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“待望の新素材”開発の裏側に迫る

PCOCCを超える? 注目の新銅素材「PC-Triple C」開発者インタビュー

2014/01/23 編集部:杉浦 みな子
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■ポイント1:古河電気工業の特別なOFC素材を採用


まずは使用されているOFC素材だ。PC-Triple Cに採用されたOFCは、普通の4NグレードのOFCとは異なっている。これは古河電気工業で製造している特殊なOFCで、20μ以上の大きさの異物を全て取り除いているというものだ。

「この特殊なOFCは、もともとは電子用・時計用など10μサイズの細い導線を作るために開発されたものです。導線の径が細くなればなるほど、製造中に異物が入っている部分で切れやすくなってしまうので、細引きできるように開発しました。通常のOFCは最大で0.05mmほどしか細くできませんが、このOFCであれば0.015mmまで細くできます」と芥田氏は語る。

なお、PCOCCでは普通のOFCを採用していたとのことで、PC-Triple Cの方がより高純度なOFCが使われていることとなる。

■ポイント2:連続して鍛造する「定角連続移送鍛造法」

続いて鍛造方法だ。PC-Triple Cは、PCOCCとは異なり単結晶素材ではないため、結晶粒界を持つ。鍛造未処理のままでは、結晶構造および粒界が縦に並んだ構成となり、信号がスムーズに流れにくい。

鍛造未処理の状態での断面図。結晶構造および粒界が縦に並んでいる

この点をカバーすべく、PC-Triple Cでは一定角度/方向で小圧力で数万回連続鍛造することにより、結晶同士をつなげて連続化させる「定角連続移送鍛造法」を採用している。連続で叩くことによって、結晶構造および粒界を横方向に流し、信号を妨げる空礎を抑えるのだ。鍛造の際には、素材の50%(Sq比)まで小圧力をかけるという。

定角連続移送鍛造法を行うことで、結晶構造および粒界を横向きにならしていく(左→右へ。右は50%(Sq比)鍛造後の導体断面)


伸線後導体(5.3Sq)の導体断面写真。このように結晶構造および粒界が横向きに揃ったミルフィーユ状になり、信号がスムーズに流れるようになる
一体どうやってこの連続鍛造方法を思いついたのか? 矢口氏は「テレビ番組で、銅を鍛造して鍋を製造するシーンを流していたんです。それを見ながら、銅を叩いていったら内部の結晶はどんどん横に寝てくる、それはケーブルでも使えるのではないか、と思いついたんです」とコメント。なお芥田氏によれば、「連続鍛造を実現するために、元々使用していた機械を活用して、連続鍛造できる専用の機械を作りました」とのことだ。

さらにPC-Triple Cは、定角連続移送鍛造法処理された本体をケーブル細線に伸延加工したあと、使用される導体の太さ(Sq)にあわせて、それぞれ特定の温度/時間管理により焼鈍を実施する。これによって銅結晶同士を癒着させ、連続した結晶にしていくという。

矢口氏は「PCOCCも日本製でしたが、今回もやはり『日本製』であることにこだわりました。PC-Triple Cも、日本の“匠の技術”で実現した素材です」と語った。

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