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【特別企画】手頃な価格でデザイン性と音質を兼備

蘇る英国の銘機。REGAのレコードプレーヤー「Planar3」で注目アナログ盤を聴き尽くす

2016/08/25 中林直樹
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現代に蘇った銘機で、今だからこそ聴きたいアナログ盤を再生

では、このところ買い集めている新品のアナログレコードを「Planar3 with Elys2」を使って次々と聴き進めてみたい。

プリメインアンプはアキュフェーズのE-470、スピーカーはモニターオーディオのGOLD100を組み合わせて試聴を行った

まずはレコードストア・デイで限定発売され、あっという間に完売したMETAFIVEの『META』。その好評を受けて追加生産された盤である。

針を降ろすと、どっしりと腰の据わったサウンドがスピーカーから溢れ出て来た。ベースやドラムの密度が非常に高く、音楽全体が骨太になったようだ。ボーカルは中低域がまろやか。バンドの一体感も格段に高まっている。

METAFIVE『META』

ちなみに、このアナログ盤はメンバーである砂原良徳によって、CDとは異なるマスタリングが施されているそうだ(ある曲ではCDにはないアウトロも付け加えられている)。その効果もあるのだろう。解像度は高くないが、濃密でリッチなサウンドが、実にアナログ的な味わいだ。しかも、2枚組のダブルジャケットで、五木田智央のカバーアート、TOWA TEI(彼もまたメンバーである)によるジャケットデザインなど、フィジカルな作品を所有する悦びももたらしてくれる。

ポール・サイモンの『ストレンジャー・トゥ・ストレンジャー』はオリジナリティ溢れるリズムセクションをたっぷり楽しめるアルバム。ここでも、それを構成する低域がぐっと押し出され、音楽が大きく弾みはじめた。ボーカルは、その芯を感じさせ、薄味にもならない。それは針先がしっかりと盤の溝をトレースしている証拠ともいえる。

ポール・サイモン『ストレンジャー・トゥ・ストレンジャー』

続いてはボーカルとチェロを操る女性アーティスト、レイラ・マッカラ。現代アメリカーナシーンに出現した新たな才能だ。彼女の新作『A DAY FOR THE HUNTER, A DAY FOR THE PREY』では、歌声がストレートに耳に届く。一方で、バックのバンジョーやチェロは前後左右に自然に広がってゆくようなイメージだ。

レイラ・マッカラ『A DAY FOR THE HUNTER, A DAY FOR THE PREY』

ブラジル人のシンガーソングライター、ヴィニシウス・カントゥアリアによるアントニオ・カルロス・ジョビンへのオマージュ『Vinicius canta Antonio Carlos Jobim〜ヴィニシウス、ジョビンを歌う』。ほの暗い部屋から、やや寂しげに紡がれる歌とギター。そんな独特の音世界をしっとりとしたサウンドで描き出した。いくぶん湿度を含んだボーカルと、アコースティックギターのボディに共鳴する低音とが溶け合ってゆく。

ヴィニシウス・カントゥアリア『Vinicius canta Antonio Carlos Jobim〜ヴィニシウス、ジョビンを歌う』

レディオヘッドの新作『A MOON SHAPED POOL』もアナログで登場。冒頭の「Burn the Witch」のストリングスのうねりで、早くも彼らの世界に没入する。音場も広く、トム・ヨークの声は柔らかで耳に優しい。しかし、サウンドに厚みはあるものの、分離感はもうひとつ。これはカートリッジの交換で解消されるかもしれない。こうした音を拾う過程にダイレクトにアクセス可能で、サウンドの傾向を大きく変えることができるのもアナログレコード再生の醍醐味のひとつである。

レディオヘッド『A MOON SHAPED POOL』

過去の優れた作品をアナログでリイシューする、オランダのレーベル「Music On Vinyl」。昨年からイエロー・マジック・オーケストラのオリジナル作品全てのリリースを180gの重量盤で開始した。『BGM』や『テクノデリック』などは初回プレスの1,000枚までディスクがスケルトンで、ジャケットの裏面には通しナンバーも付されている(ちなみに僕が購入した前者は153、後者は75だった)。

イエロー・マジック・オーケストラ「BGM」

ここで彼らの作品を再生するのは個人的な理由によるところが大きい。詳細は読者の興味の範囲外だろうから省くが、音楽シーンのみならず、社会にも大きく影響を与えたアーティストにも関わらず、当時のオーディオ雑誌では話題にすら上らなかった作品群を最新のアナログシステムでとにかく聴いてみたかったのである。

『BGM』(1981年発表)の1曲目、「バレエ」は霧の中から姿をゆっくりと姿を現す列車の汽笛のようなイントロから、アルバム全体のイメージが喚起される。名曲たちが並ぶディスクの内部へと誘われているかのようだ。このプレーヤーにはそうした空気をも作り出す強さがある。また、シンセサイザーを中心としたサウンドだが、どこか暖かく、同時に翳りも感じさせた。

「千のナイフ」は力感があり、全体が程よくまとまっている。そして、サウンドに内在している練りに練られたプロダクションが、このディスク、このシステムによって明らかになったような気さえした。それはさまざまな色彩の音で織り上げられた、第一級のポップスなのである(ジャズやクラシックだけでなく、こうした音楽にオーディオ雑誌がもっと目を向けていれば、現状はいくらか明るいものになっていたに違いない、かも)。そんなことに気づかされる、実に興味深い体験だった。

次ページつづいてヘッドホンを組み合わせて試聴

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