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ハイインピーダンス機も鳴らし切れるのか?

デノン「DA-300USB」のヘッドホンアンプを検証、人気ヘッドホン6機種と組み合わせテスト

公開日 2014/03/18 12:27 岩井喬
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<MODEL5>
SENNHEISER HD800 ¥OPEN(予想実売価格160,000円前後)

SENNHEISER HD800と組み合わせ

5機種目はハイインピーダンス機の筆頭ともいえる高級オープン型の花形モデル、ゼンハイザー「HD800」だ。当初からこの組み合わせを想定していたかのようなバランスの良さで、きめ細やかにコントロールされた音像の描写はリアル志向で質感は滑らかに表現。低域も弾力良く適度な引き締まりを見せる。解像度やS/N感も高く、オーケストラも分離良い。ボーカルの表現も素直で、ボトムを引き締めつつもナチュラルな肉付きを残し、口元をしなやかに描き出してくれる。ディティールはウェットな艶が乗り、ナチュラルな鮮度感が漂う。

192kHz/24bit音源では弦楽器の質感が一際きめ細やかに感じられ、ハーモニーの流麗さも向上。余韻の響きは有機的だ。DSD音源においても安定度は高く、自然に浮き立つ音像の緻密さ、シームレスな音場の表現に磨きがかかり、臨場感あふれる空間表現を楽しむことができた。

<MODEL6>
beyerdynamic T1 ¥OPEN(予想実売価格140,000円前後)

beyerdinamic T1と組み合わせ

最後に、現行モデルの中では最もハードルが高い部類に属する600Ωというハイインピーダンスのセミオープン型ハイエンド機、ベイヤーダイナミック「T1」も試してみた。比較的シャープな音像表現となり、音場もクリアで広がり豊かである。オーケストラのハーモニーは透き通り、低域もアタック感を重視した傾向にまとまってきた。中高域の伸びはナチュラルで倍音の艶っぽさも加わり、ピアノやアコースティックギターのタッチは爽やかに感じられる。ボーカルの音像はソリッドで口元をハリ良く硬めに描写。定位感もきっちりとしている。

192kHz/24bit音源においては鮮度高くキレのあるタッチとなり、低域のスピードあるダンピング感が小気味よい。解像感も高く緻密で繊細な描写を得意としているようだが、バランスとしては腰高で、もう少し低域のゆとりがあればよりベターであると感じる。DSD音源では潤い良く艶の乗ったシャープな音像が、すっきりと空間に浮かび上がり、付帯感なく鮮明にプレイニュアンスを掴むことができた。

■多様なヘッドホンを表情豊かに鳴らし分けてくれる

「HD800」を含め、ここまでのハイインピーダンス機となると当然、ある程度満足のゆく音量を得ようとするとボリュームの位置も結構な値となってくる。しかし、「DA-300USB」は組み合わせるヘッドホンの個性を上手にまとめながらも、デノンならではの濃密で豊かな音楽表現力をそこに加え、ノイズ感のないリッチで滑らかなサウンドをじっくりと聴かせてくれる、高S/Nで柔和な音質傾向を持つ。

ロックなどのビート感あるジャンルもバランス良く鳴らしこめるが、荒々しさやタイトなスピード感へのベクトルにはそれほど向かっていない。それゆえ、ハイインピーダンス機や低能率モデルについては、ボリュームレンジがもう少し欲しいという印象を持つ場合もあるかもしれない。一方で豊潤で艶やかな音色は、雄大なオーケストラやアコースティックな構成のジャズサウンド、穏やかな女性ボーカルなどで特に真価を発揮する。こうしたリッチなサウンドを、ヘッドホンリスニングではより生々しく味わうことができるのだ。

デノンの伝統に裏打ちされた濃密なサウンドを、デスクトップで手軽に、かつヘッドホンでよりダイレクトに味わえることはDA-300USBの大きな魅力である。また、多様なヘッドホンを表情豊かに鳴らし分けることができる点は、非常に有意義な機能性といえるのだろう。

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