文/福田 雅光

ラックスマンのプリメインアンプは、純A級アンプ「L-590AX」を頂点に、AB級アンプ、純A級アンプ、そしてAB級の505シリーズという4グレードのラインアップがされている。

今期の新製品「L-505uX」は、2007年春に開発された「L-505u」をグレードアップさせた、トランジスター式プリメインアンプ“Xシリーズ”第3弾製品である。ラックスマンの入門モデルであるが、最新の設計を導入したことで、音質性能は上級モデルに迫る魅力を備えた。

L-505uX
L-505uX

505uXはAB級動作100W+100W(8Ω)出力のパラレルプッシュプル電力増幅部を装備。旧505uのフロントデザインを継承しながら、横幅を467mmから440mmに変更している。

大きなポイントは、メカ式ボリュームから電子制御アッテネーター「LECUA」をこのクラスに初めて採用したことだ。また、独自の高音質、負帰還方式「ODNF」に高S/Nバージョン2.3を搭載したことも挙げられる。

LECUA   ODNF
「LECUA」
 
「ODNF」はバージョン2.3を搭載

加えて、EI型ハイレギュレーション電源トランスと、10000uF×4本の大容量コンデンサーによる高慣性電源部を採用。出力経路のリレーは今回、並列動作として直流抵抗を低減させ、ダンピングファクターは180に向上。最高級セパレートアンプと同じ高音質セレクタースイッチICによるセパレーションや、クロストーク性能の強化も実現している。さらに、リアのスピーカーターミナルは左右に分離させ接続しやすくなった点にも触れておきたい。

イコライザーアンプ入力はMC/MMに対応。RCA入コネクター間のピッチを18mmとして、プラグ径の太い高級ケーブルも装着しやすいよう配慮したほか、バランスXLR入力端子も装備。このように、回路構成、筐体構造、配線レイアウトなどはXシリーズの上位モデルと同様の技術が投入されている。

背面端子部
背面端子部の様子

なお、電源ケーブルにはラックスマンの標準ケーブルである平行構造の「JPA-10000」を付属。デザインカラーはシャンペンゴールドも選ぶことができる。

同社独自機能についてもう少し詳しく見ていこう。メカ式ボリューム(可変抵抗器)は、抵抗体に接触するブラッシで位置を変化させ音量を調整するが、高級機で使う高性能製品の調達が困難になってきた。また構造による限界もあるため、これを打開するため開発されているのが電子化による高性能アッテネーターによる方法だ。

ラックスマンのLECUAは、最高級プリメインアンプ「L-590AX」用に抵抗列構成をコンパクト化することに成功したが、本機ではディスクリート構成ではなく抵抗アレーを使う方法を開発した。

聴感的に高SN、解像度が高く、帯域の広い性能を備えていることは、トータルした音質から確認できる。この部分、機能はプリメインアンプ、プリアンプでは、極めて重要な信号経路に直列に、レベルコントロールをする回路である。

本機のリモコン
本機のリモコン

また、ラックスマンのアンプで最も大きな特徴になっているのはODNFといってもいいだろう。これは「オンリー・ディストーション・ネガティブ・フィードバック(Only Distortion Negative Feedback)」の略だ。

ODNFの“NF”は「負帰還の」意味で、出力された信号の一部を入力に戻し、帯域特性や歪を改善する便利で強力な働きを持っている。現在、ネガティブフィードバックについてはメリットもデメリットも研究が進み、低負帰還、ノンフィードバック方式などの製品もみられるが、ODNFでは、出力信号全体の内容を戻すのではなく、問題となる歪成分だけを分離してフィードバックすることが特徴だ。これにより、広帯域、スルーレート(瞬間的応答スピード)の高速化など有利な特性を備える。

今回、ODNFは回路初段、セカンドステージをパラレル回路構成とした高SN化バージョンを採用しているのが特徴である。なお、この方法は最高級モデルL-590AXでも使われている。

内部構造
機体内部の構造

実際に音を聴いてみると、その音質は従来のモデルに比較しても、また、客観的なこのクラスのアンプの性能としても、極めて斬新な音を感じる。

強力に引き締まる中低域、低域のダンピング、コントラストの高い音像描写。ニュートラルに一定したバランスで帯域が広く、明瞭、明確な構成力、繊細な解像度で冴える高域のニュアンスも備えている。

極めてシャープで曖昧な様子がなく、緊迫感のある、高速レスポンスで精度の高いサウンドを表現するのが魅力である。

すっきりとした抜けのいい高域、力強いダイナミックな低音。この音は大変強力な内容だ。ラックスマンはXシリーズが狙い目になるだろう

 
筆者プロフィール
福田雅光  Masamitsu Fukuda

東京三鷹生まれ。1976年「季刊・オーディオアクセサリー」の創刊に参加。アクセサリーを重視したオーディオシステムの構築、という同誌のコンセプトの確立に大きな影響を与えた。オーディオケーブルの重要性に早い段階から注目。試聴レポートは高級機器と同じ姿勢で一貫。小さなアクセサリーにも大切な意味があることを書く。検証をベースにした厳しい視点が、読者との信頼関係を結ぶ絆になるというのがポリシー。