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”梶浦サウンド”はどうやって生まれる?

梶浦由記に訊く、音楽づくりと作品との関係。『ソードアート・オンライン』等最新作を語る

公開日 2016/01/14 11:05 アニソンオーディオ編集部:押野由宇
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梶浦 『ソードアート・オンライン』は、最初にプロモーション・ビデオ(PV)の音楽を作ったんですよ。まず原作を読んで自分なりのイメージを作って、それから脚本とPV映像を見せていただきました。それから、この時は細かな打ち合わせの前だったんですが、まず音楽を作ってお届けしたんです。それで絵と音楽を合わせてみた時に、ちょっと音楽が重すぎたかなって思っちゃったんですね。

(C)2014 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAOU Project  (C)川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project

『ソードアート・オンライン』の音楽を作るにあたって最初に一番悩んだのは、作品の絵が軽やかで可愛らしいのに対して、特に始めの方のエピソードが割と重いので、その中でどのくらいまで音楽も重くするのか、でした。少しだけ重く、シンフォニックにして作ったつもりだったんですけど、PVと合わせてみたら、自分ではその絵の軽やかさとちょっと合わないような気がしたんです。

後で監督に、「あれ、ちょっと重かったですか」って聞いたら、「いや、あの話は結構気持ち的に重かったりするので、あのくらいで丁度いいですよ」って仰っていただけて。そこからBGMを作り出したんですけど、最終的に打ち合わせて作った主人公のテーマ的な曲が第1話でダーンって流れた時に、テンポ感と重さが丁度良かったなって自分で思えたんですよ。それですごくホッとしたのが印象に残ってますね。

−− ストーリーや絵だけでなく、作品に携わる方のお話なども楽曲に反映されていくわけですね。

梶浦 劇伴を作る時は、世界の空気感が一番大事と考えていて、イメージとしてこのくらいのものが作りたいという自分の中で決まっている器があるんです。全体の音圧や広がり、感情がどこまで高まるか、テンションは、色彩は、温度は、高さは、厚さはこのくらいで…というその器をどうやって音楽で満たすか、という感覚なんですね。そのために、色んなイメージソースをいただいて曲を作るんです。原作や脚本の他にも、背景の絵とかもその世界観がどのくらい暗いか明るいかといった印象が変わる大事なところなので見せていただいたりして。

けどやっぱり、最終的には第一話で、絵と音楽と演技と演出と、そういった全部が合わさったところで見ないと、本当に大丈夫だった、っていう確信は得られないですね(笑) いつも「よし、このくらいだろう!」と自分の中ではかなり決め込んで作るんですけど、第1話を見て、全部が渾然一体となって良い雰囲気になっていると、すごくホッとします。

−− そうすると、逆にホッとならなかったこともあったりするのですか?

梶浦 例えば、ある作品で戦うシーンが多かったりすると、バトル用の曲をいくつも書くんです。全体の戦いのテンポは大体このくらいだろうと想定して、そこからちょっと遅いものとか、もっと濃い戦いのものとか、切羽詰まった早めの戦いのものとか。それで、実際にそういったシーンで使われている音楽が、自分が思っていたものと違うことがある。そうしたら、「あー、この作品の戦いのテンポはもっと遅かったんだ」「もっと重心を落としておけばよかった」とかいうことが、たまにあります(笑) それは私だけではなくて、絵を作っている人達にとっても、合わせてみたらこっちの方が合うみたいに、全体の中で予期しないことが起きるんですね。

−− 作り手の皆さんが、放映される映像を見て一喜一憂されるわけですね。

梶浦 実際には確認のために、できあがった映像は先に見ることができるんです。けれど不思議なことに、そうして見るのと、放映の時に見るのは何となく違うんですよね(笑) なので、いただいた映像も前もって見るんですが、特に最初の方の放映はなるべくリアルタイムで見るようにしています。もちろん毎回は難しいので、後の方は録画したりもしていますが、全部見ています。映画の場合は映画館に見に行きますね。

−− 『空の境界』でも毎話、劇場に足を運ばれていたとうかがっています。

梶浦 それも試写ではなくて、お客さんがいる時に一緒に見たいんですよ。皆が息を呑んだり、シーンとしたりする……それを体感したいので、チケットを買って並んで入っています。

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