musicアプリではアーティストのミュージックビデオの動画が配信され、スマホやタブレットなどの端末でも見られるようになった。また、Amazon Musicアプリ内でTwitchを活用したライブ配信の視聴も可能になった。これもアーティストとファンをつなぐ有力なサービスのひとつになるだろう。

Amazon Music HDにも飛躍を期待

2019年末のサザンオールスターズ、2020年の米津玄師、久保田利伸、aikoに代表されるビッグアーティストの楽曲配信が解禁されたことがAmazon Musicのサービスにとっても会員増の大きな呼び水になった。「ご利用いただくユーザーにとって楽曲の選択肢が増えることは音楽配信サービスへの興味がわくきっかけになり得ると考えます。またユーザーが増えるほど、音楽の作り手であるアーティストにインセンティブを還元できることからポジティブサイクルが生まれる」と島田氏は今後の成長に期待を寄せている。

サービスがスタートして1年を迎えたハイレゾ/ロスレス楽曲配信のAmazon Music HDについても、島田氏は、現状アーティスト側の受け止め方が概ねポジティブであり、ハイクオリティなサウンドを求めるユーザー、届けたいアーティストの双方にとって大事なサービスになっていると手応えを語っている。

昨今はハイレゾ対応のスマホが普及して、高音質の音楽ストリーミングサービスもデータ量を気にせず楽しめる、5G対応のモバイル通信サービスを複数のキャリアが提供している。島田氏は「音楽配信コンテンツもクオリティの高いものを聴かなければ真の価値がわからないという声もあることから、Amazon Music HDがこれからさらに伸びる期待感を持っている」と話す。

従来通り好きな音楽を“聴き放題”で楽しめる定額制音楽配信サービスの認知を広めながら、HDサウンドの魅力を正しい対応機器を使って楽しむ方法を伝えていくことも今後の課題になるだろう。同様に今はスマートスピーカーのAmazon Echo Studioで立体サウンドが楽しめる3Dオーディオのコンテンツについても、楽曲と対応するハードウェアが追加されることを楽しみにしたい。

島田氏は「これからも現在の厳しい環境の中で、パートナーであるレーベル、アーティストと協力しながら知恵を絞り、音楽文化を成長に導く技術とアイデアを育んでいきたい」と意気込む。音楽配信サービスを核に、ECサービスを組み合わせたAmazon全体のプラットフォームが活用できるメリットを活かして、様々な「More than Musicの体験」を提供したいと語る島田氏の言葉は自信にあふれていた。

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