ECLIPSE「TD725sw」
サブウーファーという製品ジャンルは、その重要性は十分に認識されているが華々しく注目を集めることは少ない。いわば「縁の下の力持ち」の印象がある分野だ。ところが今年、サブウーファーというジャンルにありながら大きな注目を集め、「ビジュアルグランプリ2006 SUMMER」「ビジュアルグランプリ2007」などにおいて複数の賞を受賞するという、今までにない存在感を放つ製品が登場した。ECLIPSE「TD725sw」である。

TD725swが高い評価を得た理由を端的に言えば、「今までのサブウーファーにないスピード感」である。そしてそれは、富士通テンのスピーカー「ECLIPSE TD」シリーズ共通の設計思想である「タイムドメイン理論」を、サブウーファーにおいても実現するために追求されたものだ。

タイムドメイン理論とは、時間領域の再現性を高めることで原音により忠実な音を再生しようというオーディオ理論である。原音再生という目標は従来のオーディオ理論と同様だが、従来は周波数特性の向上でそれを得ようとしていたのに対して、タイムドメイン理論では時間特性に着目。その指標としてインパルス応答の向上を採用している。

インパルスというのは、振幅が無限大で時間幅は無限小、つまり、立ち上がりと立ち下がりが究極的に速い信号のことだ。この究極に速い信号に正しく追従できるのなら、それは時間特性が優れているということになる。そしてインパルスには全ての周波数の振幅と位相が含まれているので、それを正しく再生できるなら、周波数特性という面から分析しても究極の忠実性を持つことになる。これがタイムドメイン理論の中心にある考え方だ。

その理論を実際のスピーカーとして具現化するため、ECLIPSE TDシリーズでは、元の入力信号にない残響成分、スピーカー不要振動の徹底的な排除が行われている。ユニットを拡散支柱でマウントすることでエンクロージャーと機械的に分離する「ディフュージョン・ステー」、そのユニットの揺るぎない強固な足場となる重量級の鉄の塊「グランド・アンカー」、通常の箱形エンクロージャで起きるいわゆる箱鳴りが皆無の卵形エンクロージャー「エッグシェル・コンストラクション」といった設計は全て、不要振動排除のためのものだ。

フルレンジ・小口径のシングルユニット構成を採用しているのも大きな特徴。こちらのメリットは良く知られるところだろう。点音源の実現である。

それらの結果、本来再生されるべき音だけが正確に再生され、ブレのない明瞭な音象・音場を生み出せる。それがECLIPSE TDシリーズの設計思想なのだ。

さて、話を一度TD725swに戻す。

ECLIPSE TDシリーズの特徴はインパルス応答性の高さにあるわけだが、その点、つまり音の立ち上がりと立ち下がりの速さというところを実現するのが最も難しい音域は超低域だ。超低域を再生するには、大型ユニットを大型キャビネットに組み込んで大量の空気を動かさなくてはならないのだから、不要振動排除に困難が伴うことは想像できる。

しかしECLIPSE TDシリーズの名を冠する以上、サブウーファー以外のECLIPSE従来機と組み合わせたときに、超低域だけが遅れて聴こえるようなものであってはならない。その結果生み出されたのが、超ハイスピードを実現したサブウーファー、TD725swなのである。通常のECLIPSEスピーカーと実現手法は異なり、例えばエッグシェル・コンストラクションでないことは見ての通りだが、「タイムドメイン理論」という根幹は共通。まさにECLIPSEのサブウーファーである。

他の音域に遅れないスピードを得るのが難しかったサブウーファーという分野でECLIPSEサウンドを実現したことのインパクトは大きかった。このTD725swでECLIPSE TDシリーズを知った、または再注目したという人も多いのではないだろうか。

実際の開発の流れとしては「ECLIPSEにふさわしいインパルス応答性を持つサブウーファー=TD725sw」なのだが、逆に「あのTD725swと同じ理論に基づくスピーカー=ECLIPSE TDシリーズ」と言うこともできる。

そこで今回は、ECLIPSE TDシリーズの中でもある程度手の届きやすい価格帯の2製品、「TD508II」「TD510」を改めてチェックしてみようというわけである。