2010年上期のAVを総括するビジュアルグランプリSUMMERでは、パナソニックのプラズマテレビVT2シリーズとBDレコーダーBWTシリーズが総合金賞を受賞した。同社のホーム3D製品は2月上旬に報道発表され4月23日に発売、放送が先行する形となるが徐々にパッケージコンテンツも増えてくるだろう。半年間に渡るタイムテーブルでホーム3Dが徐々に全貌を現していくこのストーリーは見事という他ない。

VT2シリーズには、圧倒的な没入感が味わえる65型から、より高精細感が味わえる42型までがラインナップされている

パナソニックが牽引した3Dのインパクトの真骨頂は、もちろん製品そのものの高完成度にある。ここではプラズマVIERA・VT2にターゲットを絞って論を展開することにしよう。

2月上旬の時点で公開された試作機は新開発「フル・ブラックパネル」の完成度が途上にあったように思う。ところが4月に仕上げられた量産機種は欠点のほとんどを制圧し、3D/2Dプラズマとして空前の高みに到達していた。

高い完成度を目の前にして、私たちは気付いた。パナソニックにとって3Dプロジェクトはテレビ/ソース機器のアプリケーションの追加ではなく、テレビの本質にまで深く掉さしていく技術の総力を賭けたチャレンジだったのである。パナソニックが3Dに全力投球したのは、プラズマテレビがホーム3Dを実現する上で最良のデバイスであるという自信があったからだ。

第一に表示方式。今回ブルーレイとテレビ各社が採用したフレームシーケンシャル方式(左目用と右目用の映像を、それぞれ交互に表示して、専用のシャッターメガネを通して観る3D再生方式)に限らず、3Dは左目用映像と右目用映像を別々に表示し視差を利用して立体映像を表示する点で共通である。

左目用映像と右目用映像のスイッチングという点に関して、素子が開閉することによって映像をつくりだすホールド表示の液晶方式に対し、画素が明滅を繰り返すことによって映像をつくりだすインパルス表示のプラズマテレビの方が、左目用映像から右目用映像への切り替え時の二重像(クロストーク〜左右映像の重なり〜)の発生が少ないことは自明である。

 

そして画質。3D映像を高画質に表現する上で、テレビの画質上の三大要素である「コントラスト」「色再現」「鮮鋭感」は2D同様に欠かせない。とりわけ階調を含めたコントラストは、視聴時に3Dメガネを着用することもあり、立体効果を表現する上で密接な関係がある。

 
3 Dグラス「TY-EW3D10W」。前面中央に赤外線レシーバーを内蔵し、ビエラと高速連動する   左眼用と右眼用の映像を1秒間にそれぞれ60コマずつ正確に再生する

パナソニックは、昨秋モデルで40,000対1、本年初頭の「G2」の「ブラックパネル」で既にネイティブコントラスト500万対1に到達していた。パナソニックのプラズマテレビは液晶方式にあるバックライトコントロールシステムで得られるコントラストの数値とは異なり、パネル単体だけで3Dに不足ないコントラスト性能を確保できる自信が既にあったようだ。VT2の「フル・ブラックパネル」のコントラスト数値はネイティブ500万対1でG2と同様だが、これは計測限界をすでに超えているからである。技術陣が「事実上無限大」と胸を張るだけの数値を超えた完成度が表出される画に現れている。

パネルの前面板とフィルターを一体化し、外光の映り込みを抑えた。前面ガラス内で発生していた反射を無くし明所コントラストが従来の2倍に到達した。明環境でも黒が引き締まる

パナソニックはプラズマテレビが本命と確信し3D時代のディスプレイ構築に取り組んだ。当然ながら画質こそが鍵となり、プラズマならではの長所をさらに伸ばせばホーム3Dを制すると考えた。それを具現化したのが「フル・ブラックパネル」による「3D フルHDプラズマシステム」だ。

フル・ブラックパネルの着想根幹は発光効率のさらなる改善である。プラズマテレビの表示における

(1)プラズマ放電で紫外線を発生
(2)紫外線で蛍光体が発光
(3)光をパネル外に取り出す

という3ステップ全てにおいて効率の向上を果たした一方、プラズマテレビの誕生以来付きまとった予備放電と呼ばれる、すぐに明るく発光させるために薄く光らせておく技術を、暗いシーンでゼロにし、強靭な明るさとコントラストの土台となる黒表現を一挙に獲得したのである。

そして、プラズマテレビの課題であった残光の低減。フル・ブラックパネルは蛍光体の改良で全体の残光時間を1/3に収めた。VT2が採用した3D再生方式で左右の映像の重なりを封じる上で必要不可欠と認識した上での施策である。

蛍光体の残光時間の長さは残像の原因となる。残像を減らしつつ、発光量アップを図るために新しい蛍光体を採用した。発光量をアップさせながら、残光時間を3分の1まで低減した

 

 

応答速度の遅いパネルでは映像処理が追いつかない。プラズマの場合はインパルス表示のため3D映像に最適。3D対応のフル・ブラックパネルはその特性を活かして高画質を追求した

  大幅な発光効率の改善により、明→暗の順に発光。結果的に二重像を大幅に低減した。新採用の発光制御技術と3Dグラスを高精度に同期させてさらに不要光をなくしているという

こうして誕生したVT2シリーズは、ホーム3D第一号機にして高度な完成度を獲得。左右の映像の重なり等の弊害要素を封殺しつつ、明るく力強くなめらかな立体映像を描き出す。評価用に準備された3D BDデモソフト収録の『アストロボーイ』を観て、試作機の段階で散見された輪郭部に発生する左右の映像の重なりが量産機では見事に抑えられていることを確認した。こうした細部の詰めに技術陣の最終追い込みの執念を感じさせる。今後、3Dソフトが増加するほどVT2の存在感の大きさが増していくことは間違いない。

 

 

さて、日本初の3Dフルハイビジョンテレビが誕生したその傍らで、空前の高画質を持つプラズマテレビが静かに姿を現したのである。それがVT2のもう一つの顔だ。

3Dを高画質で達成するために2Dでも従来を上回る性能が必要ということは容易に理解できると思うが、先に紹介したプラズマテレビとしての基本に立ち返り、明るさやコントラストといった表現上の基本的な器の大きさを拡大しただけでなく、色再現や階調、細部の精細感等が生むディテール、と「映像の綾」の部分でもVT2が躍進を遂げたことに注目したい。

3Dで視聴する場合、3Dメガネ着用から生まれるロスを前提にしているので、2D視聴時には映像設定が自動で大きく変わる。テレビは一台でその変化に柔軟に対応するだけのきめ細かい表現幅を持たなければならない。VT2で視聴する2D映像を観ると、それらが高い次元で実現していることがわかる。BD映画ソフトが持つ映像世界の個性に緊密に寄り添い、作品の中核深く到達する柔軟さを得ているのである。

一例を挙げてみよう。仏映画『ココ・アヴァン・シャネル』だ。少女時代の孤児院の色彩(愛)を喪失した原光景に始まり、ココ・シャネルが黒を愛し、畏まった「静」の色を都会のお洒落でシックな「動」の色に変えるプロセスが彼女の半生と共に公開される。シルク、モスリン、ウールといった布地の風合いの違いや、光沢の輝く黒から光を吸い尽くした静かな黒までバリエーションの全てが映像の中にあってこそ、何故彼女が「究極の色」に魅せられたかが分ろうというもの。VT2で観る本作は、それらの全てがあたかもシャネルが手に取って愛撫しているようにそこにある。解像感、階調のきめ細かさ、色再現、ディスプレイの表現を決定する全てにわたって本シリーズが躍進を遂げた理由が理解できる。

 

すでに発売されている65V、58V、54V、50Vの4サイズに加え、46Vと42Vも追加される。最大サイズのTH-P65VT2は視野の大きさから3D再生の臨場感で勝り、有無を言わせない没入感が味わえる。同時に2D再生では従来の65Vでは得られなかった映像の密度感に驚かされた。

フル・ブラックパネルの威力であることは間違いなく、液晶方式と比較して一歩下がるとされていた精細感も発光プロセスの改善で改良されたことが伝わる。また、他のサイズもプラズマ方式ならではの画素数とバランスした陶酔的な引き込まれるような緻密な映像感覚がある。サイズ毎に映像の個性を確立したテレビとして評価すべきだろう。それぞれの製品にパナソニックが到達した技術の成果が現れている。

 

【SPECIFICATION(TH-P54VT2)】

●内蔵チューナー:地上・BS・110度CSデジタル×2、地上アナログ×1 ●主な映像入力端子:HDMI×4、D4×1、S×1、コンポジット×3、i.LINK×1 ●本体外形寸法・質量(スタンド含む):1319W×883H×387Dmm・約33.5kg

 

【リンク】
・パナソニック ビエラ 公式サイト http://viera.jp