TEXT. 斎藤宏嗣

CAV(シー・エー・ブイ)社は、躍進を続ける中国を代表するオーディオビジュアルメーカー。1993年に創立された同社は広州市内に本社を置き、その郊外に広大な製造拠点を持つ中国のトップブランドだ。ヨーロッバやアメリカでも豊富な販売実績を持ち、我が国に紹介されて以来、多くのオーディオマニアや音楽ファンに知られるブランドとして定着、素直で自然なバランスと音色・音質のよさに加え、価格の値頃感も人気の秘密だろう。

CAVのオーディオコンポーネントは、主力ジャンルのスピーカーシステムを中心に、最近では高級管球アンプなども登場、着々とラインアップも拡張されている。

■3つの仕上げを用意するV-50シリーズ

コンパクトなブックシェルフタイプの“V-50シリーズ"には、木目調仕上げのV-50BR(ブラウン)、ピアノ塗装仕上げのV-50PB(ピアノブラック)、本体を木目ツキ板・側面をピアノ光沢仕上げとしたV-50N(2トーンカラー)の3機種があり、周囲のインテリアなどに合わせて選択できる。

V-50BR
V-50PB
V-50N

V-50BRはシリーズのベーシックモデル。その構成は、グラスファイバー材のコーンによる130mmウーファー、ピュアシルク材のダイアフラムによる25mmソフトドームの2ウェイシステムである。クロスオーバー周波数は2.5KHzで、コンパクトなエンクロージャーは全面仕上げで、リアバスレフ方式。このクラスとしては異例の大型ターミナルによるバイワイヤリング構成の入力端子は、バナナプラグにも対応している。出力音圧レベルは88dB/W/mと標準的で、アンプからみた駆動条件も良好な特性である。

V-50N。3機種の違いはエンクロージャーの仕上げのみで、内部構成は同じ 横から見たところ。ピアノブラックの塗装が美しい リアに設けられたバスレフポートは2つ。バイワイヤリングにも対応している
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■リボン・トゥイーターを装備したV-70NW

また、CAVの中核モデルとして登場したブックシェルフタイプのV-70NWは、V-50とは異なる音調を持つ注目モデル。ユニットには、デンマークを代表するメーカーであるティンファニー社製のピァレス・ブランドから、高品位タイプのNOMEXシリーズを採用。強力な磁気回路で駆動されたナチュラルパルプ材コーンによる130mmウーファーは、センターキャップを逆ドーム状として背面サポートに空気孔を設けてメカニカルノイズを抑え、ダンパーにデュポン社製を採用、理想的な中・低域再生を実現している。高域ユニットには高品位のリボン・トゥイーターを採用、水平軸方向に60度のサービスエリアを実現し、豊かな音場表現を得ている。

V-70NW。この価格帯でリボン・トゥイーターを搭載した 横から見たところ。奥行きがかなりある。主材はアフリカ産の高級材「Figured Anegre」を使用 バスレフポートは1つ。V-50と同様、バイワイヤリングに対応している
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クロスオーバー周波数4.5KHzの2ウェイ方式で、ウーファーは分割振動を抑え、トゥイーター側も素直な特性でスムーズなつながりに特徴があり、充実した音像描写が実現している。デバイディング・ネットワークは高域及び低域用を分離し、相互干渉を防ぐ本格的な構成を採用している。

エンクロージャーのサイズは185W×300H×331Dmmと奥行きのある設計で、本機の深々とした低域方向の響きの再生音を演出するポイントになっている。主材には厚手の高密度MBF材、ギターのトップボード部にも使われるアフリカ産の高級材「Figured Anegre」をツキ板に採用したリアルウッドの木目を生かした質感に特徴がある。またラウンドコーナーも滑らかな再生音に効果をあげている。エンクロージャー背面には最適位置に設定されたバスレフ・ダクト、振動に対する影響が少ない大型ターミナルを直接背板に取り付けたバイワイヤリング対応でバナナプラグの使用も可能となっている。

斎藤宏嗣
Hirotsugu Saito

電機メーカーのエンジニアとして高周波回路とVTRの開発を担当ののち、オーディオ専門誌に執筆を開始する。エンジニアとしての経験を生かした管球アンプの製作で注目を集める。デジタルオーディオには実験段階から深く関わり、現在でも「デジタルオーディオの第一人者」の呼び声が高い。ソフトの録音評でも高い評価を得ており、実際に録音のアドバイザーとして関係した作品はアナログ録音時代から現在に至るまで数多い。