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公開日 2023/09/25 06:30

「Taktina」登場で改めて考える、 ネットワークオーディオにおける「コントロールアプリ」の役割

「音楽再生の快適さ」はネットワークオーディオ選びの大切な要素
逆木 一
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はじめに -コントロールアプリの役割を改めて整理



去る8月1日、ネットワークオーディオのソリューション「ITF-NET AUDIO」を採用する製品用のコントロールアプリ「Taktina」がリリースされた。

インターフェイスが開発したネットワークオーディオ操作アプリ「Taktina」

現状ではTaktinaを使用可能な製品はSFORZATOのネットワークプレーヤー/トランスポートに限られているものの、さっそく使っているユーザーも少なからずいるものと思われる。

さて、TaktinaはITF-NET AUDIOがネットワークオーディオのソリューションとして訴求するうえで非常に重要なものだが、一方で、「そもそも何をするものなのか」という点で、いまひとつ理解が浸透していないようにも見受けられる。

それを踏まえて、この記事ではTaktinaを含むネットワークオーディオにおける「コントロールアプリ」とはどのようなものか、あらためて確認していきたい。

ネットワークオーディオの三要素 -【サーバー】【レンダラー】【コントロール】



筆者がネットワークオーディオの話をする際に必ず提示するのが、【サーバー】【レンダラー】【コントロール】というネットワークオーディオの三要素である。

ネットワークオーディオの三要素

【サーバー】は音源の管理運用(ライブラリ)機能、【レンダラー】は音源の再生機能、【コントロール】は音源の閲覧と選曲を含む再生操作全般を指す。そして、【コントロール】は再生操作を行うものであるから、特にその相手となる【レンダラー】との結び付きが強い。

この三要素をCDプレーヤーに当てはめて考えるなら、【サーバー】は各人の工夫によって整理されたCD棚、【レンダラー】はCDプレーヤー、【コントロール】はCDを棚から選んでディスクトレイに置き、リモコンで再生操作する一連の流れ、ということになる。

ここで注意が必要なのは【コントロール】を担うリモコンだ。リモコンが行うのはあくまでも「操作」であって、「再生」ではない。リモコンの「再生ボタン」を押すことはあっても、「再生」を行うのはあくまでも「CDプレーヤー」である。

それでは、三要素を実際のネットワークオーディオのシステムに当てはめるとどうなるのか。ひと言で「ネットワークオーディオ」と言っても様々なシステムのバリエーションがあるが、ここでは筆者宅の一例を示す。

逆木氏の自宅における三要素の配置

【サーバー】はfidataのオーディオ用サーバー「HFAS1-XS20」、【レンダラー】はSFORZATOのネットワークトランスポート「DST-Lepus」、【コントロール】は「Taktina」がそれぞれ担っている。

なお、近年ますます存在感が大きくなっているストリーミングサービスが担っているのは【サーバー】である。音源のデータが「自宅ネットワーク」にあるか、それとも文字通り「雲の上」にあるかは本質的な問題ではない。

「コントロールアプリ」が担っているもの



今まで書いてきたように、【コントロール】の担い手である「コントロールアプリ」が行うのは、あくまでも「操作」である。これは誤解の多い点だが、アプリの中に音源のデータが収納されているわけではないし、アプリ自体が再生を行うわけでもない。

一方で、ネットワークオーディオのシステムにおいて実際にユーザーが触れるのは基本的にコントロールアプリのみ。「音源を閲覧し、選曲し、再生(※)をはじめとする各種操作を行う」という、「音楽を聴く」ためのほぼ全てのプロセスがコントロールアプリの中で完結する(※ここでの「再生」はデータ処理ではなく、ユーザーの行為としての「音楽をかける」というニュアンス)。

一応ネットワークプレーヤー/トランスポートにも物理リモコンが付属するケースは多いが、物理リモコンで可能なのはあくまでもごく基本的な再生操作に限られる。ネットワークプレーヤー本体のディスプレイの表示性能の限界もあり、満足のいく「音源のブラウズ」はほとんど不可能である。

以上の点から、コントロールアプリはネットワークプレーヤー/トランスポートの使い勝手、ひいては音楽再生の快適性を決定的に左右するものであり、コントロールアプリの完成度はネットワークオーディオのシステムの魅力そのものに極めて大きな影響を及ぼす。

コントロールアプリの分類 -汎用的に利用できるか、専用アプリか



「ネットワークオーディオ」とひと言で言っても様々なシステムのバリエーションがあるように、「コントロールアプリ」にも仕組みを含めて数多くの種類がある。ここではネットワークオーディオのシステムに対する理解を深めるために、コントロールアプリを以下の3種類に分類し、該当するアプリをいくつか例示する。

(1)汎用性のある仕組みを使い、メーカーの垣根を越えて使用可能なアプリ

ネットワークオーディオの世界でメジャーな「汎用性のある仕組み」として、筆頭に挙げられるのが「UPnP」だろう。よく目にする「DLNA」や「OpenHome」も、このUPnPをベースにしているという点では共通する。【サーバー】【レンダラー】【コントロール】の全領域で、UPnPをベースにした製品は非常に多い。今回(1)と(2)で紹介するアプリも、UPnPをベースにしたものである。

(1)に該当するアプリとしては特定のオーディオブランドとの関係を持たないサードパーティー製のアプリのほか、メーカー製アプリでも他社製品に門戸が開かれているという場合がある。

■mconnect player
mconnect playerはソリューションベンダーであるConversDigital社がリリースしているコントロールアプリ。汎用的に使用可能なサードパーティー製アプリとしてはかなりの古株で、10年近く前から存在する。

iPad Proでのmconnect player HDの画面。機器の選択欄に他社製サーバーやネットワークプレーヤーが表示され、汎用的に使用可能なのがわかる

UPnP/DLNAベースの製品であれば、メーカーの垣根を越えて使用可能だが、OpenHomeには対応しないため、「OpenHomeにのみ対応するプレーヤー/トランスポート」では使用できない。

音源のブラウズ画面

再生中の音源情報。今回はプレーヤーにヤマハのAVアンプ「RX-V6A」を使用している

■fidata Music App
fidata Music Appはアイ・オー・データ機器が自社のオーディオサーバー「fidata」「Soundgenic」用にリリースしているコントロールアプリではあるが、UPnPベースの製品であれば、メーカーの垣根を越えて使用可能(※アプリのスクショは先行して使っているバージョン1.5.0のもので、一部の表示が現行バージョンとは異なる)。

fidata Music Appの機器の選択画面。DLNA対応とOpenHome対応を問わず、多くのプレーヤーで使用可能

fidata Music AppはDLNAとOpenHomeの両方に対応しており、非常に数多くのプレーヤーと組み合わせて使える。DLNAとOpenHomeの両方で汎用的に使用可能、かつ完成度の高いコントロールアプリという貴重な存在である。

音源のブラウズ(左)とプレイリスト(右)

音源の再生画面

(2)汎用性のある仕組みを使っているが、特定のメーカー専用のアプリ

同じくUPnPをベースにしているアプリでも、特定のメーカーの製品との組み合わせに限定することで、接続や挙動の高い安定性や良好なレスポンス、独自の機能の実装などが期待できる。

なお、UPnPベースのコントロールアプリで「特定のメーカー専用」と言った場合、基本的に「プレーヤー/トランスポートとアプリが一対一の関係にある」と認識すればよく、サーバーについては特に気にする必要はない。

■HEOS
HEOSはD&M(DENON・Marantz)製品用のコントロールアプリ。「HEOS」とはD&MのAVアンプやネットワークオーディオ製品に搭載されているネットワーク機能の名称でもある。

手持ちの音源や各種ストリーミングサービスなど、複数のソースを選択可能

音源のブラウズ画面

HEOS(アプリ)でコントロール可能なのはHEOS(機能)対応製品に限られる。つまり、D&M製品以外のAVアンプやネットワークプレーヤーをHEOSで操作することはできない。

サーバーにはUPnPベースの他社製品を使用できるが……

プレーヤーにはマランツのAVアンプ「CINEMA 70s」しか選べない

■TEAC HR Streamer
TEAC HR StreamerはTEAC製品用のコントロールアプリ。なお、同グループのハイエンドブランドであるESOTERIC製品用にも「Sound Stream」というアプリが用意されているが、機能的にはほぼ同等である。ベースとなっているアプリを含め、現状で最も優れたコントロールアプリのひとつと言える。

TEAC HR Streamerのブラウズ画面

実のところ、TEAC HR Streamer自体はOpenHome対応のアプリであり、先述のHEOSのように、完全に「特定メーカーの製品としか繋がらない」というわけではない。

他社製品も認識してプレーヤーに選べる様子

ただし、他社製品との組み合わせは「繋がりはするが、再生操作において機能不全が多い」という状況であり、それを踏まえてTEAC HR Streamerは「汎用性のある仕組みを使っているが、特定のメーカー専用のアプリ」に分類している。

サーバーにはUPnPベースの他社製品を使用できる

音源の再生画面

ちなみに、そもそもTEAC HR Streamerは「他社製品との組み合わせでも使えます」などと言っていないため、他社製品のユーザーに「私のプレーヤーで使えないんだけど」などと言う権利はないので要注意。

■Taktina
というわけで、今回の記事の起点となったTaktinaは「汎用性のある仕組みを使っているが、特定のメーカー専用のアプリ」に分類される。ITF-NET AUDIOを手掛けるインターフェイスはあくまでソリューションベンダーであってオーディオメーカーではないのだが、「ITF-NET AUDIOを採用するメーカー専用のアプリ」と捉えれば意味は同じである。

TaktinaはITF-NET AUDIO採用製品との組み合わせ限定。ここではDST-Lepusのみ認識している

サーバーにはUPnPベースの他社製品を使用できる

ITF-NET AUDIO自体はOpenHomeに対応しているが、TaktinaはTEAC HR Streamerと異なり他社製のOpenHome対応プレーヤーをそもそも認識せず、ITF-NET AUDIO採用製品としか繋がらない。

音源のブラウズ(右)とプレイリスト(左)

音源の再生画面

リリースされたばかりではあるが、コントロールアプリに求められる基本的かつ重要な要素は抜かりなく備えており、レスポンスも非常に優秀。ITF-NET AUDIOとあわせてAmazon Musicへの対応もアナウンスされており、そちらも期待したい。

(3)メーカー独自の仕組みを使用したアプリ

例えばUPnPベースであれば、(1)メーカーの垣根を越えて使用可能なアプリであれ、(2)特定のメーカー専用のアプリであれ、【サーバー】については同じものを使用できる。つまり、Marantz CINEMA 70sでも、TEAC NT-505でも、SFORZATO DST-Lepusでも、サーバーには同じSoundgenicを使うことができる。

このようにある程度の汎用性を有する仕組みではなく、それを排したメーカー独自の仕組みを使用したコントロールアプリも存在する。こうしたアプリはサーバーまで含めた専用のシステムが前提となるため、当然ながら他社製(他システム)のプレーヤーと組み合わせることもできない。

このように書くと、なんとも閉鎖的かつ偏屈に思えるかもしれないが、実際は【サーバー】【レンダラー】【コントロール】の三要素すべてを一体として作り込めるため、アプリを含めて他を圧倒するシステムが出来上がる可能性も秘めている。

■BluOS Controller
BluOS Controllerは、Bluesoundの製品専用のコントロールアプリ。Bluesoundは「BluOS」という独自のネットワークオーディオのシステムを構築しており、BluOS Controllerは文字通りそのコントロールを担うものという立ち位置だ。

BluOS Controllerの機器選択(画面右) 当然ながら、BluOS搭載製品しか選べない

BluOS Controllerのソースの選択(画面左) BluOSが想定しているソースはどちらかといえばストリーミングサービスがメインで、手持ちの音源はUSBまたはサーバーを直接マウントすることで再生可能になる

BluOSは【サーバー】【レンダラー】【コントロール】を包括するシステムであるため、BluOS Controllerがコントロール可能なのは「NODE」や「POWERNODE」といったBluOS搭載製品に限られ、なおかつSoundgenicといったUPnPベースのサーバーも使用できない。

音源のブラウズ(左)とプレイリスト(右)

音源の再生画面

そのぶんBluOS/BluOS Controllerは機能と使い勝手の両面で高度に洗練されており、特にストリーミングサービスとの親和性においては他社製品から一歩抜きんでていると言っていい。

ちなみに、Bluesoundの独自のシステムとして始まったBluOSだが、今ではその完成度の高さが認められ、複数のメーカーに採用されるまでになっている。UPnPのような広がりはないにせよ、この展開は注目に値しよう。

■Roon Remote
2015年の登場以来、かつてない音楽体験を引っ提げて世界のオーディオシーンを席巻している高機能な再生ソフト「Roon」用のコントロールアプリ。「機器」に限定されないシームレスな体験を重要視するだけあって、タブレット版のRoon RemoteのデザインはPC版の画面と基本的に同一である。よって、タブレットから操作しようと、PCから操作しようと、Roonの使用感はほとんど変わらない。

Roonのシステムにおける【サーバー】と【レンダラー】は「Roon Core」に集約されている どうやら近々また呼び方を変えるようだが……

RoonはUSB DACのほか、Roon Readyに対応するネットワークプレーヤー、さらにAirPlay対応デバイスやChromecastとも組み合わせ可能。BluOSベースのBluesound製品も、Roon Readyの仕組みを介してRoonと繋がる

BluOSと同様、Roonも【サーバー】【レンダラー】【コントロール】を包括するシステムであり、Roon RemoteはRoonと完全に一体化している。特殊な運用をしない限り、例えばRoonをUPnPベースのシステムとそのまま繋げるといったことはできない。

音源のブラウズ

音源の再生画面

Roonの画期的なところは、既存のネットワークプレーヤー(元のシステムを問わない)をRoonと繋げる「Roon Ready」という仕組みを自ら生み出した点にある。これにより、Roonはあくまでも独自システムの体と再生品質を保ったまま、幅広い製品と組み合わせ得る柔軟性をも手に入れたわけだ。Roon Readyという仕組みはある意味でネットワークプレーヤーの自主性を脅かすものである一方、Roonの浸透を大きく加速させていることに疑いはない。

まとめ -コントロールアプリの重要性



これまでの流れで、「コントロールアプリとは何で、どのようなものがあるのか」について、ある程度の理解が得られたなら幸いだ。

もっとも、今回はコントロールアプリの概要説明とおおまかな分類、少数の例のごく簡単な紹介をしたに過ぎない。ひとつひとつのアプリの深掘りはもちろん、追求しようと思えば実に奥深い世界が広がっていることも覚えておいてもらいたい。

記事の中で書いたように、コントロールアプリはネットワークオーディオのシステムにおいて音楽再生の快適性を決定的に左右する、極めて重要な要素である。そのため、高い完成度のコントロールアプリは、それを使用可能なネットワークプレーヤーの魅力にも直結する。さらにそこから進んで、「このアプリが使えるからこそ、この製品を選ぶ」というオーディオファンの意思決定が行われる可能性だっておおいにある。

とにかくオーディオの世界では「音質」にばかり注目が集まるが、「音楽再生の快適さ」も同じく重要だし、またそれこそがネットワークオーディオの魅力であると筆者は考えている。今後ネットワークオーディオの世界を眺める際、「コントロールアプリ」という要素にも意識を向けてみてほしい。

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