ケーブルメーカーの真価は、シンプルなステレオ再生でこそ証明されよう。今回はPureAVのRCAオーディオケーブルとi.Linkケーブル。そしてスピーカーケーブルにも注目したオーディオ試聴編である。アナログオーディオケーブルとスピーカ−ケーブルは、太さの異なる3タイプの導体を用いたハイブリッドテクノロジーを採用する。またi.Linkケ−ブルは、デジタル伝送技術を活かして入念に作り込んである。i.Linkは現在4ピン・4ピンタイプのみが国内に紹介されているが、今後ハイエンド機器向けに6ピン・6ピンの発売も検討中であると聞いている。
今回のPureAVケーブルシリーズのテストは音元出版オーディオ専用試聴室で行った。再生機器のリファレンスにはエソテリック、スピーカーのリファレンスにはパイオニアの製品をそれぞれセレクトした

今回のテーマのひとつは音の味わいである。正確な再現性に加え、感性の部分で「これは!」というソノリティ豊かな表現力を求めたい。試聴システムだが、スピーカーはパイオニアの“ピュアモルトシリーズ”から「S-A4PT-VP」を使おう。TAD直系のユニットを用いた、小なりといえど希代の銘スピーカーである。プレーヤーとアンプはエソテリックのi.Link端子を搭載する高級薄型コンポ、「AZ-1」、「SZ-1」、「UZ-1」がふさわしい。なおi.Linkケーブルについては、ハイエンド機器ということで、今回6ピン・6ピンタイプを一足先に使ってみる機会を得ることができた。

試聴ソフトは聴き慣れたCDと、最新のSACDやDVDオーディオについても用意した。各タイトルごとの試聴ポイントは次のとおりだ。

まずCDのボーカル。ダイアナ・クラールの新譜は、ビッグバンドとともに聴かせるスイング感がポイント。管弦楽はベートーヴェンの「第9」の合唱を、SACDはマーラーの「巨人」のオーケストラを、ともにライブ盤である。生き物のようなオーケストラの機能美が楽しめる「巨人」と、各タイトルともにサイモン・ラトルと小林研一郎という名コンダクターの、ドライブ感溢れる指揮に、PureAVシリーズがどう反応するかが楽しみだ。SACDではキャロル・キッドの繊細なボーカルもいい。映画『シュリ』で流れたあのメロディ『When I Dream』をしみじみ聴きたい。あとはSACD、DVDオーディオともにサンプラー盤を用意した。エクストンからはピアノ曲を集めてみたが、音形のくずれがないかを確認する。S/Nや響きの余韻もチェックしよう。『感動!DVDオーディオ』はリンダ・ロンシュタットや浜崎あゆみの女性ボーカル、長谷川陽子のチェロ、クイーンのロックタイトルの生々しさが、192/24、96/24といった超高音質録音で楽しめるはずだ。

PureAVのスピーカーケーブルは、同社のスピーカーコネクターを使って接続して試聴した。音の位相がきちっと揃い、絶妙なバランスでスピーカーを鳴らす様子はすぐにわかった。24金のコネクターも音質的に充分に管理されていると感じた。その上で、アナログオーディオケーブルとi.Link接続との音調の違いを聴く。全体としては、「ウエルバランスな音の整いや豊かさならアナログケーブル」という印象と、かたや「情報量とハイスピードな切れ込みのi.Linkケーブル」という印象を受けたのだが…。それぞれについてもう少し深く検証してみよう。

まずアナログ接続だ。これは女性ボーカルにコクがありふわっと包み込むような音の感触が素晴らしい。リンダ・ロンシュタットはステージが朗々と広がる。音色がとても暖かい。キャロル・キッドは、本来ジャズボーカリストである彼女が、さらりとポップスを歌うあたり、テクニックを含めての感情移入がみごとだ。浜崎あゆみやクイーンも上々のフィーリングである。

今回の組み合わせで聴くとクラシック弦はもう少し分解能があって良いかも知れない。ハーモニーの溶け合いもさらに内声部をくっきり見せて欲しいが、これはアナログならではの味わいとも言えるもの。本ケーブルはSACDの魅力を十分に表現していると感じる。何よりもPureAVのアナログケーブルはピアノ曲との相性が優れていると感じる。タッチの感触や、アコースティックな音色の暖かさ。弱音域での余韻感など、さすがにハイスペックオーディオらしい音の鮮度感に聴き惚れる。管弦楽やジャズも鳴りがよい。アナログ伝送としての厚みとグリップ感をもつ音の表情が好印象。細部に踏み込めばi.Linkに叶わないとしても、全体をがっちりとした構成で描くサウンドの積み上げはさすがにPureAVといえるものだ。「第9」は4人のソリストにそれぞれ存在感があり、声楽隊やオーケストラとの駆け引きも生々しいライブ感で再現した。

今回テストのリファレンスとして用いたパイオニアのスピーカー「S-A4SPT-VP」。同社のフラグシップスピーカー、TADシリーズの技術を投入した“ピュアモルトスピーカー”として、優れた再生能力には定評がある 再生コンポーネントはエソテリックからセレクト。i.Link接続に対応するユニバーサルプレーヤー「UZ-1」、SACDプレーヤー「SZ-1」、デジタル・プリメインアンプ「AZ-1」により、アナログとデジタルケーブルそれぞれの魅力を浮き彫りにしていった オーディオピンケーブル、スピーカーケーブルともに3種類のPCOCCを組み合わせたハイブリッド構造が特長だ。各周波数帯域のバランスを重視した設計で、実際に色付けの少ないサウンドが確認できた

次はi.Linkケーブルにつなぎかえてみる。さすがに伝送能力のすごさを実感する。ただ音域が伸びただけではなく、表現のレベルが上がった印象なのだ。ダイアナ・クラールの突き放したようなクールさや、リンダ・ロンシュタットのほのぼのとした暖かみといった体温感が明確になり、なおかつ声の表情が深い。リンダの192/24録音は、抜群のボーカルテクニックとオーケストラ演奏もゴージャスそのもの。空気感までもリアルで、これぞ究極のDVDオーディオといった印象だ。

「第9」などのCDもそうだが、ハイブリッド盤のSACDエリアで聴く管弦楽「巨人」は、スコアが透け出すようだ。遠近のコントラストが効き、天井のたっぷりと高いオーケストラ音場に満たされる感じだ。またフルート、オーボエなどのソロ楽器が一点の汚れもなく再現される抜群のS/N感、そして透明度。弦のアンサンブルも惚れ惚れするしなやかさである。長谷川洋子のチェロ「無伴奏作品集」は、初めて聴くような鮮烈かつ変幻自在の味わいだ。これだけの緻密さと芳醇さと迫力あるサウンドが、小さなピュアモルトスピーカーから引き出せるのも、PureAVのi.Linkケーブルならではのパワーといえそうだ。音色が滑らかで柔らかいため、音量をどんどん上げられる気がした。同じハードでも、接続インタフェースが異なり、ケーブルを吟味することで無限の楽しみ方がひろがる。今回、PureAVケーブルの試聴でi.Link接続のポテンシャルの高さ、魅力も改めて確認することができた。アナログ接続で楽しんでいる人には是非試してみていただきたいと思う。

アナログケーブルをアンプに接続。ノンスリップ・ラバーグリップによる容易な接続を実現。ケーブルの方向性も▼マークが記されており、使い勝手も良い i.Linkケーブルは4pinモデルが既に国内で販売を開始しており、6pinタイプも近日導入が検討されている。それぞれ接続する機器に応じた使い分けが可能だ 今回スピーカー側のケーブル接続にはU字プラグの「PAV54006」、アンプ側の接続にはバナナプラグの「PAV54004」を使った。3つの導体をまとめて確実にスピーカー端子に接続するのにも最適で、音質向上にもつながる必携アイテムであると言える

アナログケーブル、i.Linkケーブルともにそれぞれの魅力を際立たせることができた試聴となった。ごまかしの効かない2chだからこそ、シビアにその違いが出たとも言えるが、アナログケーブルにはアナログ的な良さや味わいが、i.Linkケーブルには独自の魅力がそれぞれにあることが明らかになった。いずれもPureAVらしい類いまれな再現力と、その音楽性に感心させられた次第だ。まさに、アーティストたちの「魂」のサウンドが聴こえてきたのである。

ソースの情報をピュアに伝えきるのはもちろん、これだけの数のソフトから様々な魅力と感動を引き出すPureAVシリーズこそ、ぜひあなたに使っていただきたいアイテムだ。