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IFA 2017会場でインタビュー

<IFA>ソニーのウォークマン開発者が語る、「NW-ZX300」で目指した“フラグシップ級の音”

公開日 2017/09/01 10:50 山本 敦
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主な理由はWM1世代の最新プロセッサーがバッテリーを消費するためということだが、音質のパフォーマンスをWM1シリーズに近づけながら、それでもなおリスニング体験が不自由にならないレベルにバッテリー性能をまとめ上げていることにむしろ目を向けたい。

その他オーディオプレーヤーとしての機能も充実

本体の底面には外部デジタル出力としてWM-PORTを引き続き搭載する。USBケーブルでPCに接続すればウォークマンをUSB-DACとして使えるモードが新設された。PCで再生した音楽ストリーミングやCDリッピングの音も、DSEE HXによってアップスケーリングしながら楽しめる。

USB-DAC機能も新設

BluetoothはLDACのほか、aptX HDによる送り出しにも対応する。同機能は発売後のファームウェアアップデートにより提供される予定だ。またより小さなファイルサイズでハイレゾ再生が楽しめるMQAも新たにサポートする。

MQA再生の機能も追加された

それぞれの機能を追加した背景について、大庭氏はウォークマンを愛用するユーザーの方々に様々な音源を楽しんでもらいたいためと語っている。なおMQAファイルは楽曲リストに表示されるフォーマット、または再生画面から楽曲情報の詳細から確認できる仕様となる。

楽曲情報の詳細にMQAコーデックの記載が表示される

楽曲リストからもMQAのタイトルが見分けられる

ちなみに、メリディアンのUSB-DAC「Explorer 2」はMQAファイルを再生するとブルーのランプが点灯するし、オンキヨーのハイレゾスマホ GRANBEATは再生画面上にMQAのテキストと青いアイコンが表示されるが、このようなサインをZX300シリーズ、A40シリーズのどちらも搭載していない。

なお、大庭氏によればMQA/aptX HDへの対応についてはフラグシップのWM1シリーズもファームウェアのアップデートにより対応する計画があるという。

再生できるハイレゾ音源のファイル形式はZX100同様、WAV/FLAC/AIFF/ALACにDSDと幅広く、新たにAPEフォーマットにまで広げた。ZX100に搭載されていた機能だが、ZX300では省かれた機能のひとつにデジタルノイズキャンセリングがある。本機能はもともとソニーの専用イヤホンとの組み合わせでのみ使える機能だったため、「ZXクラスのプレーヤーを愛用するユーザーは、むしろ自分の愛用するヘッドホン・イヤホンを組み合わせて使うであろう」という判断から採用が見送られたと大庭氏が理由を説明している。

Wi-Fi機能はZX100と同様に非搭載となり、ストリーミング音源の再生はできない。このあたりの仕様はAstell&Kern「AK70」やオンキヨー「DP-X1A」に比べると筆者は少し物足りなく感じられてしまう。特に今回はZX300はベースの音質がかなり良さそうなので、これでぜひ音楽配信のコンテンツも楽しんでみたいと思うからだ。

大庭氏にWi-Fi接続やストリーミングコンテンツへの対応について質問をぶつけてみたところ、「現在のウォークマンの課題として認識はしていますので、今後は対応を検討していきたい」という回答が返ってきた。

ZX100にWM1の音質やプレミアムクラスのプレーヤーとしてのエッセンスを惜しみなく投入しながら、価格はZX100なみにリーズナブルに抑えている。新規に搭載したペンタコン端子によるバランス接続の機能により、同じプラグを採用するソニーのヘッドホン・イヤホンをコーディネートすれば、比較的手頃な10万円前後を目安に本格的なピュア・ポータブルオーディオ再生環境が構築できてしまう。

おそらく対抗馬はAstell&Kern「AK70」やコウォン「PLENUE R」、オンキヨー「DP-X1A」あたりになろうと思うが、ウォークマンシリーズとしてまたオンリーワンの魅力を放つ良質なスタンダードがラインアップに揃うことを歓迎したい。日本での登場も待ち遠しい限りだ。

ZX300での進化が入門機のA40シリーズにも多く取り込まれた

今回のIFAではハイレゾ対応ウォークマンのエントリーモデルである「A40シリーズ」も同時に発表された。

ウォークマンのエントリーモデル「A40」シリーズも音質が飛躍を遂げている

A30シリーズから基板のレイアウトを変更。NW-ZX300と同様にフルデジタルアンプS-Master HXのICに高音質はんだを採用したことで、音質にいっそうの力強さが加わっている。持参したAKGのN30で会場に展示されている実機の音をチェックしてみたが、ボーカルの声にはふくよかさとエッジの効いたスピード感がバランスよく同居している。特に低音のメリハリがよく、定位感が鮮明に現れる。音像にぎゅっと引き締まった筋肉質なサウンドに着実なステップアップを感じた次第だ。

A40ではMQAコーデックの再生に対応を広げたほか、ワイヤレスは従来のSBCよりも多くの情報をBluetoothの技術を使って伝送できるソニーのLDACに加えて、ファームウェアのアップデートでaptX HDにも対応を広げる。

ソニーの大庭氏はウォークマンAシリーズの機能を拡張していくことで、より多くの方々に「いい音」との出会いを提供していきたいと意気込みを語る。

もう一つの重要な機能が付属のイヤホン、または別売される「IER-NW500N」を接続したときに利用できる、デジタルNC機能の発想を広げて、外音を積極的に取り込めるようにする外音取り込み機能だ。取り込むボリュームをメニューから±15ずつのレベルで調節できるように設計されている。ポータブルリスニング時の安全が高められる実用的な機能だ。

本体のカラーバリエーションは同時発表のポータブルヘッドホン・イヤホン「h.earシリーズ」の新モデルに合わせた5色展開とした。これまでのビビッドな色合いが、落ち着いたミディアムトーンの色調に変わってクールな印象に整えた。

A30シリーズに引き続いて、イヤホンを同梱しないパッケージが2万円台前半で展開される。今回の音質向上の成果を後ろ盾に、新しいA40シリーズはすでにハイレゾプレーヤーを使いこなすマニアなポータブルオーディオファンにとっても注目すべきDAPになりそうだ。

(山本 敦)

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