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オンキヨーが新たに発表したデスクトップPC“E713シリーズ”は、形態としてオールインワン(ディスプレイ一体型)であるというだけの製品ではない。他の外付け機器を接続することなく、AV用途に求められる様々な機能とクオリティを本製品単体で実現している。これぞ本物のハイクラスなオールインワンだ、という主張が聞こえてくるかのような製品だ。

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画面サイズは23型ワイドで1,920×1,080画素のフルHD表示に対応。「E713A9B」は1TBのHDDやBDドライブを搭載しており、地上・BS・110度CSチューナーも2基備えているのでデジタルテレビ/レコーダーとしても使うことができる(写真はクリックで拡大)

機能的には、デジタル放送の視聴と2番組同時録画、Blu-rayの再生と録画番組のダビングが行えるほか、iPodドックを本体に搭載し、本体内蔵のスピーカーで高品位な音楽再生も楽しめるといったところが特長として挙げられる。現在、多くのユーザーが必要としているテレビ・映画・音楽といったエンターテインメントが、見事にこの一台でカバーされているわけだ。そしてもちろんパソコンとしてインターネットも楽しめるわけだから、家庭内でテレビに代わる位置、つまりリビングの中心に設置して活用するというスタイルも想定できる製品だ。

とは言っても、iPodドックを搭載したこと以外の機能としては、いまどきのパソコンにおいては際立った特長とまでは言えない。本機が他の製品にない「強み」は、それらのエンターテインメント再生機能を本当の意味で楽しめるものにしてくれる、「高品位なクオリティ」にこそある。これを実現できた最大の要因は、本機のために新たに開発されたスピーカーを搭載したことだ。

 
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新開発のプレミアムスピーカーは、E713シリーズのスリムな筐体に搭載できる形状とサイズでありながら、振動板の面積は高級スピーカーに搭載される直径10cmウーファーに相当する。長方形振動板特有の振動の乱れやモードを解消するために、振動板素材には発泡素材を採用している。発泡スチロールという身近な例で実感できると思うが、発泡樹脂は軽量かつ高剛性。さらに、成型が容易であるというメリットも活かされたのだろう。振動板は突起を持った扁平矩形状に立体成形されており、振動板の暴れ(=周波数特性の暴れ)を抑えている。

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薄さ約10mmを実現した新開発のスピーカーユニットを搭載。複数のマグネットを使用して高性能の磁気回路を実現するツインマグネット方式を採用する(写真はクリックで拡大)
薄型のユニットを、こちらも極薄設計のPC本体の筐体内部に配置している。フロントパネル底部には2基のユニットが搭載されている(写真はクリックで拡大)

振動板とユニットをつなぐエッジも、通常のロール型ではなく、同社のハイファイスピーカーで実績のある「Vラインエッジ」を採用。エッジ自体の幅を狭くできるため、振動板面積の拡大にも寄与している。

そして仕上げの要素と言えるのが、スピーカーユニットの背面が開放構造になっていることだ。本体筐体もこれに合わせて設計され、後部からも音が放出される構造だ。背面から抜けてきた音をデスク面や壁面に反射させることで、音場の広がり感を高めている。

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スピーカーユニットの裏側は開放型設計としている(写真はクリックで拡大)
背面から出た音はメッシュ状のネットを通ってPC本体後部から放出される。PCの接地面に反射させ、前に回り込ませることで音の広がり感を与える効果を狙っている(写真はクリックで拡大)

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ユニットのエッジには一般的なロールエッジに比べて、振動板の振幅をダンピングすることなく、不要な放射音(ノイズ)を低減させる「Vラインエッジ」を採用。迫力ある重低音や大音量再生に強みを持たせている(写真はクリックで拡大)
薄型スピーカーの採用により、本体も薄型スタイリッシュなデザインを実現している(写真はクリックで拡大)
 
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まずはCDからiTunesに楽曲を取り込んで再生。筆者のリファレンスであるJacintha「Lush Life」を聴いていく。音を聴いてすぐに、振動板の形状から来る音色の癖などが一切感じられないことに驚いた。この点は十分に配慮がされていることは、メーカーの製品発表のリリースなどを読んで事前に知っていたとはいえども、やはり一抹の不安を残していたが、実際の音を聴いてみて全く嫌味やクセのない音だ。

帯域バランスは中域を充実させた妥当なものだ。トゥイーターやウーファーを用意しないフルレンジ一発構成であるので、その強みを素直に活かしていると感じた。ボーカルの存在感が豊かで、シンバルの音色は鋭さを出さず、解像感を確保しながらも穏やか。低いポジションのウッドベースは、輪郭・音程感をきっちり届ける。別の曲で確認したエレクトリックベースは、くっきりと濃い描写だった。

音場はその広がり方が自然であることを評価したい。「ここから音が出ています!」といった感じではなく、本機の場合はスピーカー自体の存在感の主張を控えていることがその要因だろう。後方開放の威力がここで発揮されているものと思われる。

続いてiPodの試聴へ。パソコン本体の電源を落として、本体左側に配置された「モードボタン(入力切り替え)」でiPodを選択すれば、PCの電源をOFFにした状態でも本機搭載のスピーカーでiPodのサウンドを楽しむことができる。

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本体の右側面にスライド式のiPodドックを搭載。PCを使用しない時にはスマートに格納しておける(写真はクリックで拡大)

iPod接続時には、PCの電源を投入していない状態でもiPodの充電や、高品位スピーカーによる音楽再生が行える(写真はクリックで拡大)


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本体左側裏側に画面の明るさやボリュームを調整するためのボタンを配置。本体電源オフ時に内蔵スピーカーでiPod再生が楽しめるようになるモード切替ボタンもこちらに設けている(写真はクリックで拡大)

モード切替ボタンでiPodを選べば電源オフ時のiPod再生が行える(写真はクリックで拡大)

CDと同じ曲を聴いてみると、音場に引き込まれる感触、没入感が非常に高い。背景の静けさが高まり、それによって個々の音色も引き立ち、定位の精密感も出てくる。画面の映像をオフにしたことによる心理効果もあるかもしれないが、それならそれで意味はある。

BD再生の音質は「ヱヴァンゲリヲン新劇場版・破」の冒頭を中心に試聴。エントリープラグ(コクピット)に満たされている溶液にボゴボゴと気泡が現れる、その水音にまず頷かされる。一般的なテレビの内蔵スピーカーで聴くと、大袈裟に言えばペットボトルの中の水泡程度のものに聞こえてしまうところだ。対して本機のそれには厚みと質感があり、映像から伝わってくるものと聴こえてくる音との間の違和感が少ない。

CD試聴時に感じた中域の充実はこちらでも発揮され、台詞の厚みはやはり、一般的なテレビ内蔵スピーカーのそれとは比較にならない。映画の台詞というのは、同じ俳優・声優であっても、テレビドラマのそれとは感触が異なるものだ。その感触の違いをしっかりと伝えてくる。台詞中心で派手な効果音などのない場面でも映画らしさを感じられるというのは、大きなポイントだ。

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E713シリーズのサウンドを試聴する筆者

そして効果音が飛び交う場面でのサウンドの描写も納得の域に達している。シャープネスは強調しないので過度な派手さがなく、音数を損ねることもない。“仮設5号機”が鉄板に囲まれたトンネル内を疾走する際の、機体と鉄板のぶつかる音の質感描写もそれらしく決まっている。トンネルの広さと壁の質感を感じさせる響きも逃さない。

なおBD再生では、別ページで紹介するDTS Premium SuiteTMの機能をオンにして、特にDTS Surround Sensation UltraPCTMを用いた際の効果が大きい。そちらのレビューも参照していただければと思う。

総じて本機のサウンドは、音楽再生においては安価で小型な外部スピーカーなどに対して、映画再生においては一般的なテレビの内蔵スピーカーに対して、音質における明確な優位性を持っていると言える。これより上を望むなら、それなりの価格やサイズのスピーカーやアンプを揃えたシステムを組む必要がでてくるだろう。つまり、オールインワンPCとしてはこれ以上を望めないレベルに達しているということだ。

リビングやプライベートルームにはオールインワンPCをスマート、かつスタイリッシュに設置したい、でも音楽も映画もハイクオリティで楽しみたい。そういったユーザーの願いに応えてくれる、ベストな製品の誕生である。

 
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オールインワン デスクトップPC
E713A9 ¥OPEN <店頭販売 ベースモデル> 
E713A9B ¥OPEN <店頭販売 Office Personal 2010バンドルモデル> 
DE713 ¥99,800(税込)〜 <ONKYO DIRECTモデル> 

>>ONKYO DIRECT「DE713」の製品情報
>>オンキヨー ホームページの製品情報

【E713A9 SPEC】●OS:Windows(R) 7 Home Premium 64bit/32bit ●CPU:ターボ・ブースト・テクノロジー対応 インテル(R) CoreTM i5-650 プロセッサー 3.20GHz ●HDD:1TB ●光学ドライブ:BDドライブ ●ディスプレイ:23型 ワイドTFT液晶 1920×1080ドット ●チューナー:地上デジタル・BS・110度CS ●サウンドシステム:DTS Premium SuiteTM対応 ●スピーカー:内蔵ステレオスピーカー(定格出力5W×2) ●インターフェース:USB×6、eSATA×1、IEEE1394×1、HDMI×1、光デジタル×1、センタースピーカー/サブウーファー出力 ほか ●消費電力:標準時 約75W ●外形寸法:587W×480H×183〜345Dmm ●質量:約10.1kg