HOME > インタビュー > 待望の新作「マイ・フェイヴァリット・シングス」を辛島文雄自身が語る

豪華ゲストも参加した集大成的アルバム

待望の新作「マイ・フェイヴァリット・シングス」を辛島文雄自身が語る

公開日 2016/08/05 18:43 オーディオ編集部・樫出
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

――昨年末、analog誌の50号と新宿ピットイン50周年を記念して「I LOVE…」というレコードを作りましたが、その感想をいただけますか。

辛島 僕たちがジャズをこよなく愛していた時代の音。同じCDもあって、それで聴くのと、これだけ違うもので、なおかつジャズの音はこっちだよねって感じです。

僕はレコードプレーヤーを持っていないから、持っている人の所で聴いたけど、みんな同じ意見でしたね。あのレコードを見た時に僕の生徒さんは、このレコード買って、これからプレーヤーを買いにいきますと言っていた。音元出版に感謝・感激ですよ。ジャズの存在を示してくれた。

あのLPは宝もんですよ。レコードを出すのは30年ぶりくらい。86年の「トランスパーランド」以来かな。とにかくレコードは、音がまるで違う。空気感ですかね。若い時は気がつかなかったけど、ジャズはこうして聴くもんでしょう(笑)。レコードに針を落として大きなジャケットを見る、あの楽しみが蘇った気がします。

analog50号×新宿PIT INN50周年記念アナログレコード『I Love.../辛島文雄』

――では、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

辛島 闘病中で、いつまでピアノが弾けるかどうかは自分でも分からない。でも弾ける限りは、1日でも長くピアノを弾ける状態にして、聴いてくださる皆さんに1曲でも楽しんでいただければ、自分の人生は本望だな、そういう想いしか、今は思いつかないです。

奇跡が起こらないとも限らないけど、もし回復しても、後1年余りもすりゃもう70歳。若いころのようなバリバリの演奏はもうできないし、だから今ある自分で可能な限り弾いていきたい。ピアノ弾けないと、僕なんか存在価値がないからね。

最近は自分のピアノがすごく好きなんです。こんな状況なので、今のピアノ、今までなかった僕を1日でも長く皆さんに聴いてもらいたい、というのが願いでもあるし、希望でもあります。

もう練習もできないし、ジョージ大塚さんとのライヴの時もぶっつけ本番。それがいいんですよ。他のメンバーが何考えているから分からないから、「ああ、そうなったの。そっちの新鮮さの方がいいね」なんてね。曲も決めていないだから(笑)。

これはジャズミュージシャンの特権でね。ああそうかと、どんなセッションも阿吽の呼吸がないとうまくいかないし。食い違いもあるけど、それとの比率で阿吽の呼吸があった時が多いと嬉しいです。でも、食い違っても、“ふーん、それで”って感じだから今は。前は食い違うと“冗談じゃない!”って感じで、お前、何考えているの?みないな。その感覚がどんどん自分の中から消えて行く。

ほんとに1日でも長くピアノを弾ける状態にして、期待をしていただける方々に、本当に感謝という言葉しかない。全てのみなさん、スタッフ、主催してくれる人、聴いてくれる人。そういう気持ちがピアノに少しでも表れれば嬉しいって感じですかね。月並みですが(笑)。

でも、僕も最悪の時に比べるとやっと少しずつ食べれるようになって体重も2キロくらい増えたし、治って行く気もします。抗がん剤を入れることは病気と立ち向かっている感じがするんです。抗がん剤は本当につらい。よくそんな中でピアノ弾けてアルバムの収録ができたな、って感じ。でもその苦しさよりアルバムを作る嬉しさの方が強かったんですね。こんな感じで、レコーディングの時は一番苦しかったけど、一番いいものができた。人生の不思議さをすごく感じますね。

――長時間に渡り、ありがとうございました。

『マイ・フェイヴァリット・シングス/辛島文雄』
2016年6月29日発売
PILM-0006(CD)
2,500円(税抜)
ピットインレーベル Mシリーズ
発売・販売元:ピットインミュージック/配給:ディスクユニオン

<収録曲>
1. マイ・フェイヴァリット・シングス (Richard Rodgers)(10:09)
2. ジニーン (Duke Pearson) (07:02)
3. イット・マイト・アズ・ウェル・ビー・スプリング(Richard Rodgers) (07:04)
4. ジンジャーブレッド・ボーイ(James Edward Heath) (05:57)
5. 黒いオルフェ(Luiz Bonfá) (06:48)
6. サトル・ネプチューン (Bobby Hutcherson) (10:47)
7. チャンズ・ソング (Herbie Hancock) (07:12)
8. ソー・ニア、ソー・ファー (Tony Crombie) (07:16)
9. ニュー・ラグ (Fumio Karashima) (06:08)
<演奏メンバー>
・1/6:辛島文雄(Pf)、岡崎好朗(Tp)、岡崎正典(Sax)、井上陽介(B)、楠井五月(B)、高橋信之介(Ds)
・2/3/8:辛島文雄(Pf)、池田 篤(Sax)、岡崎好朗(Tp)、岡崎正典(Sax)、楠井五月(B)、高橋信之介(Ds)
・4:辛島文雄(Pf)、岡崎好朗(Tp)、岡崎正典(Sax)、井上陽介(B)、高橋信之介(Ds)
・5:辛島文雄(Pf)、日野皓正(Tp)
・7:辛島文雄(Pf)、楠井五月(B)、高橋信之介(Ds)、渡辺香津美(Gtr)
・9:辛島文雄(Pf)、池田 篤(Sax)、岡崎好朗(Tp)、岡崎正典(Sax)、楠井五月(B)、高橋信之介(Ds)、渡辺香津美

■今後の辛島文雄ライヴの予定
2016年9月8日
「辛島文雄クインテット」
辛島文雄(P)池田 篤(Sax)岡崎正典(Sax)楠井五月(B)高橋信之介(Ds)
●新宿ピットイン
〒160-0022 新宿区新宿2-12-4アコード新宿B1
TEL:03-3354-2024
http://www.pit-inn.com/
OPEN PM7:30 START PM8:00 
\3,000+税(1DRINK付)

前へ 1 2 3 4

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE