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公開日 2023/12/27 18:00

テクニクスの“タンテ”で演奏の熱もリアルに体感。DJ・大塚広子が語る「SL-1200GR2」の魅力

タンテユーザーとリスナーの両方の貪欲な耳に応える
大塚広子
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オーディオリスニングとしてはもちろん、DJの世界でも長く愛されてきたテクニクスのアナログプレーヤー「SL-1200」シリーズ。その最新バージョン「SL-1200GR2」が今年の9月に発表された。外観は既存モデルとほとんど変わらないが、テクニクスの最新技術の粋を尽くし音質的にもさらなる進化を遂げている。DJとして長くテクニクスのアナログプレーヤーを愛用してきた大塚広子氏に、最新プレーヤーの魅力を語ってもらった。

TECHNICS「SL-1200GR2」 250,000円(税込/シルバーモデル)

新開発モーターと電源部の改善で世界標準機“タンテ”が生まれ変わった



私たちが、日常的に話す「タンテ」という呼び名は、イコール、テクニクスのターンテーブル「SL-1200」を指す。それだけ浸透している世界標準機のDJターンテーブル、それが「SL-1200」シリーズだ。

過去に生産されたタンテは、ピュアオーディオ向けの「SL-1200MK4」、DJ用途向けに最大±16%まで変更可能なピッチコントローラーを搭載した「SL-1200MK5G」など、様々なバリエーションや限定モデルが存在する。そんなタンテの、最も新しいタイプが、今回紹介する「SL-1200GR2」(以下、G2)。

初代「SL-1200GR」(以下、GR)は、 2016年のテクニクス・ブランド復活表明となる新開発の高級ハイファイ機器、「SL-1200GAE」、「SL-1200G」を引き継いで生まれたもので、GRが発売された2017年の時点で、タンテは徹底的に音を追求した仕様に生まれ変わっていた。このノウハウを引き継ぎながら工夫を凝らし、コストダウンさせたモデルがGRというわけだ。

ブラックモデルもラインナップする

このGR後継モデルであるGR2の特徴は、新しく開発されたモーターと、ノイズを極限に抑えた電源部分の工夫だ。近年のメディアや音源の変化が反映された「フルデジタルアンプ」の開発で高い評価を得るテクニクスだが、このノウハウがターンテーブルのモーターに活かせることがわかったのだ。

わずかな回転ムラや微細な振動を抑えることができ、重量がものをいうターンテーブルの世界において、信号処理による新しい視点から開発された画期的なアプローチだ。この革新的なモーター駆動技術「ΔΣ-Drive」によって、ターンテーブルの音質向上が期待できる。

モーターの回転を精緻にコントロールする制御回路「Δ-Drive」

しかし高精度な回転が実現すると、課題も生まれた。このモーターは電圧変動にとても敏感だったのだ。そこで、瞬時供給能力が高くハムノイズが少ないスイッチング電源を採用し、さらにその電源回路で発生するノイズを低減するために、テクニクスのリファレンスクラス「SL-1000R」で搭載したノイズ除去回路を組み合わせた。このように、新たなモーター技術を実現化するために、次の手、さらにまた次の手を打って、これまでの技術を惜しみなく投下したタンテが、このGR2である。

演奏を目の前に見ているような温度を感じさせるリアルな体感



実際に針を落としてみた。ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ『Exodus』のB1「Jamming」は、楽器の音色を味わいながら聴いたりかけていたりしていた曲だが、いや、これはヴォーカル曲だ、と思い知らされた。声の抑揚がダイレクトに感じられ、ボブの心情がまっすぐ伝わってくる。

アキュフェーズのプリ&パワーアンプとBowers&Wilkinsのスピーカーのシステムで試聴

心臓の鼓動のように前に出てくるベースは、まるで温度を感じさせるようなリアルな体感だ。ギターの“ワウ”という音が、右奥から出てきて驚き、これまで意識していなかったギターの裏のフレーズも聴き取れた。メンバーのかすかな掛け声も奥の方から発せられていることがわかり、メンバーの演奏風景を見ているような感覚を得た。

拙レーベルRM jazz legacy、同タイトル作のB1「Come With Me」は、コンガの音の細かな音の分離がしっかりと耳に入ってくる。中心部にグングン引っ張っていくような低音の力があり、スピード感を得られた。エレピの繊細さにもハッとさせられたし、A1のアコースティックピアノの輪郭ははっきりとしていて、解像度が上がっている。ECMのMick Nock『Ondas』A2「Ondas」も、やはりピアノの魅力が引き立っている。ここではクリアというよりも全体を包み込んで上にふんわり漂っているようにも聴こえる。

タンテの操作性を変えずに、こんなにもくっきりした音像を感じられるとは、思いもよらなかった。

SL-1200シリーズはまさにテクニクスの“顔”。外観も前作「SL-1200GR」とほぼ変更なし

GRの発売後、私たちは世界規模のパンデミックを経験し、タンテユーザーも各自の家聴きの楽しみを探ることになっただろう。愛するレコードに詰まった魅力をもっと知ろうとする人々が増え、その流れと並行して、リスニングの環境を整えた店も増えた。レコードの音をキャッチするリスナーの耳は、ここ数年で確実にレベルアップしている。

そんな時代の移り変わりの中で生まれた最新型GR2は、タンテユーザーとリスナー両方の貪欲な耳にがっちりと応えてくれるものだ。触ることに夢中だったあの時から変化したのは、時には手を止めてグッとレコードの世界に入りこむ、そんな楽しみを見つけたことだ。とうの昔から身についてしまった、レコードをプレイする一連の動作や指先の感覚を変えることなく、さらなるレコードの魅力を味わえること。それは当たり前のようでいてとても贅沢なことだと感じる。

DJカルチャーを育んできた「SL-1200MKシリーズ」と同じように、SL-1200GR2は、タンテのレギュラーモデルとして、近年のレコードシーンと二人三脚でこれからも歩んでいくだろう。

そして最後に、環境問題に配慮した、緩衝材プラスチック削減の取り組みについても声高にアピールしたい。未来の世界を見据え、今は見えないユーザーにも寄り添い続けるテクニクスの姿勢が、そこにはしっかりと反映されている。


大塚広子(DJ、選曲家、ライター、プロデューサー、二児の母)
新聞や音楽専門誌、ライナーノーツなどに執筆。日本のジャズレーベル、トリオ・レコーズ、ブルーノート姉妹レーベルのサムシン・エルス、フランスのサラヴァなどのレーベル公式コンピレーション/ミックスCDなど、編集盤の選曲も多数。DJ経歴約25年。自身のレーベル、「Key of Life+」を主催し、作品監修やプロデュース活動を行う他、百貨店、ホテル等企業の音楽プロデュース/ブッキングや、ジャズ及びアナログレコード普及におけるオピニオンリーダーとして各メディアで活躍する。

大塚広子

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