ラックにボード、インシュレーター…オーディオ機器を「直置き」しない理由とは?
オーディオは実に奥深く、様々な要素が音に影響してくる。だからこそ楽しい趣味なのだが、初心者のうちは分からないことも多く、また熟練したファンであっても、詳しいことは意外と知らないなんてことがあるのではないだろうか。
そこで、オーディオ買取専門店「オーディオランド」のご協力のもと、オーディオにまつわる改めて知りたい基礎知識を炭山アキラ氏が解説する。本項では、改めて知りたい「オーディオ機器を “直置き” しない理由」について紹介しよう。
オーディオ機器を「直置き」しない理由とは?
現代のオーディオ界は、インシュレーターやスパイク、オーディオボードなど、アンプやソース機器、スピーカーの下へ据える、あるいは敷くグッズが花盛りだ。しかし、それらは一体どれくらい音を良くしてくれるのか。あるいは使わなくても別に問題はないのか。
オーディオ機器とラックの棚板が無限の強度を有しているのなら、インシュレーターやボードは必要ない、というかそれらがむしろ絶対的な強度を下げて機器の重心を高め、結果として機器は却って不安定になってしまう。
百害あって一利なしということだ。ところが、機器もラックもその理想へたどり着くことはありえないから、インシュレーターやボードが必要となる。

具体的に、それらがどういう働きをしているのかを解説しよう。そもそも「insulator=遮断するもの」という意味で、スピーカーの振動を受けて床が振動し、それがラックへ伝わりアナログプレーヤーに飛び込んでカートリッジがその振動で信号を発電、という無限ループで大きなノイズを引き起こす「ハウリング」という現象を起こすことを防ぐため、ラックとプレーヤーの間の振動を遮断するための柔らかい脚のことを指していた。
一方、アンプやソース機器、スピーカーなどに用いるインシュレーターは、名称こそ共通だが効果が違う。面で支えるタイプの一般的なインシュレーターは、よりしっかりと機材を支えて安定させることを主眼とした製品が多数派だ。プレーヤー用以外にもソフトな製品はあるが、それらも概してプレーヤー用よりは硬く、プレーヤーへ用いてもハウリングを抑え切れないものが大半だ。
アンプやソース機器の内部には、振動源が隠れている。一番大きなものが電源トランスで、電源周波数の50Hzあるいは60Hzでごく僅かながら振動している。その振動が筐体に伝わり、トランジスターやコンデンサーなどの素子を振るわせると、その振動に応じた微弱な電気信号が内部で発生し、ノイズとして繊細な音楽信号を汚してしまう。
筐体の底面に取り付けられた脚が脆弱だと、筐体の振動を抑えることができず、むしろそれ自体も共振して振動を付け加えることになりかねない。それゆえ、頑丈でガッチリと機器を支える脚、あるいは筐体の振動を吸収できるソフトさや構造を持つ脚、つまりインシュレーターを挟むと音が向上する、というわけだ。
一部アンプやソース機器にも用いられるが、昨今はスピーカーへ使われることが多くなった脚に、下端が尖ったスパイク形状のものがある。本体の振動を、速やかに床やオーディオボードなどへ逃がす働きをする脚である。スパイクは床に傷をつけるからとお嫌いになる人がおいでだが、スパイクは原則床やボードへ直接設置してはいけない。適切なスパイク受けで支えてやらないと、低域がスッパリと出なくなってしまうことがあるからだ。

スパイクには、斜面角度の急峻さと先端の鋭さで無限のグラデーションを持たせられる。斜面角度が急で先端が鋭いほどスパイクとしての効果は高まるが、その分ちょっと音が鋭くなることを嫌う人もいて、そういう場合は僅かに先端を丸めたスパイク(そう珍しくはない)をお使いになるのがよい。
先程簡単に「適切な受け」と書いてしまったが、同じスパイクを使っていても受けが変わると驚くほど音質が違ってくる。ステンレス、真鍮、炭素鋼、チタンなどといった材質や、先端を受けるポイントの鋭さなど、膨大な組み合わせが考えられるから、挑み甲斐のあるテーマということもできるだろう。
アナログプレーヤーの脚にスパイクが装着されている製品も、結構見かけるようになった。特に住宅が頑丈な欧州の製品に多いようだが、確かにスパイク自体でも多少のハウリング抑制効果はある。しかし、日本家屋では効果が足りなくなることもあるだろう。そういう場合は、イタリアのブランドであるESSECI DESIGN(エッセチ・デザイン)の磁気フローティング・オーディオボードやアコースティックリヴァイヴの空気バネを使ったボードなどを敷いてやるとよいだろう。
オーディオボードも面で受けるインシュレーターと同様の効果が見込めるが、こちらは加えてオーディオラックや床の絶対的な強度を高め、鳴きを抑えるという効果もある。特に棚板の強度がそう万全といえないラックをお使いの人には、音質向上効果の大きなグッズということができるのではないか。
また、昨今のオーディオボードには、後ろに端子がついていて仮想アース的に使えるもの、といった付加機能つきの製品も増えてきた。もちろんその分だけ高価にもなるが、あなたがより高いオーディオの頂を目指すなら、試してみる価値はあるだろう。

(提供:オーディオランド)