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ポータブル音響専業メーカーの強みを発揮

「今は攻めの時、従来概念にとらわれない目線から新たな価値を」。東芝LET 関根優一社長インタビュー

2019/03/04 Senka21編集部・竹内純
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■高品質の音をより身近に。復活! Aurex

―― ポータブル音響機器でももっといい音で楽しめる商品が欲しい。そうしたニーズに応え、往年のハイファイオーディオブランド「Aurex(オーレックス)」が復活しました。

関根 2016年に発売したCDラジオ「TY-AH1000」で、二十数年振りに「Aurex」ブランドを復活させたところ、特に50代以上の方を中心に「懐かしいね」との声が数多く寄せられ、大変高い評価をいただきました。「Aurex」というのは、オーディオの「Au」に王様という意味の「rex」をあわせた造語です。ポータブル音響機器の音の王様をつくりたい。そんな思いを託し、満を持して復活させたものです。

「ポータブル音響機器の音の王様を目指した」とAurex復活へ託した思いを語る関根優一社長

―― 昨年3月に第2弾となるCDラジカセ「TY-AK1」、さらにCDラジオ「TY-AH1」を発売しました。

関根 高級なオーディオ機器はどっかりと据え置いて、じっくり構えて聴くものですが、TY-AH1/TY-AK1には特徴的な “取っ手” があります。高音質ながらどこにでも持ち運んで聞くことができる、ぐっと身近なイメージが湧いてきませんか。両機種ともに毎月計画通りの数量が出ており、身近なポータブルオーディオの王様として受け入れられている手応えを感じています。

取っ手を備えたTY-AK1/AH1。こだわりの高音質をもっと身近に、どこにでも持ち歩ける

また、復活といえば、レコードブームが話題になっていますが、実はカセットテープも見直されてきています。CDラジカセであるTY-AK1では、店頭に提供するデモテープにもこだわり、50代くらいの年代の方の胸にきゅんと響くものをと原田知世さんの曲を選びました。Aurex全盛時のアイドルで、当時は東芝のラジカセ「シュガー」のイメージキャラクターとしても起用されています。

ポータブルオーディオながら臨場感あふれるサウンドを実現する「Aurex」第2弾の2機種を昨年3月発売。レコードとともに脚光を浴びるカセットへの注目も高まる中、「TY-AK1」はCDラジカセとして登場

一方のCDラジオTY-AH1は、TY-AK1にも搭載するSDカードスロット、USB端子に加え、前面にPC入力端子も備え、より多彩なハイレゾ音源に対応します。今後もポータブルオーディオ専業メーカーとしての強み、特徴を活かした商品を提案していきたいと思います。

CDラジオ「TY-AH1」にはPCとのダイレクト接続も可能なPC入力端子を装備する

―― 商品カタログを見ていても、すでに尖った商品が目に付きますね。

関根 中東ではパーティーなど屋外で鳴らせる大型スピーカーに人気があり、そうした中東向け商品の中からバッテリー内蔵の多機能パーティースピーカー「TY-ASC60」を国内にも導入し、計画以上の売れ行きとなっています。伸長著しいヘッドホン・イヤホンも海外市場ではすでに展開しており、完全ワイヤレスを中心に、日本市場を含めた新たな展開に向けた商品戦略・チャネル戦略も検討しています。ターゲットユーザーが誰なのか、その人たちはWEBを含めてどこのチャネルで購入しているのか、しっかり分析することがとても重要だと思っています。

充電式バッテリー内蔵で持ち運びOKの多機能パーティースピーカー「TY-ASC60」。縦置き・横置き可能で、さまざまな場所やシーンでの屋外イベントに大活躍。7色に光るLEDライトと2色のデコレーションライトを備える

また東芝エルイートレーディングという社名の通り、東芝ストアさんを中心に、東芝ブランドにはない商品を調達、供給することがそもそものミッションですので、現在も約100社7,000品種の商品を提供しています。

■強みは小回りが効くスピード感と長年培ったノウハウ

―― 大企業を中心とした生産の効率化が進められ、お客様の価値観やライフスタイルも多様化し、ニーズはどんどん細分化しています。御社の役割はますます重要になるのではないでしょうか。

関根 当社には音響商品の企画から製造において、これまで資本関係のない海外メーカーや協力工場とやり取りする中で長年培ってきたODM、OEMのノウハウがあります。これから高齢社会が進むにつれ、高齢者の単身世帯や夫婦二人世帯の増加が見込まれます。そうした層に向けたシンプル家電のニーズもますます高まると予想され、そこでも当社の強みを活かせると確信しています。

商品化を審議する場として、毎週「商品委員会」を開いています。商品担当者からの提案が相次ぐ非常に活気に満ちた場になっています。当社の存在価値をさらに高める “攻め” の態勢が確実に浸透し、整ってきたサインでもあると思います。新しいワーキンググループも立ち上げ、「これは面白い!」と喜んでいただけるような切り口の商品の準備も進んでいますので、どうぞ楽しみにしていてください。

―― それでは最後に、今後のさらなる躍進へ意気込みをお願いします。

関根 ますます市場の二極化が進む中、高付加価値の商品が売れる一方で、大手メーカーの手が回りにくい単機能でシンプルな商品も求められています。そのニーズをきちんと汲み取り、商品化してお届けしていくのが当社の役割と思っております。

当社が目指す姿は、生活家電のコンセプトに近い、生活者の目線を大事にした、より使いやすく、身近に感じられるポータブル音響機器を提供できるメーカーです。今後も既存の概念や枠組みにとらわれない新しい商品をどんどん提案することで、流通の皆様のご商売の幅を広げ、お客様の豊かな生活を実現する “総合ライフスタイル提案” を行って参ります。

今年は元号が変わり、消費税率アップも控えています。さらに、ラグビーワールドカップの開催、また、来年には東京オリンピック・パラリンピックと大きなイベントが続きます。大阪では万博の開催も決定しています。今は攻めの時。将来を見据えて、新しいことにチャンレンジして参ります。どうぞご期待ください。


Profile 関根優一 Yuuichi Sekine 創業110周年を迎えて社名を東京芝浦電気から「東芝」へ変更、創業の地である芝浦(浜松町)に新本社ビルが竣工した1984年に株式会社東芝へ入社。以来、三十数年にわたり家電畑を歩み、営業、広告販促、生産管理など家電に関わるさまざまなミッションを川上から川下まで経験した後、2015年 東芝エルイートレーディングに着任し、2018年6月 代表取締役社長に就任。現在に至る。

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