原田慎也

コアを守ることでブランドが生きてくる
ブランドを守るためにはコアを本気でやる
株式会社ディーアンドエムホールディングス
国内営業本部 本部長
原田慎也
Shinya Harada

「ハイファイ」「スピーカー」とともにD&Mが3つのコアと位置付ける「AVレシーバー」。昨年もマーケットは前年割れと苦戦を強いられたが、D&Mでは改めて課題を検証し、“現場力”を徹底して磨き上げることで対前年比アップを勝ち取った。2月には超弩級フラグシップ「AVC-X8500H」を投入して大きな話題と期待を提供するD&M。最前線で指揮を執る原田慎也氏にその意気込みを聞いた。
インタビュアー/竹内 純 Senka21編集部長  写真/柴田のりよし

3つの階層に明確化し
最適施策を徹底する

AVレシーバー、ホームシアターのマーケットは長らく踊り場状態にあります。

原田2017年のAVレシーバー市場は、二桁減まではいかないまでも、それに近いレベルでの前年割れとなりました。しかしその中で、D&Mでは前年アップを実現しています。その要因のひとつは、ラインナップを有効に活用できたこと。エントリー、ミドル、フラグシップの各層における施策を明確に打ち出して差別化し、営業チームも量販担当、専門店担当など各々の価格帯のターゲットを割り振り取り組みました。

フラグシップでは、これまでは他社にないスペックを備えるだけで満足してしまう面が見られましたが、それでは魅力が伝わりません。欠かせないのはお客様に体感いただくことです。そこで、優位点であるAuro-3Dを“本当の強み”にするために、昨今、ホームシアターのイベントが減少傾向にある中で、専門店におけるイベントを年末に徹底して行いました。ドルビーアトモスとAuro-3Dの良し悪しではなく、お客様に両方を比較していただき、それぞれの長所を実感していただきました。さらに大型量販店にてAuro-3Dを体感できる売り場づくりを推進いたしました。

これに対しエントリークラスでは情報の拡散が最大のテーマとなります。チャネルも量販店とEコマースが中心となり、まずは製品認知の向上を徹底しました。また、単品販売のみで乱売合戦をしても販売店様のメリットもありませんので、店頭、Eコマース共にスピーカーとのセット販売を強く訴求し、単価アップキャンペーンを実施いたしました。

エントリークラスのお客様が育っていかないと、ピラミッドの頂点にも登って行ってもらえません。

原田サウンドバー(テレビスピーカー)の伸長は目を見張るものがありますが、過去に5.1chホームシアターで楽しまれていた方が単純にサウンドバーに手を伸ばすとは考えにくい。過去のサラウンドフォーマットで止まってしまっている大勢のお客様に、最新のサラウンドフォーマットの良さをwebや店頭で訴求していくことが最優先と考えています。

エントリークラスではまた、ヤマハミュージックジャパン様、オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパン様、ディーアンドエムホールディングスの3社5ブランドとビデオマーケット様、ドルビーラボラトリーズ様、日本オーディオ協会様による合同キャンペーン「映画を聴こうプロジェクト」を展開したことも注目すべき点です。音楽では配信が当たり前となり、映像もこれからはDVDやブルーレイなどのパッケージメディアから配信に徐々に移行することが予想されます。そこで、コンテンツ会社と一緒に映像配信とAVレシーバーをどう楽しむかの提案が行えたことは大きな意義があります。また、コンペティターである3社5ブランドが、AVレシーバー市場の活性化という共通課題に対してひとつの施策を打ち出せたことも新たな取り組みであり、今後も継続できればと思っております。

ミドルクラスについてはどのような施策を実践されましたか。

原田実はミドルは単価アップの商材と捉えていて、大きな施策はありません。入口は3万円のAVレシーバーでももちろん構いませんが、そこで終わってしまうケースが少なくないのが課題です。10万円クラスの商品にすればこんな楽しみ方もできるし、音もグレードアップする。そうしたことを伝える取り組みが弱い。そこで昨年は、販売店様にグレードアップをテーマにした多くの勉強会を行いました。

昨年はAVレシーバーに対するこうした取り組みが、販売店様やメディアのご協力もあり、実を結んで前年アップを実現する大きな要因となったと考えています。

目まぐるしく変わる市場環境にどうやって打ち勝つか。これまで以上に綿密なマーケティングやその施策におけるアイデアが必要になります。

原田一部販売店様では、市場がシュリンクするホームシアターの売り場を縮小する傾向にあります。数の原理はもはや通用せず、ビジネスとして成立させ、メーカーとして生き残るためには、付加価値を備えたモデルで単価アップを図るしか手はありません。ですから、販路ごとの施策やマーケティング、売り方を徹底して考え、それぞれに適した売り方で単価を上げていくことに注力しました。このことはAVレシーバーに限った話ではなく、取り巻く環境は今後一層厳しさを増していきます。

原田慎也
われわれの本気度が伝われば、ユーザーの心は必ず動かせる

お客様は商品を買って初めて
100%の満足を手にできる

厳しい市場環境に明確な方向性を打ち出し、手応えを掴む中で、AVC-A1HD以来、11年振りとなる超弩級フラグシップAVレシーバー「AVC-X8500H」を投入されました。

原田オーディオマーケット全体で見れば、AIスピーカーなど新しいアイテムも加わり、今後の伸長が期待されます。しかし、D&Mのコアである「ハイファイ」「スピーカー」「AVレシーバー」の三本柱は決して楽観できる市場ではありません。だからといって、単純に成長分野へ軸足をシフトしてしまうようなことは決してありません。それは、この三本柱がD&Mのコアだからです。コアを守ることでブランドが生きてくる、ブランドを守るためにはコアを本気でやる、それがわれわれの事業のベースなのです。

オーディオメーカーですから、コア=クオリティサウンドを意味します。そこに徹底して取り組むことで、サウンドバーやヘッドホンのカテゴリーにも存在感を発揮しながらビジネスを広げていくことができます。今後はサウンドバーのビジネスを計画していますが、コアとなるAVレシーバーで「D&Mは本気だぞ!」というところを誇示していく。その象徴が、デノンとマランツから発売したフラグシップモデルの「AVC-X8500H」と「AV8805」です。

AVC-X8500Hの開発には、営業、マーケティング、設計、そして音決めをするサウンドマネージャーによるプロジェクトチームを立ち上げ、約2年半の歳月をかけました。サウンドマネージャーは設計段階から関わり、パーツ選びひとつにも妥協を惜しまず音質を仕上げてきました。ハードウエアはもちろん、昨今のAVアンプの肝となるソフトウエアにも磨きをかけました。

13chが納まり、壮観ですね。

原田13chアンプ内蔵が大きな特長としてクローズアップされていますが、近年、ハイファイオーディオ市場ではご年配のお客様が増え、重量のある大型製品を敬遠する方も増えており、かつては電子レンジと称されたAVレシーバーのフラグシップ機も、重厚長大が必ずしも長所とはなりません。今回は2015年に発売した当時のフラグシップ機AVR-7200Wの筐体をベースに、奥行を延ばして13chのアンプを収めました。本当によくこのサイズに収めたなというほれぼれするレイアウトで、エンジニアのアピールポイントのひとつでもあります。

エンジニアがつくりたいもの、ユーザーが待ち望んでいるものが合致するものを目指しました。ディーアンドエムの本気度、エンジニアの本気度が伝わるモデルです。決して右肩上がりの市場ではありませんが、われわれが過去に販売したフラグシップ機「AVC-A1HD」やセパレートタイプの「AVP-A1HD」「POA-A1HD」を愛用されていた潜在ユーザーに、この本気度を伝えられれば心を動かすことができると思います。

先ほども申しましたがAVC-A1HD以来11年、2010年にミッドクラスのAVアンプ・AVC-4310をベースとしたDENON創立100周年記念モデル「AVC-A100」を発売して以来8年が経ちました。その多くのお客様に訴えるためにも、まずはこのフラッグシップモデルに共感いただける販売店様とタッグを組み、過去のモデルとの比較視聴イベントなどデモンストレーションに時間をかけて丁寧に魅力を伝えていきたい。われわれの本気度を伝えられるのは“現場”しかありません。

非常に大きな意義を備えた商品ですね。

原田時間はかかりますし近道はありません。昨今、販売店様が手間ひまをかけ、いろいろな取り組みに果敢にチャレンジされています。われわれメーカー営業も、販売店様を通してユーザーとの接点を重要視していきます。

AVレシーバーの取り扱いを止められたり、ホームシアタールームを活用されていなかったり、ハイエンドオーディオに完全シフトされた販売店様も多数いらっしゃいますが、AVC-X8500Hのプリアンプとしての性能を有効活用するなど、既存のハイファイオーディオのビジネスとの共通項も少なくありません。ホームシアタービジネスの再構築を図るにはまたとないチャンスです。

また、AVレシーバーには私たちの三本柱のひとつであるスピーカーが不可欠です。B&W、DALIという2大ブランドを擁し、Audioquest、Kimberkableなどのケーブルを含めたトータルコーディネートでお客様に力強く訴えていきます。B&W800シリーズや700シリーズなど、ハイエンドモデルのスピーカーを提案する大きなチャンスでもあります。お客様はいい買い物をして、そこでようやく100%の満足を手に入れることができます。イベントは啓蒙活動だけでなく、我々の本気度を見てもらう場。そこから売りにつなげることがお客様のためであり、ご販売店のためであり、そしてわれわれメーカーのためであるのです。

皆が本気にならないといけませんね。メーカーが本気で商品をつくる。販売店様は本気で売り場をつくる。ユーザーが本気で買う決心をする。そうでなければ厳しいマーケットを鼓舞できません。モノが売れることで業界がハッピーになります。決して守りに入ることなく、前を向き、実りあるアクティビティに徹底して投資を行っていきます。D&Mの“本気度”に是非、ご注目ください。

新世代のフラグシップを謳う最高性能と最新機能を備え、2月に発売されたAVレシーバー「AVC-X8500H」。13chにおよぶモノリスコンストラクション・パワーアンプの搭載も大きな話題を集める
(画像をクリックして拡大)

デノン
https://www.denon.jp/jp

マランツ
http://www.marantz.jp

◆PROFILE◆

原田慎也 Shinya Harada
1962年9月13日生まれ、55歳、1985年 日本コロムビア株式会社入社、デノンコンシューマー株式会社分社後の2003年 販売企画部長、2011年 デノン、マランツの営業部門統合後は東日本営業部長、2014年6月より現職、好きな言葉は「ピンチの後にチャンスあり!!」。

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