“Pure Transmission(完璧な伝送)”を目標に掲げ、ソースの情報を損失しない高品位な音質再生を目指すフルテック。長年のノウハウと同社独自の技術がふんだんに盛り込まれたハイエンドアクセサリー群は、多くのオーディオファンから高い評価を得ている。今回は「映像」と「音」両面でハイクオリティな伝送を実現する「HDMI-xv1.3」をフィーチャー。貝山知弘氏がその実力をレポートする。
レポート/貝山知弘

現在、コンシューマーAV機器の能力をフルに発揮するためには、HDMIによる機器間のデジタル信号伝送が必須のものとなっている。BD/DVDプレーヤー/レコーダーとAVアンプ間、AVアンプとディスプレイ間との接続にHDMIケーブルが使用されているのはすでに衆知のことである。HDMIとは、〈ハイ・デフィニション・マルチメディア・インターフェイス〉の略で、ケーブル一本で高精細の映像と高音質の音声を同時に伝えることができる便利な伝送方式だ。具体的には3系統のデジタル映像信号(色差信号かRGB信号)と、1系統2chずつのPCM音声信号の通信を、高速で高信頼性の〈シリアル差動通信〉で行っている。連結機器相互の双方向の制御もできるという賢さも持つが、その分、ケーブルやコネクターの構造は複雑で、接続のピン数は19もある。

HDMIの伝送は、極めて高度な技術に支えられており、厳密な規格の上に成り立っている。そこでは、各導線の役割、プラグやコネクター上での配列はもちん、ケーブルのプラグの寸法までが規格化されている。これを決めたのは、HDMI用のデバイスを開発したメーカー、シリコン・イメージ社と、HDMIを採用したAV機器の開発に携わったメーカー各社で、当初から世界共通の規格としてスタートしている。HDMIのケーブルを販売するには、シリコン・イメージ社のATC承認テストを受ける必要がある。今回取り上げたフルテックのHDMIケーブル「HDMI-xv1.3」は、このテストに合格した正規のケーブルだ。

HDMIケーブル
FURUTECH HDMI-xv1.3 ¥29,400(1m/税込)
ラインアップ:1m/2m/3m/5m/8m/10m(ver.1.3b準拠)
       12m/15m/20m
(ver.1.2a準拠)
製品データベース][フルテックの製品情報ページ


HDMIケーブルの内部は、複雑な構造をとっている。本機が採用したのは業界最多の5層構造。細かく言えば、信号の伝送導体はコア(グループ)ごとにPE(ポリエチレン)シールドの上に発泡PEシールドを施した2層構造をとり、それを3層の絶縁層で覆っている。こうした構造は、電磁界からのハムやノイズの混入を防ぐと共に、振動を抑えることに役立っている。振動はHDMI伝送の大敵で、振動によるジッタ(信号の時間軸方向の揺れ)は、画質、音質そして安定性を損ねる原因となる。本機の振動対策は万全で、プラグ全体を頑丈な金属(亜鉛/アルミ合金)で覆い振動を軽減している。本機の導体は贅沢な構成。メインとなる4グループ8本の導線には、導電性が高い太めの24AWG純銀コーティングμ-OFCを採用し、映像信号の高画質化、音声信号の高音質化、ジッタの低減化を計っている。その他の導体は用途により、細目の24AWG純銀コーティングμOFCや、μ-OFCを使用している。いずれも超低温処理を施し導電性を高めた優れた導線だ。

HDMI-xv1.3のケーブル構造図(クリックで拡大)

HDMI-xv1.3は、いずれも、1080pのハイビジョン信号を伝送できるが、長さによって、対応するバージョンは異なる。1〜10mのケーブルは最新のバージョン1.3bに対応しており、12〜15mのケーブルはバージョン1.2aまでの対応である。

テストは自宅の視聴室《ボワ・ノワール》で行った。テストに使用した機器は以下の通り。今秋発売の最新モデルなどを用いた。

プロジェクター MITSUBISHI LVP-HC6000
EPSON EH-TW4000
BDプレーヤー SONY BDP-S5000ES
BDレコーダー PANASONIC DMR-BW930
AVアンプ PIONEER SC-LX90
プリAVアンプ DENON AVP-A1HD
プリAVアンプ ONKYO(Integra) DHC-9.9

プリアンプ使用時のパワーアンプと、スピーカーは、下記の常設製品を使用した。

スピーカー VIENNA ACOUSTICS T-3G
VIENNA ACOUSTICS T-3
サブウーファー ECLIPSE TD TD725sw
パワーアンプ TECHNICAL BRAIN TBP-Zero
Accuphase P-1000

それぞれ複数のモデルを使用した理由は、HDMI接続時の互換性を確かめるためである。テストしたHDMIケーブルxvシリーズは、プレーヤー/レコーダー〜アンプ間で1mと3mの製品、アンプ〜プロジェクター間で10mと15mの製品を使用してみた。結局、プレーヤー/レコーダー2機種、AVアンプ3機種、ケーブル4機種のスクランブルテストとなったので、テストは延々5日間に及んだ。

HDMIのテストは、まず、接続時の感触から始まる。嵌合の感触のいいケーブルが好結果を得られることは、いままでの実験で経験済だ。今回テストしたケーブルは、いずれも接続時の感触がいい。5機種の機器全てで、HDMI端子との嵌合がきちっと決まった。ケーブルと端子間の緩みが生ぜず、接触が不安定になることがない。ケーブル自体は硬めだが、1m以上あれば、上下にねじった使用でも、嵌合はしっかりとれる。

プラグ部はガッシリしたアルミ合金製。接触も安定している
プラグ部には金メッキを施し、伝導性を高めている

特筆していいのは、どの機器との組み合わせでも映像、音声の破綻が生じなかったことだ。普通、10m以上のケーブルでは、音が途切れたり、映像が不安定になったり、横引きノイズが画面上に出たりするなどの現象が起きがちなのだが、今回のテストでは、10m、15mという長尺ケーブルでも、そうした現象は一切起こらなかった。天吊りのプロジェクターを使用している人がHDMIケーブルの選択に苦慮しているという話は、しばしば聞いている。そんな人にとって、本機の長尺モデルは福音となることが多いはずだ。長距離の伝送では、途中に信号の増幅器や補正機器を加えたりすることが多いが、こうした方法は費用がかかるばかりでなく、補正のプリシュートが出やすいなどというデメリットも考えられる。1本のケーブルで問題が解決できるならそれに越したことはないのだ。

本機は画質、音質とも優れたケーブルである。画質と音質のバランスがよく、どちらのクオリティも安心して勧められる出来映えである。ケーブルに飛び込むノイズは無視できるほど少なく、十分な輝度とコントラストと色彩度が得られ、色のバランスも崩れない。解像度は十分に高く、HD映像の緻密な映像を余すところなく伝えてくれる。音声の再生では、力感と分解能が高い次元で両立している。十分なfレンジ、Dレンジを伝送できる能力を持っており、フラットに整ったエネルギーバランスはごく自然な音調、音色を表出できる。

画だけ、音だけで評価すれば優れた高級ケーブルはあるが、画と音の両方とも評価できる製品が意外と少ないというのが実情だ。画も音も平均点を越える本機は、その意味で、最もHDMIに相応しいケーブルであると言っていいだろう。長尺モデルでも画質・音質の劣化が少ないことも他機に勝る点だ。勿論、画質の変化は皆無ではなく、映像のDレンジ(明るさとコントラスト)、遠近感、質感などが僅かに低下する。しかしこれはプロが目を凝らして初めて判るという程度の微細な変化である。

本機は、コストパフォーマンスに優れた高級ケーブルである。内容や性能に照らし判断すると、疑いなくお買い得の製品だ。


■執筆者プロフィール

貝山知弘 Tomohiro Kaiyama

鎌倉原住民。早稲田大学卒業後、東宝に入社。東宝とプロデュース契約を結び、13本の劇映画をプロデュースした。代表作は『狙撃』(1968)、『赤頭巾ちゃん気をつけて』(1970)、『化石の森』(1973)、『雨のアムステルダム』(1975)、『はつ恋』(1975)。独立後、フジテレビ/学研製作の『南極物語』(1983)のチーフプロデューサー。音楽監督を依頼したヴァンゲリスとの親交が深く、同映画のサウンドトラック『Antarctica』は全世界的なヒットとなった。94年にはシドニーで開催したアジア映画祭の審査委員をつとめる。『ボーン・コレクター』のフィリップ・ノリス監督、『ハムナプトラ』の女優レイチェル・ワイズとの親交を深める。カナダとの合作映画『Hiroshima』でのアソシエート・プロデューサー。アンプの自作から始まったオーディオ歴は50年以上。映画製作の経験を活かしたビデオの論評は、家庭における映画鑑賞の独自の視点を確立した。自称・美文家。ナイーヴな語り口をモットーとしている。


【問い合わせ先】
フルテック(株) TEL/03-5437-0281
フルテックのサイト→http://www.furutech.com/

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レポート/斎藤宏嗣

フルテック(FURUTECH)は、1988年、古河電工のPCOCCケーブルを海外に供給する販売会社として創立された。その後、国内を含めたワールド・ワイドに展開する企業に発展、独自の製品及び部品で多くのオーディオファンに知られるようになった。現在、アナログ信号及びデジタル情報伝送ケーブル、電源ケーブルや電源ボックス、壁面コンセントなどの高品位製品がカタログにラインナップされるが、それらの関連部品はマニアやコンポーネント機器メーカーにとって不可欠な存在となっている。近年デジタル・システムには欠かせない存在となってきたHDMIケーブルにも早くから参入、独自の世界を構築している。同社の製品は、長年培われたテクノロジーやノウハウを駆使して開発されるが、高品位素材をベースに独自の加工処理技術を施し聴感・視覚上の独自のテイストを演出している。

近年、オーディオシステムの周辺環境をアクセサリーで整える動きが盛んである。これらは各種伝送系ケーブルに始まり、コンポーネント機器のセッティング・ツールに及ぶが、最近、最も注目されているのが電源供給環境の整備である。


この度、フルテックは電源関連パーツやアクセサリー製品の豊富な経験と技術をベースに、まさしく「理想」とも言える電源ケーブル「Alpha PS-950-18」を開発した。

電源ケーブル Alpha PS-950-18 ¥189,800(1.8m/税込)
製品データベース][フルテックの製品情報ページ

【SPEC】
●導体:α-導体(68本/0.127mm×7)×3、外径:2.8mm
●絶縁体:特殊なポリエチレン(赤、黄、自然色)、外径:5.4mm
●シース-1:RoHS指令適合 カーボンパウダー混入柔軟性PVC(内層)
●シース-2:RoHS指令適合 柔軟性PVC(外層)、外径:16.5mm
●シールド:0.12mm α-導体撚合せ編組
●仕上がり外観:ナイロン糸編組、外径17.5mm Approx
●最大導体抵抗:4.5Ω/km
●最小絶縁抵抗:2500 MΩ_km
●耐電圧:AC.3000 V/1 min

通常、高品位電源ケーブルは導体や接触部の純度や構成、メッキ処理などがポイントになるが、新製品は新しい視点から生まれている。

新素材α-導体(OCC素材)の高密度導体を採用し、伝送特性に影響をもたらす絶縁材には、振動と外部からのノイズを遮断し柔軟性を合わせ持ったカーボンパウダー混入の高機能PVCを用いた2重シース構造。これによりハイスピードとリアルな音の再生を実現した。

Alpha PS-950-18。フルテックの最高級電源プラグ/インレット「FI-50M/FI-50」を使用している プラグ/インレット部分は、特注で20AモデルのFI-52シリーズに変更することも可能だ


接続プラグ部には、発売以来好評を得ているフルテックの最高級プラグ「FI-50M(R)」と「FI−50(R)」を採用。プラグのハウジング部はステンレス合金からの削り出しで、内部には制振性のある特殊樹脂を採用。外側はカーボンファイバーで仕上げた3層構造とした。また、ケーブルクランプ部分には重厚で制振特性を持つ特殊金属を採用し、強力な制振効果を発揮する。

プラグの電極部には高伝導性を有する純銅を採用。ロジウムメッキ処理をした上でαプロセス処理を施した。さらに、独自の「ショートリング機能」を装備。プラグ内部のブレード部と導体の接続部から発生する乱れた電磁不要輻射を吸収し音質を向上させている。

不要な輻射ノイズをリング効果で吸収しアースに落とす「ショートリング機能」を採用
ボディ部はナノ・サイズのセラミックパウダーとカーボンパウダーを混入したナイロン+グラスファイバーで電磁振動を効果的に吸収
ハウシング部にステンレス合金削出しを用いることでダイナミクスが向上する

ケーブルは通常使用している状態でも常に電磁不要輻射が発生し、電位の乱れが生じるものだ。中でもいちばん電磁不要輻射が発生する部分は、ケーブルを曲げたり折ったりしている部分。Alpha PS-950-18に採用された「ショートリング機能」は、それらの電磁不要輻射を「リング効果」で吸収しアースに落とすことにより、電位を安定させることができる。さらに、プラグに採用されているFI-50シリーズのステンレス&カーボン・ハウジングはボディ内部のブレード部と導体の接続部から発生する乱れた電磁不要輻射や電磁振動を吸収するため、音質を向上させる効果は絶大だ。この電源ケーブルは、圧倒的な静寂と入力ソースの細部まで克明に描く忠実度をもたらしてくれた。

ハウシングのカーボンは6層のクロスカーボン仕上げ

特殊形状で接触面積を向上させ確実なケーブルホールドを実現

コードクランプ部にもステンレスパーツを採用した強力な制振構造。スタビライザー効果も発揮。


従来、本格的な安定化電源による電源環境の向上が最善とされてきが、新製品ではそれらの効果を遙かに凌駕。あたかも発電所とコンポーネントがダイレクトに結ばれたような爽快な世界が出現した。更に、安定化電源のような独特のキャラクターがなく、コンポーネント機器に高純度の電力エネルギーが供給される瑞々しい印象である。

 

壁面コンセントから電源ケーブルの電力の流れが高品位化されると、次なるテーマは電力を各コンポーネント機器に分岐するコンセント・ボックスである。一般家庭で用いられているテーブルタップでも電力の分岐は可能だが、再生音の品位にこだわると多くの課題が出現する。現在、高品位コンセント・ボックスとして高く評価されている製品は、インレットと多数のコンセントを単純に結んだ構成である。一部に電力エネルギーに重畳する外来雑音を積極的に取り去るフィルター(低域通過型)を装備した製品もあるが、理論的な正しさに反して聴感的に好ましい評価は得られていないことが多い。その原因がフィルターと周辺環境にあることを解明したフルテックは、新たに高品位フィルターを搭載した「f-TP615」を開発した。

電源タップ f-TP615 ¥73,500(税込)
[製品データベース]
*発売時には製品カラーが変更される場合があります

【SPEC】
●電圧:125V AC 50/60Hz
●電流:15A
●コンセント:6口
●本体材質:アルミ合金
●外形寸法:約250W×127H×70D mm
●質量:1.2Kgs Approx.

50/60Hzの通過帯域の品位を重視して外来雑音を抑圧する新開発のラインフィルターは、インレットと一体化されたAC1501として登場。加えて、ボックス内の電磁的な環境を整える電磁波吸収材GC-303や新開発のアーキシャル・ロッキング・システムによる処理を施している。ボックスは6Pタイプ。コンセントは、独自の開発になるα導体・金メッキ処理の接合部/ナノサイズのセラミックスを混入したナイロン+グラスファイバー支持部/ポリカーボネート材のカバーで構成されている。高剛性の筐体部を含め全ての金属部には、超低温処理と特殊電磁界処理によるフルテック独自のαプロセス処理が施され、内部配線にはα-22ワイヤー(3.8mm平方、12AWG)の極太ケーブルが採用されている。

 
写真内左にある黒いブロックが新ラインフィルター。内部配線にはα-22ワイヤーを採用し、電源の流れをスムーズにしている。本体底部には同社の電磁波吸収剤「GC-303」を使用。非接触でのノイズカットを可能にした  

筐体底部から電源コンセントのセンターを押し上げることで、各コンセントの固定性を高め振動によるノイズを低減する「アーキシャル・ロッキング・システム」。その制振効果は一目瞭然だ

従来のフィルター付きコンセント・ボックスの再生音の印象として定着しているイメージは、フィルター効果は認められるものの帯域の拡がりや音の立ち上がりが甘く生気や躍動感に欠ける、というものである。しかし、f-TP615の再生音は、それらの固定概念とは対照的なパターンで、フィルター・タイプの新しい世界を構築している。広々としたレンジの拡がりと帯域内に濃やかな音の粒子を一杯に詰め込んだ高密度なフラット・バランス、音の立ち上がりに対する反応もハイスピードで躍動感も充分。新たに開発されたオーディオ・グレードのフィルターの効用も絶大で、雑音レベルで決まる音が立ち上がる底が深く、独特の静寂感がもたらされる。電磁波吸収材やコンセントの中心をボルトで押し上げるアーキシャル・ロッキング・システムも明快な音像定位とクリーンな音場再現に大いに貢献している。デリケートなプレーヤーやプリアンプなどにとくに有効な製品と言えるだろう。

■執筆者プロフィール

斎藤宏嗣 Hirotsugu Saito

武蔵工業大学電気通信科卒。電機メーカーのエンジニアとして高周波回路とVTRの開発を担当ののち、オーディオ専門誌に執筆を開始する。エンジニアとしての経験を生かした管球アンプの製作で注目を集める。デジタルオーディオにも実験段階から深く関わり、「デジタルオーディオの第一人者」の呼び声が高い。ソフトの録音評でも高い評価を得ており、実際に録音のアドバイザーとして関係した作品はアナログ録音時代から現在に至るまで数多い。スキー、柔道、フライフィッシング、料理、ラジコン、アマチュア無線、フラウトトラベルソやリコーダーの演奏など多くの趣味を持ち、そのどれもが趣味の範疇を超えた腕前を持っているという評判である。


【問い合わせ先】
フルテック(株) TEL/03-5437-0281
フルテックのサイト→http://www.furutech.com/

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