松山 スタンダードの画質は、非常に良かったですね。アクティブアイリスの助けを借りなくて、スタンダードの画質が出せればいいのだけれども。
清水(正) アクティブアイリスの助けを借りないネイティブでコントラスト比3000対1以上を実現するのが理想だと思っています。
松山 フォーカス感の良さというのは前作譲りで今回も素晴らしいのですが、解像力の良さとコントラスト拡大の間には何か関係がありますか。
清水(正) アクティブアイリスとは関係ないですが、新デバイスを採用し、シャープネスの描き具合や、ノイズリダクション系の制御のバランスをとりながら作り込みました。
松山 アクティブアイリスの機構部の開発は苦労しましたか?
大島 機構という意味では、今回適用したアクティブアイリスを冷やすのに一番苦心しました。駆動方式のコンセプト自体はオリジナルではありませんが、静音化のための機構部で特許を出しています。アイリス単体で静音化し、加えて、構造的にも防振ゴムを使ったり苦労の連続でした。液晶パネルや光学部品の冷却には新開発の3相シロッコファンを採用し、耳障りな周波数の音を低減しています。騒音レベルは25dBとTX100よりも1dB低減しましたが、実際に耳から入ってくる音としては、1dB以上の静音化効果があると思います。
松山 シャッターが動いて、ファンもあってじゃ大変ですね。このシャッターの場合、開放と最も絞った場合との差で言うと、コントラストはもっと出る可能性もありますか?
清水(拓) やろうと思えば1万でも2万でも可能ですけど、ユーザーにメリットがなければ意味がありません。調光量は現在4倍ぐらいですが、それ以上先は特殊な用途を除いてあまり必要性を感じないし、むしろ調光単独で言ったら、自然に調光できるとか、そういう方向の技術を突き詰めていきたいと思っています。
松山 黒の表情がずいぶん良くなりましたね。感心しました。
清水(拓) 液晶パネル周辺に偏光板と光学補償素子が存在するのですが、弊社ではTX100から光学補償素子の調整に対し、他社よりも自由度の高い、分離して回転調整する方式を採っています。これまでは光学補償素子を多く使って、アクティブにどんどん液晶パネルのコントラスト低下要因をなくすやりかたをしていましたが、光学補償素子というのは、液晶パネルとの相性が重要で、導入したら、した分だけ全部性能が良くなるという魔法のものではありません。導入したことによって逆に悪さをする弊害も持っています。それを調整できるところはなるべく残し、弊害となる部分は逆に取ってしまって、光学補償素子と液晶パネルのマッチングの良さを今回改善しました。結果として、ネイティブなコントラスト、黒の色目ともに大幅に改善でき、納得のいく黒表現ができました。
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