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”梶浦サウンド”はどうやって生まれる?

梶浦由記に訊く、音楽づくりと作品との関係。『ソードアート・オンライン』等最新作を語る

2016/01/14 アニソンオーディオ編集部:押野由宇
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音楽が作品の雰囲気に与える影響の大きさ

−− 次に、放映が始まったばかりの『僕だけがいない街』という作品ですが、本作についてはどういった印象ですか?

梶浦 難しかったですね(笑) 打ち合わせの時に「これ、難しいですね」って言ったら、音響監督の方が「うん、難しいよ」って仰ったくらい(笑) 

(C)2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会 (C)Kei SANBE 2015/KADOKAWA

梶浦 『僕だけがいない街』という作品って、ある意味ヒーローものなんですけど、全体的に寒い空気感があって、ノスタルジックでもあり、決して明るくはないんですよね。この作品を考えた時に、これは音楽でどうとでもできてしまうといったらおかしいですけど、音楽によって雰囲気が作られる役割が大きいかもしれない、と感じました。例えば悟(主人公:藤沼 悟)は、初めに出てきた時は結構ダメ男なんです(笑) けれど、実はすごく正義感のある人で、物語のキーとなる問題に命がけでぶつかっていく。だから、音楽をヒーローものらしい熱血に持っていくこともできてしまう。これしかない、ということがないので、難しいなって。

−− 確かに、どこに軸を置くかで作品の雰囲気が音楽に大きく影響されそうですね。

梶浦 基本的には作品の中に漂っている、どこか陰がある感じ、一定した沈んだ色合いといったものを全篇に流さないといけないな、と。あと、『僕だけがいない街』には色んな人が関わってくるけれど、物語は主人公である悟の一本道なので、つまりは悟の音楽でいいんだな、と思って作っていました。

−− 『ソードアート・オンライン』などのファンタジーとはまた異なる、日本を舞台にした一種のタイムリープものだけに、絵などの要素と音楽のバランスが難しいのではないでしょうか?

梶浦 絵柄が良い意味で昔風な感じで、すごくストーリーと合っていて、そのノスタルジックな感じを出したいな、と。でも、悲しくし過ぎてもいけない。あんまりひなびてしまうと、作品のエッジのある感じが消えてしまう。そんなに特別な音楽が必要な作品ではないんですよ。音楽が前に出る必要はないので、後ろにいた方がいいんだけど、ちょっとさじ加減を間違えて音楽の中の色彩の配分を間違えると、すごくイメージが変わっちゃうな、という怖さがありましたね。元々、すごく原作が好きだったので、私自身も放映を楽しみにしています。

今のほうがずっとライブが楽しい

−− 梶浦さんはライブも積極的に行っていますが、ライブに対する想いをお聞かせください。

梶浦 アマチュアだった頃はよくライブしていましたが、今思うとその頃のライブって、自分が作曲した音楽を聴いてもらうための場だったんですよ。他にそうした場がなかったからライブをしていたので、好きでも嫌いでもなかったんです。

作曲家というものになってからは、段々とライブ以外でも自分の曲を聴いていただくことができるようにもなって、ライブはご無沙汰していました。けどある時、何人もボーカルを立てるような歌のライブの企画をいただいて、面白いからやってみようってなったんです。そうしたら、今やっていることをお客さんに聴いてもらえて、直に反応が返ってくる楽しさに遅まきながらハマってしまいました。自分の曲を演奏したら、目の前にいる人が幸せそうな顔で聴いてくれる、こんな贅沢なことって天国にもないんじゃないかなって思うんですよね。本当に嬉しいなって。仕事というよりは、ご褒美といった感じでやらせてもらっています。


−− 3月21日には『 Yuki Kajiura LIVE Vol.#13 〜featuring SWORD ART ONLINE〜』をご予定されていますが、このライブはどのようなものになるのでしょうか?

梶浦 実は作品縛りのライブって、今回が初めてなんです。これまでは今まで梶浦由記名義やFictionJunction名義で作った曲の中から、何かをやるっていう形だったんです。外に出ているだけで2〜3,000曲はあると思うので、非常に分母が大きくて、予習も大変だったし、選曲するのも大変だった(笑) 今回は4枚組のCDの中なので、予習も選曲も比較的やさしい(笑)  今から、とても楽しみにしています。

−− ありがとうございました!

◇ ◇ ◇


ある作品に対して、自身が理解を深め、関わる人達との連携を欠かさないことで、梶浦サウンドはあれほどの深みを得ている。ほんの一部の作品について伺った僅かな時間の中でも、人々を魅了するその理由の一端を垣間見ることが出来た。

アニソンオーディオ誌では、梶浦さんの作曲や音作りに対しての考え方、ハイレゾの捉え方、音楽を楽しむということについてなど、本記事とはまた違った内容をお伝えする予定だ。こちらも是非楽しみにしていただきたい。


Infomation
『ソードアート・オンライン ミュージックコレクション』をリリース
アニメ『ソードアート・オンライン』のために作曲された、過去未収録音源も合わせた全131曲が収録された4枚組CDがリリースされる。初回生産限定盤には2015年2月1日に行われたイベント『ソードアート・オンライン Sing All Overtures』の中で披露されたライブステージの映像を完全収録したBlu-rayディスクが付属。キャラクターデザイン原案のabec氏による描き下ろし豪華デジパック仕様となる。


『ソードアート・オンライン ミュージックコレクション』
発売日:2016年1月17日
価格:¥4,860(税込/初回生産限定盤 SVWC-70111)
¥4,104(税込/通常盤 SVWC-70116)



『 Yuki Kajiura LIVE Vol.#13 〜featuring SWORD ART ONLINE〜』を開催
13回目を迎えるライブは、初の作品縛りによるステージが展開される。『ソードアートオンライン』より厳選された楽曲で構成される本ライブは、ファンならもちろんのこと、そうでない方にとっても楽しめる濃密な時間になること請け合いだ。全国2箇所、3回に渡って行われるので、ぜひ足を運びたい。

〜スケジュール〜
2016年3月21日(月・祝) 開場 16:00 開演 17:00
場所:東京国際フォーラムホールA
2016年3月26日(土) 開場 17:15 開演 18:00
場所:大阪 NHKホール
2016年3月27日(日) 開場 15:15 開演 16:00
場所:大阪 NHKホール
【お問い合わせ】
東京公演:キョドー東京 0570-550-799
大阪公演:キョドーインフォメーション 0570-200-888

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