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【開発者特別インタビュー】

“世界初”ドライバー搭載イヤホン・オーディオテクニカ「CKRシリーズ」が生まれるまで

公開日 2014/04/21 11:00 インタビュー/中林直樹 構成:Phile-web編集部
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中林:ではまず、今回の大きな注目点である、上位機種「ATH-CKR10」「ATH-CKR9」に搭載された“世界初”の「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」について詳しく教えてください。

“世界初”「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」とは
− 低歪み・高磁束がポイント



小澤:まず、ふたつのドライバーをプッシュプル駆動するというのは元々ピュアオーディオスピーカー用に開発された技術で、過去に搭載されたスピーカーも存在していました。ただ、ユニットの前後に磁気回路が剥き出しになってしまい外観を損なうので、あまり普及はしませんでした。しかしイヤホンの場合は、ドライバーがまるごとハウジングに入ってしまうので見た目は問題にならず、メリットのみを享受することができます。

「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」の構造ですが、φ13mmのダイナミック型ドライバーユニットを、向かい合わせるかたちで配置しています。このふたつのドライバーユニットが一緒に動くというのが最大のポイントですね。

平野:一緒に動く、というのは具体的にどのような感じなのでしょうか?

小澤:ドライバー1とドライバー2は同時に動くのですが、同じ方向に動くのではなく、片方のドライバーには逆位相の信号を入力することで、互いに逆方向に動くしくみになっています。たとえばドライバー1の振動板が空気を押し出して前方に動いたとき、ドライバー2の振動板は後ろ側に引くかたちになります。「押す − 引く」という動作が組み合わさった「プッシュプル」駆動というわけです。


「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」の駆動イメージ図


平野:つまり、ふたつのドライバーユニットが一緒に動くことで、2倍のパワーが得られるわけですね。

小澤:一般的に、ドライバーユニットは空気を押し出す側に対して引っ込む側の動作が苦手で、動きが鈍くなりがち。しかし「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」では、空気を押し出す側の音圧が、反対側のドライバーユニットの引っ込む力を後押しするため、優れたリニアリティを実現しています。逆位相動作となるため、歪みも低く抑えられます。

そしてこの方式を採用したいちばんの理由が「ドライバーの高効率化」です。カナル型イヤホンは耳に入れるタイプのものなので、ドライバーを大きくするにはどうしても限界があります。シングルドライバーでマグネットを大きくすれば磁束密度は稼げますが、ボディが大きくなり、装着感が悪くなってしまうのです。

しかし、「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」であればふたつのドライバーを搭載できるため、高磁束・高駆動力の確保が可能です。感度も通常102〜103dB/mWのところ、「ATH-CKR10」は110dB/mWあります。ダイナミック型のイヤホンでここまでの感度を持っているモデルは、おそらくないと思います。

平野:以前小澤さんにお話しをうかがった際、いちばん印象に残ったのは「音を聴くんじゃなくて、振動を感じるんだ」と仰っていたことでした。今回の「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」も、まさにそういうものだという印象がありますね。音色というよりは、歪みがなく駆動力が高いという、ドライバーの素の力にフォーカスするという姿勢が、非常に小澤さんらしいなと感じました。


中林:「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」はダイナミック型ドライバーですが、「ATH-CKR10」「ATH-CKR9」の開発にあたり、BA型ドライバーの採用は考えなかったのでしょうか?

國分:企画段階でも、BA型を採用しては?という意見は確かにありました。しかし色々話していくうちに、やはりダイナミック型ならではの表現力の豊かさは魅力的だな、と。「“音楽をよりいっそう楽しむためのイヤホン”を作るには何が必要か」を考えたとき、ダイナミック型という選択肢に至るのは自然な流れだったと思います。

BA型ドライバーの特徴は音の立ち上がりやレスポンスの良さと言われますが、「ATH-CKR10」や「ATH-CKR9」を聴いてみると、そういった良さも十分出せていると思います。しかもプラスアルファでダイナミック型ならではの良さも感じられる音になっていると感じます。製作の過程でも「これはいける」という確信がありました。

平野:2つのドライバーユニットを正確に向かい合わせに配置するということで、バラツキなく生産するためのクオリティコントロールはかなり大変ではないですか?

小澤:そうですね。感度が3dBあるものを組み合わせると、ものにならないので、生産時の管理は厳しく行っています。


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