ピエガはスイスのチューリッヒに本拠を置くスピーカー専業ブランドである。スイスの工業製品に共通する洗練されたデザインが同ブランドの人気の秘密だが、ピエガ製スピーカー最大の特徴は独自開発のリボン型ユニットを活かした音楽性豊かなサウンドにある。近年は映像ソースのサラウンド再生を視野に入れてセンタースピーカーやサブウーファーを導入し、音楽再生と両立できる良質なホームシアター用スピーカーとしても評価が高まってきた。

そんなピエガの製品を代表するのが、今春から日本市場に導入された最新のTPシリーズである。上位のTCシリーズと同様にリボン型ユニットを搭載して本格的なホームシアターにふさわしいクオリティを達成しながら、価格はミドルレンジを実現。特にセンタースピーカーとリアスピーカーは家庭用として扱いやすいサイズなので、サラウンドシステム導入の敷居も低い。

TPシリーズが共有するピエガオリジナルのLDRリボントゥイーター。滑らかで伸びのある高音域再生を可能にしている (写真は「TP3」)

TPシリーズはリボン型ユニットをトゥイーターに採用し、ウーファーとミッドレンジの各ユニットにはピエガとピアス社が共同開発したMDS技術を投入。その組み合わせによって反応の良さとスムーズなつながりを両立させていることが特徴である。同シリーズを構成する4モデルのうち、最大のTP7は6ユニットの3ウェイだが、高さを111cmに抑えたTP5は2ウーファー+トゥイーターの2.5ウェイという違いがある。ブックシェルフ型のTP3、センター用のTP4Cはいずれも2ウェイでコンパクトなサイズにまとめており、トールボーイ型の2機種と同様、とてもスタイリッシュでデザインに隙がない。

その高い質感はアルミニウムの美しい仕上げに由来するもので、そこにピエガのもうひとつの魅力がある。細部まで精度高く加工されたキャビネットは存在感をさりげなく主張しながら、インテリアにすっきりと溶け込む。薄型テレビはもちろんだが、スクリーンとの組み合わせにも好適だ。

今回TPシリーズのテストは音元出版の視聴室で行った。フロア型モデルTP7、TP5をそれぞれフロントスピーカーとして利用し、TP4CとTP3を組み合わせてサラウンドシステムを構築する。サブーファーは仕上げが美しくコンパクトな新製品PS1を用意し、BDのパッケージソフトを中心に試聴を行った。バリエーションとして大型スクリーンとの組み合わせを想定し、センタースピーカーのみ上位シリーズのTC40Cを組み込んだ試聴も行っている。アンプはミドルレンジの一体型AVアンプを使用した。


『パイレーツ・オブ・カリビアン〜デッドマンズ・チェスト』(Blu-ray)の怪物クラーケン登場シーンを再生したところ、TP7をフロントスピーカーに使用した5.1チャンネルシステムの並外れたスケール感にいきなり圧倒された。帆船の大きな揺れはまるで実物大の船がきしみ音を立てているような迫力があり、波しぶきの飛沫音は物凄い速度で耳元まで迫ってくる。そのほかの効果音も一つひとつが実在感たっぷりだが、それに加えてアップテンポで畳み掛ける音楽の流れが途切れず、その両者のバランスがとてもいい。音楽は金管楽器の重心の低い響きが強い印象を与える。

センターをTC40Cに変更すると、台詞の重心が低くなって厚みが出てくるのはもちろんだが、その効果がサラウンド成分にまで波及し、量感が向上してスケールがさらに広がることは意外な発見であった。100インチを超えるスクリーンと組み合わせる場合は、センタースピーカーのグレードアップも選択肢に入れておくことをお薦めする。

3ウェイ・フロアスタンディングタイプの「TP7」。高さ161cmのスリムなボディとポリッシュドアルミニウムの美しいキャビネットが贅沢な雰囲気を漂わせるスピーカーだ センタースピーカー「TP4C」は低域を担う10cmMDSを2基にLDRリボントゥイーターを1基搭載した2ウェイシステムを採用する 13cmMDSを2基、LDRリボントゥイーターを1基搭載するフロアスタンディングタイプの「TP5」。37型の薄型液晶テレビとの組み合わせにも優れたデザインマッチを実現している

次にフロントスピーカーをTP5に変更し、同じソースを試聴。薄型テレビとの組み合わせではTP5のサイズが視覚的にもバランスがとれてくるし、設置の自由度も高い。間接照明下で視聴したのだが、TP5のリボンが照明を微妙に反射し、さりげなく存在感を主張して美しい。

TP5ではひと回り小さな音場になるかと思ったが、意外にもスケール感の大きさはTP7に見劣りしない。音の凝縮感とスピード感が際立ち、とてもいいバランスで鳴っている。音楽のクオリティと音色の美しさにピエガならではの説得力があり、音量を上げても、小音量で聴いても、いずれもたいへん密度が高い。低音が重すぎず、部屋の影響を受けにくいことも嬉しい発見であった。比較的壁に近い設置で聴いたのだが、部屋の悪影響をそれほど意識しなくて済むのである。

このシステムでもセンタースピーカーをTC40Cに変えてみると、台詞の微妙なニュアンスがより細かく伝わってくる。『カジノ・ロワイヤル』のカジノシーンで会話にいっそうの重みが出てくることが、とても印象的であった。

いずれのシステムもリアスピーカーにはコンパクトなTP3を組み合わせたが、音色とレスポンスが揃っているので、サラウンド音場の密度は濃密で、力不足を感じることはない。洗練された外見からはちょっと想像できないかもしれないが、スケール感とエネルギーの密度感は大口径の大型システムに匹敵する。本物のホームシアターを目指すファンにぜひお薦めしたい。

【レポート】
山之内 正(Tadashi Yamanouchi)

神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、東京フィルハーモニー交響楽団の吉川英幸氏に師事。年に数回、オペラ鑑賞のためドイツ、オーストリアへ渡航。音楽之友社刊の『グランドオペラ』にも執筆するなど、趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

スピーカーシステム <フロアスタンドタイプ>
TP7
¥682,500(税込)
【SPEC】●構成:3ウェイ(低域/13cmMDS×4、中域/13cmMDS×1、高域/LDR×1) ●能率:91dB/W/m ●インピーダンス:4Ω ●再生周波数特性:30Hz〜50kHz(±2dB) ●外形寸法:190W×1,610H×210Dmm ●質量:31kg ●バリエーション:シルバーグリル仕様/ブラックグリル仕様

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スピーカーシステム <フロアスタンドタイプ>
TP5
¥472,500(税込)
【SPEC】●構成:2 1/2ウェイ(低域/13cmMDS×2、高域/LDR×1) ●能率:91dB/W/m ●インピーダンス:4Ω ●再生周波数特性:35Hz〜50kHz(±2dB) ●外形寸法:190W×1,110H×210Dmm ●質量:21.5kg ●バリエーション:シルバーグリル仕様/ブラックグリル仕様

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スピーカーシステム <ブックシェルフタイプ>
TP3
¥262,500(税込)
【SPEC】●構成:2ウェイ(低域/13cmMDS×1、高域/LDR×1) ●能率:89dB/W/m ●インピーダンス:4Ω ●再生周波数特性:40Hz〜50kHz(±2dB) ●外形寸法:190W×310H×210Dmm ●質量:7kg ●バリエーション:シルバーグリル仕様/ブラックグリル仕様

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スピーカーシステム <センタースピーカー>
TP4C
¥168,000(税込)
【SPEC】●構成:2ウェイ(低域/10cmMDS×2、高域/LDR×1) ●能率:90dB/W/m ●インピーダンス:4Ω ●再生周波数特性:50Hz〜50kHz(±2dB) ●外形寸法:510W×140H×140Dmm ●質量:6.5kg ●バリエーション:シルバーグリル仕様/ブラックグリル仕様

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スピーカーシステム <センタースピーカー>
TC40C
¥252,000(税込)
【SPEC】●構成:2 1/2ウェイ(低域/13cmMDS×2、高域/LDRリボン×1) ●能率:91dB/W/m ●インピーダンス:4Ω ●再生周波数特性:40Hz〜50kHz(±2dB) ●外形寸法:611W×187H×209Dmm ●質量:12kg ●バリエーション:シルバーグリル仕様/ブラックグリル仕様

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サブウーファー
PS1
¥189,000(税込)
【SPEC】●推奨アンプ出力:250W ●能率:24Hz-3dB/アジャスタブル ●ユニット:22cmLDB-XL Bass×1(アクティブ) ●コネクション:LIFE、LINE In、Hi Level ●ユニット:18cmMOM(R)ウーファー×2 ●外形寸法:32W×41H×36Dcm ●質量:17kg ●仕上げ:天板/ポリッシュドアルミニウム

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PIEGA Homepage  http://www.piega.jp/
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フューレンコーディネート フリーダイアル/
0120-004884