タイムトラベル能力が遺伝する家系…? “今この瞬間”のかけがえのなさを教えてくれる感動作
ミヤザキタケルサブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2013年製作の『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』をご紹介します!
◇
『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』
(配信:U-NEXT)
発売・販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
『ラブ・アクチュアリー』『パイレーツ・ロック』などの監督作や、『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』などの脚本家としても知られるリチャード・カーティス監督作。イギリス南西部で家族と仲良く暮らす青年ティム(ドーナル・グリーソン)は、21歳の誕生日に父親から一家の男性には代々タイムトラベルの能力が備わっていることを告げられる。
未来へ行くことはできないが過去であれば何度でも遡れる能力を駆使して、恋するメアリー(レイチェル・マクアダムス)と結ばれるティム。その後も能力を駆使して人生をより良くしていこうとするが、能力には制約があり選択を迫られることになっていく……。
タイムトラベルを題材とした作品で、こんなにも日常に寄り添ったものがかつてあっただろうか。世界の危機を救うわけでもなし、未来を激変させるための歴史改竄を行うわけでもなし、異なる時代の相手と恋に落ちるわけでもなし……。
劇中で映し出されていくのは、気になる相手と結ばれるための情報を得たり、日常のちょっとしたミスや行き違いの修正、他者に訪れる災難の回避など、使用目的は概ね日常生活の範囲に留まっている。
そう、「タイムトラベル」というたった一つのファンタジーを除けば、私たちと何ら変わらぬ人間の営みを描いている。だからこそ、登場人物たちの心の機微にも寄り添いやすく、タイムトラベルを駆使したとて解決のできない問題に直面していくティムの心の変化にも共感を覚えてしまうはず。
むしろ、タイムトラベルという題材を用いて描いているのは、かけがえのない日常の大切さ。今ある現実やそこに宿る価値に目を向ける機会を、この作品は与えてくれる。何かを選ぶということは、同時に、何かを選ばないということ。今この瞬間にある“きらめき”や“ゆらめき”を大切に。
(C)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。
| ミヤザキタケル 1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 宝島社sweetでの連載をはじめ、WEB、雑誌、ラジオなどで、心から推すことのできる映画を紹介。そのほか、イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30 人のシネマコンシェルジュ」など、幅広く活動中。 |
- トピック
- ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ