東芝<レグザ>を使いこなす Z3500Series

開発現場のスタッフに聞く「レグザ番組表・ファイン」の魅力

“REGZA”シリーズを使っていて感じる、スムーズなハンドリング感の良さを生んでいる秘密はどこにあるのだろうか?今回は同社のテレビ事業部でGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)を担当する開発スタッフにお会いして、GUI開発の背景や、開発陣の素顔に迫った。
東芝“REGZA”開発スタッフ
(株)東芝
デジタルメディアネットワーク社
テレビ事業部 地域第三部
日本担当 参事
本村裕史氏

東芝のテレビ製品の商品企画を一手に担うスペシャリスト。ユーザーからの意見や要望をピックアップし、開発スタッフへ伝える責任者。

(株)東芝
デジタルメディアネットワーク社
テレビ事業部 TV設計第四部
第一担当 主務
宮崎耕次氏

テレビの操作性に関わるソフトウェア設計全般を担当。商品企画とプログラマー、デザイナーの橋渡し役を担う人物。
(株)東芝
デザインセンター
コミュニケーションデザイン担当
主務
山根伸啓氏

「Z2000」シリーズからテレビのGUIを担当。以前は携帯電話やパソコンなど、同社他ジャンル製品のGUI開発にも携わってきた13年のキャリアを持つデザイナー。
(株)東芝
デザインセンター
コミュニケーションデザイン担当

小原隆志氏

“ちょっとタイムフェイス”からテレビのGUIを担当。東芝の録画機能付テレビのGUIを熟知するデザイナーの一人。
テレビを熟知したスタッフたちが「レグザ番組表・ファイン」の開発現場に集まった

━━テレビの操作感の善し悪しを左右する、“REGZA”シリーズのGUIはどのように設計されているのでしょうか。

本村氏:ゼロから立ち上げる商品に搭載する機能と、既に発売されている商品に追加するための機能を開発する場合とでは、それぞれに違いがあります。今回は「Z3500」シリーズを例にお話しします。“REGZA”をお求めになるお客様は、テレビに対してとても強いこだわりをお持ちな方が多くいらっしゃいます。そのため、普段からリモコンの使い心地や番組表の表示方法など、様々なご意見をいただきます。これらの貴重なご意見をベースに、バージョンアップ等で対応できる場合は機能追加も行います。その他にもいただいた沢山のアイデアが、次の商品開発にとっての“宝”になっています。次に販売店の方々からのご意見です。日頃からお客様の声を生で聞いている、販売店スタッフのご意見はとても参考になります。それらの声を集めて、当社の商品開発にフィードバックするのが営業メンバーの仕事です。これらのご意見・ご要望などが、商品企画を担当する私の元に集まってきて、それらを精査してから次の仕様のリクエストとして、GUIを開発するメンバーに伝えて行きます。

本村氏より託されたリクエストを、実際の製品に搭載される機能として落とし込んでいくことが宮崎氏の使命だ

宮崎氏:商品企画から受けた仕様要望書について、技術的な可能性を検討するのが私の役割です。仕様のリクエストについては、お客様からのご意見を元にしたものも多いのですが、一方では本村が突発的にひらめいた機能をメールで伝えてくる場合も多くあります。その内容には「これ、できる?」といった感じで、とても簡素なものもあります。中でも印象深いのが「Z2000シリーズのEPGバージョンアップ」の件ですね。あの時は本当に焦りました。このようにして集まってきた数多くの要望について、放送の仕様などを確認しながらプログラム(フロー)の流れなどを確認します。それらが確定すると、次にGUIの画面デザインを担当する山根、小原の在籍するデザインセンターへ引き継ぎます。

山根氏:デザインセンターでは、本村、宮崎より託された仕様を実際の画面に反映させていきます。例えば「レグザ番組表・ファイン」では、番組名と放送内容を一つの枠に表示する仕様になっていますが、ここで番組名と放送内容を同じ文字サイズや文字色で表示してしまうと、見づらくなります。番組表でもっとも重要なのは「番組名」ですので、それが一番見やすくなるようにコントラストを強くして目立たせます。次に放送内容の説明は文字のコントラストを番組名よりも落として、少し控えめに配置します。けれども一方で放送内容のコントラストを下げすぎてしまうと、今度は文字が見づらくなります。この「目立たないけど読みやすい番組情報」を実現するまで、何度もトライアルを繰り返してきました。

小原氏:デザインセンターはGUIのデザインを作り上げても、そこで仕事が終わるわけではありません。むしろデザインがあがってからの方が、仕事は忙しくなるかもしれません。GUIの画面はいったんパソコンで作成したものを、次にテレビに書き込んでテストします。テレビへの移植を済ませたら、今度は社内・社外のモニターを使って実際に操作を行ってもらい、チェックを行います。社内モニターといえどもテレビにはまったく関係ない部署の人がテストをします。社外モニターになると、お子様やお年寄りまで幅広い年齢の方がテスターになります。その間、私たち開発スタッフはまるで運動会で活躍する自分の子どもを見守るような心境で、いつも緊張しながらテストの結果を待っています。


小原氏は東芝初のHDD内蔵テレビ“ちょっとタイムフェイス”「LH100」シリーズから、テレビのGUIを担当している、同社の録画機能付きテレビの操作性を熟知したエキスパートの一人だ。一方の山根氏は同社製品のユニバーサルデザインにも関わるなど、エルゴノミックス(人間工学)に強いデザイナーである。ややもすればエンジニアの“独りよがり”に陥りやすい開発段階の仕様について、ユーザーとしての目線から見つめ直し、バランスを調整するのが彼らの役割となる。

テレビで番組録画を手軽に楽しむための番組表をつくりたかった

━━みなさんが“REGZA“シリーズのGUI開発でご苦労されてきた点を教えて下さい。

本村氏:テレビの操作性を高めるためには、GUIなどソフトウェアが優れているだけでなく、やはりお客様が真っ先に触れるリモコン自体の使い勝手にも配慮が必要になります。「Z3500」シリーズでは録画機能を強化しました。それに伴なって、録画番組の操作ボタンをリモコンに配置しました。ご存じのように「Z3500」シリーズは本体だけでは番組録画ができませんので、これらのボタンは録画用の外付HDDを接続した場合に使われるボタンです。HDDを接続していない場合を優先するならば、リモコンのフタの裏側に配置することもできました。しかし、「Z3500」シリーズでは録画機能を使っていただいてこそ、真の魅力を味わっていただける製品であると考え、リモコンについても録画・再生機能をより便利に使っていただけるようデザインしました。ちなみに、通常は録画番組の再生時には「レグザリンク」ボタンからメニューを呼び出して、外付けHDDを選択しますが、「Z3500」ではリモコンの「再生」ボタンを押すだけで、最後に再生した番組を自動的に再生する便利な機能を備えていますので、ぜひお試しください。

宮崎氏:私はやはり手軽で便利な録画機能を実現した「レグザリンク」です。LAN HDDでは、録画時には、事前にユーザーがフォルダを作成して、番組を仕分けて保存できますので、こちらを活用して「映画」や「朝の連ドラ」や「月9」など、同じジャンルのタイトルだけをまとめて管理することができます。大容量のHDDを使っている時などは、録画番組が増え、後から番組を探すのが大変になりますが、この機能をつかえば整理整頓も簡単に行えます。

山根氏:私は「レグザ番組表・ファイン」だと思います。電子番組表の両端を見ていただくと時刻の表示部分が早朝から深夜まで、1時間ごとにグラデーションで色を変化させています。朝から昼間は暖色系、夕方から深夜にかけては寒色系と、時間経過をわかりやすく表示しています。

◆AM7:00-PM0:00
◆PM1:00-PM6:00
◆PM7:00-AM0:00
◆AM1:00-AM6:00
「レグザ番組表・ファイン」では番組名や放送内容を見やすく表示して、番組表としての「使いやすさ」にひときわこだわりが込められているという。番組表の左側に表示される時間帯は、1日を6時間ごとに4分割し、時間の経過とともに色のグラデーションに変化を付けている。1日の中で番組が放送される時間帯が直感的に伝えられるよう、デザイン面での細かな気配りも盛り込まれている(各写真は拡大します)

小原氏:番組表の画面は隅々まで気持ちを込めてデザインしました。例えば番組を選択すると画面の最下部に放送内容が1列表示されます。「レグザ番組表・ファイン」では番組名と放送内容を同一の枠で表示するとお話しましたが、ミニ番組などでは表示枠が小さいので、放送内容を確認できない場合があります。そういった番組表に表示できない内容も、画面下部に表示することで内容を確認できるようにしています。この情報窓のサイズもこれより大きかったら、画面全部が主張してうるさく感じてしまうと思います。その「さじ加減」が難しいところでした。

山根氏:画面で変化していく情報について、それぞれに優先度をつけて見せるというのは印刷物ではできない方法だと思います。予約画面下部の表示窓には番組情報だけでなく録画先や録画残量も表示しています。これらを1画面でチェックできる点は、ユーザーの皆様に使いやすいと感じていただけるのではないでしょうか。これほどに視認性が高い番組表が作れたのも、「Z3500」が搭載する高品位パネルと高画質回路があってこそだと思います。テレビ本来の素性が良いので、私たちデザイナーもより見やすいGUIをつくることができました。

"長く使えて飽きのこないデザイン"へのこだわりとは

「Z3500」シリーズは薄型テレビの中にあってかなり先進的なコンセプトを備えているテレビだが、それでいて、使い勝手に難しさや戸惑いを感じさせないところは、筆者にとっても驚くべきことだった。しかし今回開発スタッフの方々に会って、常にユーザーの視点に立ちながら「ホンモノのテレビ」を追い求める彼らの姿勢を目の当たりにして、その理由がわかったように思う。インタビューの最後に、開発スタッフからユーザーへのメッセージをお伝えしよう。

番組予約の画面でも、番組情報やHDD残量など豊富な情報を盛り込みながら視認性の高い表示を実現している(写真は拡大します)

宮崎氏:最近ではCGや多くの色数を駆使した番組表を搭載する製品もありますが、やはり番組表にとっての基本とは、情報量が豊富で視認性が高いことであると思っています。「レグザ番組表・ファイン」に限らず、“REGZA”シリーズのインターフェースは、外観上は多少地味かもしれませんが、ユーザーの皆様に長く使っていただけるデザインを第一に設計しています。

山根氏:宮崎が申し上げました通り、GUIを派手に飾るのは簡単なことです。まるでゲームのように“ツカミ”の良い番組表は店頭では映えると思いますが、テレビは長く使う製品であり、幅広い年齢の方がご利用されます。そう考えるとテレビの備える機能はアグレッシブでも、ユーザーが日常触れる部分では、多機能さを意識させずに、手軽に操作できる方が良いと考えています。日常的で馴染みやすいGUIであることが、ひいては使いやすく、飽きのこない製品なのだと思います。

小原氏:私はノートPC、ビデオレコーダー、外付HDDと、「Z3500」に接続された、全く異なるインターフェースを持つ製品が、同じ操作感覚で扱える「レグザリンク」の機能をお薦めします。私にとってはいちばんその開発に苦労した機能ですが、そのぶんテレビの新しい可能性を本機能により広げることができたと自負しています。

本村氏:「Z3500」シリーズがここまでのレベルに進化できたのは、「Z2000」シリーズをはじめとする液晶テレビ“REGZA”シリーズの、ユーザーの皆様から多くの貴重なご意見をいただくことができたからです。例えば「Z2000」シリーズの録画機能を使っていただいた皆様からは、録画番組のレジューム機能がないことについてご指摘をいただきました。残念ながら「Z2000」では改善できませんでしたが、「Z3500」シリーズではその機能を実現できました。私たちはユーザーの皆様と一緒に「ホンモノのテレビ」を作って行けることに喜びを感じています。

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