ビデオカメラはハイビジョンへの移行とメディアの多様化が同時に進んでいるため、人気の乱高下が激しく、ヒットモデルがなかなか持続しにくい。そんななかで日立が昨夏投入したDVD+HDDハイブリッドモデルのDZ-HS303は飛び抜けた人気を集め、なんと5ヶ月間トップの座を維持する大ヒットモデルとなった。長時間録画と保存しやすさという市場ニーズを的確にとらえたことが、ハイブリッド機が成功を収めた最大の要因であろう。

その成功を今度はハイビジョンカメラで再現することが、世界で初めてBD搭載ハイブリッドモデルを発売する日立の狙いである。ハイビジョンカメラ市場への参入は後発になったが、その遅れを取り戻しつつ、さらにハイビジョンでもトップシェア獲得を目指す。BDドライブとHDDを積む新製品、「DZ-BD7H」からはそんな意気込みが伝わってくる。

BDドライブとHDDを搭載したハイブリッドカメラ「DZ-BD7H」。なお、HDDを省略したBDカメラ「DZ-BD70」も用意されている

本機の発売にあわせ、日立マクセル、TDK、三菱化学メディアの3社が相次いで8cmBD-R/-REディスクを投入する。写真はマクセルの製品

あえて次世代メディアであるBDを選んだ最大の理由は、フルハイビジョン画質で十分な録画時間を確保することにある。8cmBDメディア1枚に1時間という仕様はBDドライブのみ搭載の「DZ-BD70」でもディスク交換なしで1日または1イベントの記録をほぼこなし、HDD搭載機なら計5時間と旅行に携行しても不安がない。この余裕のおかげで撮影に専念できることには、たしかに大きな意味がある。

各メディアの録画モードと録画時間など
メディア 映像コーデック 録画モード 映像ビットレート 画素数 録画時間
(BD/DVDは片面)
HDD MPEG4 AVC/H.264 HX 約15Mbps 1,920×1,080 約4時間
HF 約11Mbps 1,440×1,080 約5時間20分
HS 約7.5Mbps 約8時間
BD MPEG4 AVC/H.264 HX 約15Mbps 1,920×1,080 約1時間
HF 約11Mbps 1,440×1,080 約1時間20分
HS 約7.5Mbps 約2時間
DVD MPEG2 SX 約9Mbps 720×480 約20分
MPEG2 SF 約6Mbps 約30分

HDDからBDへの2倍速ダビングを実現し、ダビング方法も日付やシーンごとなど4種類を確保した。この手軽さはハイブリッド機ならではのもので、撮影後すぐに光ディスクに保存できる安心感にもつながる。

カメラとして注目すべき点は、ハイビジョンならではの精細感を引き出しつつ動画のなめらかさを実現することへのこだわりだ。撮像素子に約530万画素のCMOSセンサーを使用し、さらに適応型動き予測技術を導入するなど、積極的な画質改善に取り組んでいる点に注目したい。

記録メディアは30GBのHDDと8cmのBD-R/REをサポートするほか、DVD-RAM/-RW/-Rにも対応。MPEG4 AVC/H.264(ハイビジョン)またはMPEG2(SD)で記録し、BDに記録した映像は市販のBDレコーダーなどで再生できる。同梱の編集ソフトを利用すればPCへの取り込みから、カット編集、BDやDVDへの書き出しまでこなせるので、カメラを用いた直接再生以外にも編集や保存の手段は一通り確保されている。ハイビジョンカメラは保存と編集に制約が多い機種が多いが、登場したばかりとはいえ、今後普及が期待できるBDに記録できるメリットは大きいといっていいだろう。

昨年がハイビジョンカメラ導入期とすれば今年は本格的普及期に相当する。パッケージソフトと同様、ビデオカメラの分野でもBDをハイビジョンの本流として成長させること。それが日立の新たなチャレンジである。