バッテリーはハウジングのカバーをスライドして挿入する

実物を手にしてまず気になったのは、電池を入れる場所はどこだろうということだった。収納場所はハウジング内のはずなのだが、そのケースのふた部分が見当たらない。

同席していた編集者に教えてもらったところ、左右両側のハウジングにある継ぎ目の部分が片側のみ、スライドオープンする仕組みになっていた。ラインを無駄に増やさない、よく配慮されたデザインだ。

使用電池は単4アルカリ乾電池1本。それで約40時間稼働できるという。経済的であるし、全体の小型軽量化にも大きな意味があるところだ。

まずは音楽を再生せず、ノイズキャンセリングも有効にせずに、ただ装着してみた。

試聴環境は音元出版の試聴室。もちろん十分な遮音・防音が確保された部屋だが、何の音も再生していない状態ではエアコン稼働音がやや気になる。秋葉原の雑居ビルであるため、ドアを開け放てば、それほどではないが屋外や他フロアからの音も入ってくる。

だが、ノイズキャンセリングをオンにしない状態でも、HP-NC22は予想以上の静けさを提供してくれた。騒音が消えるというほどではないが、明らかな低減を実感できる。素体の遮音性がここまで確保されていれば、ノイズキャンセリングの効果も期待できるというものだ。

装着時。フィット感が非常に良く、ノイズキャンセルを行わなくても遮音性能が高い 斜めから見たところ。ハウジング部のシルバーがスタイリッシュな印象を演出する 横から見たところ。ノイズキャンセリングがオンの時は青色のランプが点灯する

そしてノイズキャンセリングをオン。期待通りの効果である。かすかに残っていたエアコンのゴーという稼働音もほぼ完全にキャンセルされた。それ以外の音も気にならない。

この種の製品の基本として人の声の帯域はキャンセルされないが、ヘッドホン自体の遮音性によってそこもかなり抑えられている。人の声と同じ帯域にも騒音はあるわけで、ここも重要だ。「ヘッドホン素体の遮音性が土台にあってこそのノイズキャンセル」というのは、そういうことでもある。総合的に見て、非常に高いノイズキャンセリング能力を持つと言ってよいだろう。

しかし音質がイマイチではお話にならないわけだが、その点も問題ない。

ノイズキャンセリングのオフの状態ではベースがやや飽和気味で若干聴きづらかったが、ノイズキャンセリングをオンにすると一変。低域の抑制が効き、ベースラインは適度な肉厚となった。低域に限らず全体に贅肉がほどよく落とされ、整理される印象だ。解像感も十分だが高解像度と言うほどではなく、太めの力強いタッチでの描写だ。音楽を細部まで聴き込むというよりは、その全体像を感じ、楽しむのに適している。

秋葉原の喧噪の中でも十分なノイズキャンセリング効果を実現できた

最後に、試聴室を出てビル前の大通りでノイズキャンセリングの最終テスト。細かなことは言うまい。当日は交通量が非常に多く、しかもすぐ側でビルの建設工事が行われていたが、そのような状況でも見事な効果を発揮した。そう言えばその威力は伝わるはずだ。

Vraisonも含めてだが、オーディオ分野に新たに参入するマクセルが、若年層にとってオーディオの入り口となっているDAPに向けた製品で勝負してきた。そしてそれが高いクオリティを見せてくれた。これはオーディオ界全体にとっても明るい話題なのではないだろうか。今後の製品展開にも期待したい。