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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第113回】プロフェッショナル“試聴”の流儀〜オーディオライター 高橋敦

公開日 2015/01/30 12:17 高橋敦
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■音を言葉に変える

自分が納得できる音源での試聴。それを基にレビュー記事の原稿として書き上げる。そこで大切なのは「言葉」だという。

「試聴の印象を言葉に変換しておくことは、オーディオファンのみなさんにもおすすめです。音の印象を記憶に留めやすくなりますし、その記憶や記録がこれからの試聴や製品選びの経験値や資料になります」

しかし音を言葉で伝えるのは難しい。誰にでもできることなのだろうか。

「その際の言葉は誰にでも伝わるものである必要はありません。未来の自分に伝わればそれでいいわけですから。例えば僕も試聴時のメモだと『このイヤホンは低音がプレベっぽい、こっちはジャズベっぽい』みたいな表現も使っています」

自分がそのときに試聴した音の印象を思い出すきっかけになりさえすれば、それでいいのだという。

「音に関する言葉でなくてもいいんです。このヘッドホンは低重心で『リック・ディアスっぽい』とかこっちはシャープで煌びやかで『百式っぽい』とか。これでメタルを聴くと厚みも描き込みもすごくて『ベルセルク』っぽい、こっちだとシュッとスッキリしていて『クレイモア』っぽい。このイヤホンは小柄だけど表情や躍動感が豊かで『田野ちゃん』みたい、こっちは真面目なんだけれどキレもあって『岡田奈々さん』みたい、とか」

高橋:「左がリック・ディアス、右が百式。リック・ディアスは鈍重そうに見えるが実際は機動性も高く「良質な低音」と言える」


「脚部を前方から。リック・ディアスのボリューム感、百式のシャープさ。そういったイメージを音と結びつける」

「脚部を後方から。曲面的な感じと直線多面体的な感じというのもイメージを喚起してくれそうだ」
「もちろん仕事だと話は別で、『より多くの人に正しく伝わりやすい表現』が基本です。『プレベっぽい』ではなく『低域と中域の中間付近の帯域をほどよく膨らませてファットな印象』とか。『わかる人にしかわからない表現』をそのまま使うのは『あえて』の場合です」

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