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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第73回】「ニセレゾ」疑惑の真相とは − K2HDのハイレゾは本当にハイレゾか?

公開日 2014/01/24 16:26 高橋敦
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■ビット拡張時には「ある変数」を加えることで自然な滑らかさを得る

−− アップサンプリングについては倍音構成を想定しての復元とのことですが、ビット拡張の方はどういった処理を?


鈴木さん: 例えば16bitの2点の音量レベルがサンプル点Aでは20、サンプル点Bでは40だとします。24bitへの単なるアップサンプリングでは値を単に256倍します。Aでは20×256=5120、Bでは40×256=10240です。K2HDでは256倍したものに、ある変数を加えます。その変数の数値がビクタースタジオのノウハウです。

−− 「単なるビット拡張」では諧調の荒さはそのままに拡大しただけだったものが、変数を加えることによって自然な滑らかさを得るというわけですね。

■倍音を加える「パラメータ」について

−− では話を少し巻き戻しますが、倍音を加える割合を「パラメータ」として定義していて、その設定がポイントになるというお話でした。そこについてもう少しお話をいただけますか?それは詳細な複数の項目をあらかじめ調整してまとめた、いわゆる「プリセット」のようなものなのでしょうか?

鈴木さん: そうです。パラメータの選択は楽曲ごとに行うことも可能ですが、アルバムを通してひとつのパラメータで処理することの方が多いですね。楽曲ごとに設定すると変換に時間を要するようになって作業費もアップしますし、アルバムを通して曲調が一貫している作品であれば特に、ひとつのパラメータで処理してもしっかりとした効果を得られるんです。

高田さん: パラメータの数は、欲張ると際限がなくなるので、3つ程度に絞り込んであります。その3つの中から作品に合わせてエンジニアが選択します。曲調の他に例えば変換後のフォーマットによっても効果の出方が違ってきたりもするので、そこは経験で合わせていきます。

−− パラメータを決めたらあとはK2HDのハードに任せることができるのでしょうか?

高田さん: そのままでよい音源もあれば、マスタリング的な補正をした方がよい音源もありますね。そこは実際に聴いてみての判断です。でもいまの基準パラメータはよくできていますよ。アルバムを通して同じパラメータで平均的に良い結果が出ます。それをベースに気になる箇所があれば調整するという感じです。


ここまでで、技術面というか理屈はおおよそおわかりいただけたのではないだろうか。ここからはK2HD技術の意義、それをどういった意識や意図で使っているのか、使っていくのかといったようなことについてお話を伺ってみた。e-onkyo musicの黒澤氏からのお話も含めて、現状のハイレゾ配信の課題にまで話は及んだ。


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