HOME > レビュー > 【第40回】PCOCC製造中止でこれからどうなる? ケーブルメーカー3社に突撃取材!

[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第40回】PCOCC製造中止でこれからどうなる? ケーブルメーカー3社に突撃取材!

2013/03/29 高橋敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■衝撃の「PCOCC」製造中止発表! オーディオケーブルはこれからどうなる?

先日、古河電気工業が、同社独自の金属素材「PCOCC」の製造および販売を中止すると発表した。このことは当サイトでも発表当日に報じられ、大きな反響を呼んだ(関連ニュース)。PCOCCはオーディオケーブルの導体素材として活用されており、音質的な優位性の高いものとして有名だ。それが近い将来使えなくなるということで、オーディオファンの間に衝撃が走ったわけだ。もちろん僕にも衝撃が走った。

さて、オーディオケーブルはこれからどうなるのか?

そこで今回は「絶対領域:特別編」として、PCOCCを採用したオーディオケーブルを展開している主要ブランドのうち、アコースティック・リバイブ、サエク、オヤイデ電気の3社にメールおよび直接のインタビュー取材を敢行し「PCOCC製造中止について」のお話を伺ってみた。本連載として今までにない形ではあるが、各社から得られた回答を見ることで、影響の大きさと今後の展望を探っていきたい。

■「PCOCC」の実力・オーディオ的優位性をおさらい

まずは、ご存知の方には改めての説明は不要だろうが、PCOCCの基本的なところを確認しておこう。

PCOCCの名称は「Pure Cupper Ohno Continuous Casting」の略。日本語では直訳ではなく、その意味するところをわかりやすく伝える「単結晶状高純度無酸素銅」という呼び名が一般的だ。ちなみに「Ohno」とはこの素材の開発者である「大野」篤美氏の名前に由来する。

その長所は、ずばり高純度であること。一般的な銅素材は多数の結晶から構成されており、その結晶粒界(結晶と結晶の隙間)に不純物が入り込んでしまうのは避けがたかった。しかし特殊な製法によって結晶構造を単一化された単結晶銅であるPCOCCには結晶粒界がないので、そこに不純物が入り込むことがない。よって高い純度を実現できる。高純度な銅素材は優れた導電特性を持ち、オーディオケーブル用素材として最適なのだ。

PCOCCを採用したケーブル各種。左から順に、アコースティック・リバイブの電源ケーブル「POWER SENSUAL」、オヤイデ電気のオーディオ用屋内配線「FF-20」

実際にケーブルとしての実用性を確保するためには、柔軟性を持たせるためのアニール処理(焼き鈍し)が施されるが、その処理を経たものは「PCOCC-A」と呼ばれる。一般的な銅はアニール処理の際にも不純物が混入しやすいのだが、PCOCCの場合は前述の理由からこのアニール処理の際にも不純物が混入しにくい。つまりPCOCC-Aの優位はさらに大きくなる。

伊Carot Oneの「ERNESTOLO」日本限定モデルは、プリアンプ部とパワーアンプ部をつなぐステレオケーブにルにPCOCC-Aを採用したサエク製のオリジナルタイプを使用している

…というように、PCOCC-Aはオーディオケーブルの導体素材として優秀であり、それを採用した製品が数多く販売されている。なので今回の製造販売中止のニュースは、オーディオ的には「な、なんだってー!?」な事態なのだ。

■アコースティック・リバイブ、サエク、オヤイデ電気に「PCOCC製造中止でどうするアンケート」を実施!

さて、PCOCC-Aを採用する製品を展開しているブランドにご協力頂いたアンケート取材の回答を見ていこう。質問内容は以下のシンプルな4つに絞らせていただいた。

【1】現在の製品ラインナップにおけるPCOCC-Aの重要度は?
【2】それらの製品にPCOCC-Aを採用している理由は?
【3】PCOCC-A採用製品の今後の生産の見通しは?
【4】今後の製品開発への影響は?


これらへの回答を通して、現状から当面、そして今後の影響までを探っていきたいと思う。では早速次頁より、まずはアコースティック・リバイブの回答から見ていこう。

次ページアコリバの回答から。PCOCCに変わる新たな導体はある?

1 2 3 4 5 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE