3D映画の中でもっとも冒険的で効果的な作品の一つが『アバター』です。昨年12月にIMAX(アイマックス)劇場で観て、この作品が持つ明るく色鮮やかな映像に深い感銘を受けました。

これまで観てきた3D映像とは全く違う、新しい世界がそこにありました。画面が前に飛び出すこけおどしの映像ではなく、節度を保った形で映像に奥行き感を持たせていたのです。幻想的な空間を立体的な画と音の相乗効果で効果的に表現し、内容の濃い作品に仕上がっていました。

『アバター』のような優れた3D映像は、私たちに全く新しい楽しみを与えてくれます。立体感が加わることで、ドラマチックな表現や映像の美しさが観る者の心に刺さるようになります。この感動を家庭でも楽しみたい。そう考えるのは非常に自然なことです。それだけにパナソニックが先頭を切って3D対応のテレビ、BDレコーダー/プレーヤーを発売したことを非常に嬉しく思います。

3Dで好ましい画質を得るためにはいくつかの条件が必要となります。まず今までのテレビよりももっと明るくすること。3D映像を楽しむためには専用の眼鏡を使う必要がありますが、そこで発生する光のロスを補う必要があるからです。また、3Dの再生では左眼用映像と右眼用映像を交互に高速再生しなければなりません。そこでは短い発光で充分な明るさを出す必要があるのです。

さらに、よりきめ細かい表現ができるように緻密さを追求すること、映像の黒と白の差がさらに広くなるように設計すること、なども必要になります。それら課題がクリアされてこそ、3Dならではの「映像の華」が生まれるのです。

パナソニックは求められる条件をきちんとふまえて、一つ一つの課題を解決していきました。まず、非常に明るい映像パネルを開発しました。これは、映像を表示するための様々な要素の効率を上げることで実現したことなのです。光を有効に活用することを「発光効率の改善」と言いますが、パナソニックのVT2では前期の製品と比べて約2倍も効率を改善しているのです。

3D対応フル・ブラックパネル 左右の眼に異なる映像をそれぞれ映し出すのが3D。正確でブレのない映像でなければ3Dの醍醐味は味わえません。プラズマの特性を追求した新パネルで、高画質3D映像を実現します。


また、今回の製品では3Dテレビに付きまとう二重像を少なくすることにも成功しています。この二重像の問題は、左目と右目を交互に切り替えて映し出す3D方式に付きまとう問題です。これは左右の映像のタイミングがずれたり、互いの映像が重なり合う部分が出てくる現象です。しかし、パナソニックモデルはその現象が起こりにくい。これは実はプラズマが元来持っている特質にも起因することなのですが、新たに残光時間の短い蛍光体を開発した効果がもたらした成果だと言うこともできます。

   
フレームシーケンシャル方式 臨場感あふれる3D映像を楽しめるのがパナソニック3D。左眼用、右眼用の映像を1秒間にそれぞれ60コマ、合計120コマを交互に、高速に再生する技術を盛り込んでいます。   新高密度蛍光体 プラズマを発光させる材料の一つが蛍光体。光の出方を適切にコントロールできないとブレが発生したり、明るさが不足したりします。新材料を採用してこの課題を解決しました。   3Dグラス ノーズパッドを付け替えれば大人用にも、子供用にもなる3Dグラス。装着しながら電源のオン・オフも可能です。ふだん眼鏡をかけている人でも違和感なく装着できます。

 

実際に製品をご覧になると良く分かると思いますが、このシリーズの黒の沈み方は特筆に値します。黒が沈むことでいわゆるコントラストが格段に上昇し、黒と白の間に存在する細かなグラデーションも非常に豊富になりました。映像が持つ力を引き出すためには、黒の表現力が非常に大事なのです。そのためにパナソニック独自の技術が盛り込まれ、プラズマを発光させる蛍光体に必要となる種火をほとんどなくすことに成功しました。実力ある技術者が結集してその課題をクリアし、高品位な3D映像を映し出せるようになるとともに、従来の2D映像の品位も大幅に引き上げることに成功したのです。

私自身が今まで観てきたデモ映像の中で、特に3D効果を感じることができたのはゴルフの映像です。立体映像そのものが持つ効果が端的に分かります。例えばゴルフの球が転がっている位置や、地面の凹凸が非常にリアルに感じられるのです。パッティングの際には条件によって球の軌道がかなり変化します。そこでは、どのように曲げて打てば良いのか、ということが視聴者側でシミュレートできるのが面白い。これは、ゴルフのスリリングな面白さを一目で捉えられる良い例です。このように自然な奥行き感が出せる製品であれば、3D映画を再生しても多大な効果が得られることが想像できます。

VT2シリーズでは、2D映像の再生でも大いに力を発揮します。映画などを観てもやはり明るく鮮やかです。黒が良く出て滑らかな階調性を持っていますから、例えばナイトシーンでの微妙な明暗の表現に大いに力を発揮します。また、色の表現力もはっきり向上し、非常に自然できめ細かな肌色が出せることも確認済みです。これらの効果は、総合金賞を同時に受賞した“DIGA”DMR-BWT3000とのコンビネーションで生み出されるものであり、評価であることを付け加えておきましょう。

「ディーガ」高画質・高音質の理由

 
原画忠実再現技術 パナソニックハリウッド研究所がブルーレイを作る際に採用している技術「マルチタップ・クロマアップサンプリング技術」を導入。映像本来のディテールを忠実に再現します。   ブルーレイ3D(MPEG4 MVC) 3D映像を収めるブルーレイは2つの映像を同時に記録する必要があります。従来の仕様では収まらないので、パナソニックが新技術を提案。新しい3D対応形式が生まれました。

 
HDMI高音質化技術 ブルーレイとテレビなどをつなぐ際に使用するHDMI。デジタル信号を作る際に発生する、音質に悪影響を与える要因を取り除く独自の技術が盛り込まれています。(DMR-BWT3000)   プレミアム高音質設計 さびによる信号劣化を防ぐため、腐食に対して非常に強い金メッキ端子を採用しています。この他にも音質に良い影響を与える部品が数多く使われています。(DMR-BWT3000)

他社に先駆けてパナソニックが4月に3Dモデルを発売するというニュースを聞いたとき、そのスピード感に正直驚かされました。それは部品生産から最終的な画作りまで一貫して管理できるパナソニックならではの強味があるからだと思います。他よりも先行しているだけに、今後のさらなる製品進化も大いに期待できますね。(談)

VT2シリーズ ラインナップ   BWTシリーズ ラインナップ
65V型 TH-P65VT2 オープン価格
58V型 TH-P58VT2 オープン価格
54V型 TH-P54VT2 オープン価格
50V型 TH-P50VT2 オープン価格
46V型 TH-P46VT2 オープン価格
42V型 TH-P42VT2 オープン価格
  2TBハードディスク DMR-BWT3000 オープン価格
1TBハードディスク DMR-BWT2000 オープン価格
750GBハードディスク DMR-BWT1000 オープン価格
 

ビジュアルグランプリ審査委員長
貝山知弘

東宝で活躍後、国民的娯楽映画『南極物語』筆頭プロデューサーを務めた映画業界人。「AV REVIEW」他の幅広い媒体で執筆活動も行う。