「Wooo UTシリーズ」が実現した最薄部3.5cmという液晶モニター部は、これまでの量産型液晶テレビの常識から考えれば“ありえない”スペックだ。というのも液晶テレビの構造を見てみると、液晶パネルの背面にはバックライトがあり、さらに映像回路が配置されている。電源部やチューナー部をセパレートにしているとはいえ、それでもこの厚みに全てを搭載するのは難しい。

たとえば、液晶パネルと画面を発光させるバックライトの距離が近ければ近いほど、画面の明るさのムラ、いわゆる「輝度ムラ」が発生する。輝度ムラを抑えるためには、液晶パネルとバックライトの間に適度な距離を持たせるというのが、これまでの液晶テレビ設計のセオリーだった。

もう一つはモニター内部の冷却だ。ブラウン管ほど高熱では無いものの、バックライトや映像回路、電源回路はパソコン程度には発熱する。これを冷やすために、空気が通過するように空間を持たせないといけない。これらの対策を行いながら最薄部3.5cmという薄さの中に、モニター機能を集積するのは至難の業だ。

それを実現したのは、日立製作所を中心とした日立グループの総合力による、垣根を越えた共同開発体制だった。まず輝度ムラの原因となるバックライトには多くの技術を投じた。バックライトの光をまんべんなく行き渡らせる拡散板には、新開発の素材を使用。拡散板に使われるアクリルに含まれる拡散剤の材料や配合を工夫し、さら輝度や発色のムラを修正する補正用シートの素材選びにも工夫をして、これまでの通常の厚さのテレビを超える高画質を実現したという。

日立グループの技術力を集めて開発されたUTシリーズのパネル。新開発の拡散板を搭載したほか、補正用シート素材を工夫するなどして輝度や発色のムラを抑えている

発熱対策として、駆動回路基板を小型化できる外部電極蛍光管(EEFL)をバックライトに採用。シミュレーションを繰り返すことで、最適な状態にレイアウトした。前述した新開発の拡散板と、独自のレイアウトを施した高品質バックライトが超薄型UTシリーズのために用意されたのだ。これらの技術と、視野角が178度と広いIPSパネルを組み合わせることで、薄さを感じさせない画質を備えたUTシリーズを実現した。

次にUTシリーズの放熱機能について見てみよう。店頭でUTシリーズを見かけたら、ぜひ背面を見ていただきたい。これまで、背面がここまで美しい薄型テレビがあっただろうか、これはリビングの中央に設置しても背面が見苦しくないようデザインしたものだが、デザイン性だけを優先したわけではなく、超薄型テレビでの放熱を追求した結果たどり着いた、いわば実用の美なのだ。

下面から吸気し、上面から排気する冷却機構により、背面までフラットに美しく仕上がっている 日立の大型サーバーの冷却技術を活用し、温まった空気が自然に気流を作り、下から上へ流れる設計とした

UTシリーズのコンセプトは、壁に貼るように設置できる薄型テレビ。従来の薄型テレビのように、背面の大部分に通気用の穴を開けると、排気により壁に汚れが付いてしまう。これを少しでも回避するため、下面から吸気して上面から排気する空気の流れを作った。これにより壁を汚すのを防ぎ、薄型でも確実に液晶パネル内を冷やせるデザインに仕上げた。

この放熱技術は同社の大型サーバーと同様の技術で作られており、回路などが温めた空気が自然に気流を作り、下から上へと流れるように設計されている。この空気の流れの解析にはスーパーコンピューターが用いられたという。

では、実際の映像を見てみよう。視聴したのは主にBDソフトで、一部エアチェックしたWOWOWのライブ映像、さらにモノスコチャートなども使用した。まず一見して、薄くても画質の作り込みに一切手抜きはないと実感させられる。独自の映像回路「Picture Master Full HD」エンジンの搭載により、自然な発色を実現していることが確認できた。

視聴を行う鈴木氏

夕暮れの町並みなど、豊かな階調表現が要求されるシーンは、アドバンスドダイナミックコントラスト機能により自然に表現する。この機能は映像シーンごとにヒストグラムを使った画像認識処理を行い、シーンの特徴をリアルタイムで解析、映像を自動的に調整するもの。BDソフト『ハリー・ポッター』シリーズでは、暗部と明部が頻繁に入れ替わる場面でも的確に機能し、映像に深みと輝きを与えてくれる。

さらにXP770にはグラデーションをより美しく表示するDeep Colorの入力が可能。対応ソースがあれば、これまでよりなめらかな階調表現が可能になっている。

BDソフト『イノセンス』など、色の勢いが作品の視聴感までも左右する作品は、複数の指定色の色合い、色の濃さ、明るさを同時に調整する3次元デジタルカラーマネージメントが有効に働いていると感じた。色彩を細かくコントロールすることで、豊かな色表現を実現している。

アドバンスドダイナミックエンハンサは映像の輪郭を補正することで、くっきりとした映像を表現する。画面全体だけでなく洋画の字幕にも効果があるので、文字が読みやすいというメリットを実感した。輪郭を補正することで、映像に奥行き感が生まれるのも見逃せない。この夏のスポーツ中継も、より臨場感のある映像で楽しめるだろう。

「スーパー」「スタンダード」「リビング」「シネマティック」の4つの映像モードを用意。各視聴環境やソースによって最適なモードを選べるほか、コントラストや黒補正などを細かく設定することも可能だ

UT770シリーズは、映画をなめらかに表示する「なめらかシネマ」機能も勿論搭載。XPシリーズは、動き補間アルゴリズムを一新し映像の変換精度を向上させた 音声も高音と低音のバランスなどを細かく調整することができる

新ダイナミックバックライトコントロール機能は、画面の“光”を自在に操る機能。映像の輝度情報を細かく分析して、最適なバックライトの明るさに調整して表示する。逆光シーンや朝陽、夕陽などの表示で差が出る機能だ。そのほかに液晶テレビの定番機能となった、動きが速いシーンでの残像感を軽減する「倍速120コマ表示」や、映画をなめらかに表示する「なめらかシネマ」モードなども備える。

これら様々な映像回路と映像技術を組み合わせることで、「Wooo UTシリーズ」は超薄型ながらひと味違う映像美をユーザーに提供している。

「Wooo UTシリーズ」は前代未聞の超薄型デザインの中に、今夏の薄型テレビが搭載する旬の機能をもれなく備えている。その技術の一つ一つを知るほどに、「Wooo UTシリーズ」の先進性を実感させられる。